データ5 人身事故
悠斗と恵が乗る車は県道1号線を進んでいた。
「現在石川県輪島市内では各所で暴動が発生しています。付近の住民方は指定の避難所に向かうか、家の中で戸締りを十分にして家の中で待機してください」
カーラジオはすべてのチャンネルで緊急の放送に切り替わっていた。
「そういえばお前は警察に指名手配とかされてないのか?」
「多分まだね。されているのは今のところ上司の人だけみたい」
助手席で恵はスマートフォンを操作していた。
「あんた能登空港ってどんな感じのところか分かる?」
「そりゃ地元の空港だからな何回は利用したことはあるけれども小さい田舎の空港だぜ?人が殺到してなければいいけど・・・」
車は県道1号線を曲がると市道271号線に入る。
「ここら辺は少ないわね・・・」
市道には乗り捨てられた車がいたるところに放置されていた。
車をしばらく走らせるとコンビニの看板が遠くに見えてくる。
「あそこのコンビニがある交差点を曲がれば空港はもうすぐだ」
車がコンビニに近づくにつれてゾンビの数は徐々に増えていた。
ドン
ゾンビが車の側面に体当たりする。
「一回コンビニの駐車場で車を止めて」
「わかった」
悠斗は車をコンビニの駐車場に入れるとコンビニの正面に止める。
コンビニの中には外から見た感じでは人は居なかった。
「食料を確保するわよ」
「え?空港はもうすぐだぞ」
恵は拳銃を取り出すと車から降りる。
悠斗も車のエンジンを止めると車から降りる。
恵は周囲に警戒しながらコンビニへと入る。
悠斗もその後に続いてコンビニの中へと入る。
コンビニの中はお菓子や飲み物、ご飯類は荒らされておりほとんど残ってなかった。
「これはひどいな・・・」
「残っている分だけでも頂いていきましょう」
悠斗と恵は残っている飲み物やお菓子を車の後部座席に乗せる。
「それじゃあ、いきましょう」
恵は車に乗り込む。
「また運転かよ・・・」
悠斗は車に乗り込むと鍵をポケットから取り出すとエンジンをかける。
フォン
するとコンビニの裏からゾンビが一体出てくる。
ゾンビはコンビニの制服を着ていた。
「あんな姿になっても仕事とは恐れ入るよ」
悠斗はルームミラーとサイドミラーで後方を確認すると車をバックさせた。
車はコンビニを出ると再び能登空港へと走り出した。
「車が邪魔だな」
道には放置車両が多く乗り捨てられており、それをかわすためにスピードを落としていた。
能登空港前交差点に差し掛かると目の前は車が多重事故を起こして通れなくなっていた。
「どうするの?」
「いや、右に曲がるから特に目の前の事故は関係ない」
交差点を右に曲がると放置車両が少なくなっていた。
フォォォン
悠斗はアクセルを踏み込む。
車のメーターは110キロを指していた。
「ちょっと!飛ばしすぎじゃない!?」
「大丈夫大丈夫」
車は路肩の放置車両を対向車線にはみ出しながら避けると、車の陰からゾンビが飛び出してくる。
ドン
車がゾンビをはねるとフロンドガラス全体にひびが入る。
「うぉっ!」
「きゃっ!」
悠斗は驚き、ハンドルを左に切ってブレーキを踏む。
車は路肩の斜面を駆け上がると停車する。
「あっぶねー・・・」
「死ぬかと思ったわよ!」
二人は車から降りると車を見る。
バンパーは完全に外れて、ボンネットからは白い煙が出ていた。
「あー、ラジエーター逝ったな」
「どうすんのよ!」
「歩きしかないだろ・・・」
二人は能登空港へと歩き出した。