データ7 能登有料道路
避難民たちは階段を下りていく。
その先頭には三郎が、一番後ろには警察官と恵が銃を持っていた。
1階に下りるとゾンビがちらほらとうろついていた。
ドン
一番近くに居たゾンビを三郎が散弾銃で吹き飛ばす。
パン
警察官が後ろから近づいてくるゾンビに発砲するが肩に命中する。
パン
恵が放った弾丸は警察官が撃ったゾンビの頭に命中する。
「すいません!」
「気にしないで!次くるわよ!」
ドン
三郎は入り口に居たゾンビを吹き飛ばすと散弾銃に弾をこめる。
「バスまで走れ!」
その声とともに避難民たちはバスに向かって走り出す。
避難民たちは次々とバスに乗り込んでいく。
悠斗はバスに乗り込むとエンジンをかける。
ドルゥン
エンジンの始動音が響き渡る。
警察官と恵、三郎はバスに乗り込む。
「ドアを閉めて!」
「どのボタンだよ!」
悠斗は適当にボタンを押す。
『次は、能登空港前です』
バスの中に女性の声のアナウンスが流れる。
「これか!?」
ピーッ
電子音とともにドアが閉まる。
「発射しますので座席に座ってください!」
バスは能登空港を後にした。
バスは悠斗たちが進んできた道を戻る。
「能登有料道路から金沢へ向かってくれ」
三郎が運転席で運転している悠斗に話しかける。
「そうするつもりですが、道路状況によっては降りるかもしれません」
「その場合は運転手の君に任せるよ」
バスは先程のコンビニを過ぎると交差点を曲がり能登有料道路に入る。
しばらく進むと料金所の手前3キロほどのところで渋滞にはまってしまう。
「こんなところで渋滞かよ・・・」
対向車線では自衛隊の車両が何台も通り過ぎていく。
『現在金沢市内でも大規模な暴動が発生しており、自衛隊が治安出動しております。石川県内にお住みの方は付近の自衛隊や、警察官の指示に従って避難をしてください。車がある場合は車を使い、ドアをロックして石川県の指定の場所から・・・』
バスの中では悠斗がつけたカーラジオが流れていた。
ドン
ゾンビが路線バスの側面を引っかく。
「どうやらバスを破壊するまでの力は無いようね・・・」
「・・・さっきから気になってたんだが・・・佐藤さん、あんた何か知ってるんじゃないのか?」
三郎が立ち上がるとバスの一番後ろに座っている恵に歩み寄る。
「いや・・・それは・・・」
バスの乗客が恵に注目する。
すると一人の男性が手に持っていたスマートフォンを見る。
「おい!こいつもしかしてこの動画のやつじゃねぇか!?」
三郎と警察官が男性に近づくと、動画を見る。
動画には輪島市内で事故を起こしたワンボックスカーから人をおろしている動画が写っていた。
カメラは3人の防護服を着ている人物の顔を映し出すとその中に恵の顔が映る。
「そう言えば、最初のほう無線で輪島市の公園近くで事故を起こした車が居て、そのときに一人逃げた知らせがあったな・・・」
警察官が恵を見る。
恵は顔をそらす。
「・・・警察関係者といってたな」
「えぇ・・・」
警察官は手錠を取り出す。
「警察手帳は持ってるのか?」
「・・・落としたわ」
「・・・すまないが一応手錠をかけさせてくれないか?」
後ろでは三郎が散弾銃を構えていた。
他の避難民はバスの前のほうに移動していた。
そのころ悠斗はバスのバックモニターを見ていた。
バックモニターには後ろに並ぶ車が見えていた。
その後ろから大型のタンクローリーが猛スピードで迫ってきていてた。
「えぇ、いいわよ」
恵は両手を前に出す。
警察官は手錠を恵にかけようとした。
ドゴン
バスに大きな衝撃が伝わり、バスは前の車にぶつかると止まる。
バスの車内にいた人は後ろに吹き飛ばされる。
「何があった!?」
三郎が運転席に駆け寄る。
「玉突き事故だ!タンクローリーが突っ込んできた!」
悠斗はアクセルを踏み込み前の車を押そうとするがビクともしない。
「気絶してるのか?」
プァン
クラクションを鳴らすが前の車は動く気配はない。
「バックは!?」
「試したけどつぶされた車を押す力はこのバスには無かったよ」
「仕方ない・・・降りるぞ!」
悠斗はバスのドアを開けると避難民たちが我先にと降りていく。
「警察は!?」
警察官は床で気絶して倒れていた。
「しょうがない・・・運ぶぞ!西村!手伝え!」
「佐藤は!?」
恵は後部座席で横になって同じように気絶していた。
「お前は佐藤を運べ!俺は警察官を運ぶ!」
悠斗は恵に駆け寄ると恵を抱き上げる。
「ガソリンが漏れてる!」
外から男性がバス内に叫ぶ。
悠斗と三郎は警察官と恵を抱え、バスを降りると前に走る。
避難民たちも走る。
タンクローリーとバスの間で潰されていた車から火の手が上がると、バスにも引火する。
「そうだ!前の車の運転手は!?」
悠斗がバスに追突された軽自動車に向かうと、軽自動車の中では男性が血まみれの状態で暴れていた。
「感染してたんだな・・・」
悠斗は避難民たちのところに戻ると首を横に振る。
気がつくと渋滞はすでになくなっており、車は一台も居なかった。
「料金所まで歩くぞ」
三郎は警察官を担ぐ、悠斗は恵を担ぐと避難民たちとともに料金所に歩き出した。