データ4 うるさい車
「これからどうする気なんだよ?」
悠斗はキッチンでヤカンに水を入れながら聞く。
「とにかく安全なところまで逃げるしかないでしょ」
「どこが安全なのかわかってんのかよ?」
「知らない」
悠斗はカップラーメンを二つ机の上に置く。
テレビではバラエティ番組が何事もないかのように放送されている。
ドンドン
悠斗たちの居る部屋の扉が激しく叩かれる。
恵はすばやくテレビを消すと部屋の電気も消し、ガスの火も止める。
ドンドン
しばらく扉が叩かれた後、音は収まった。
「いったのか?」
「多分、でも近くには居るかもしれないからテレビも電気もつけれないわね」
「あいつらはどんな習性なのか研究してたお前なら知ってるだろ?」
「はっきりとは分かってないけども音には敏感ね。あと、力も脳のリミッターが外れているから凄いわ。・・・後は・・・自然の光以外に寄っていくことぐらいね」
「よく、俺の部屋の木の扉が破られなかったな」
「それは単にそいつの元の筋力が低いだけじゃない?」
部屋の外からは時々サイレン音が聞こえてくる。
「何で初対面の俺にそこまで話してくれたんだ?」
「何と無くよ。気まぐれ」
「そうかよ。俺は寝る。横の部屋にベットがあるから使えよ。俺はリビングで寝る」
「ありがたく使わせてもらうわね」
恵は隣の部屋へと消えていった。
(カップ麺食えなかったな・・・)
悠斗は目を閉じるとそのまま眠りについた。
「起きて!」
悠斗は恵に叩き起こされる。
「夢じゃなかったんだな」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ。出発するわよ」
部屋の時計は午前9時30分を指そうとしていた。
「外の様子はどうだ?」
「自分の目で確かめてみたら?」
悠斗は窓を開けて外を見る。
外では手が千切れていたり体から大量の出血をしている人がゆらゆらと我が物顔で道の真ん中を歩いていた。
「状況はひどいな・・・」
「昨日の内に無理にでも進んでおくべきだったわね」
悠斗はしばらく外を眺めている。
「なぁ、あいつ等ってゾンビみたいなものか?」
「う~ん、大体そんな感じかな?」
遠くから車のエンジン音が聞こえてくる。
グシャッ
車はアパートの前をゾンビを引きながら通り過ぎていった。
「西村、あんた車持ってないの?」
「持ってるよ」
悠斗は机の上の鍵を見せる。
「どんな車?」
「多分俺の車は逃げるのに向かないと思うな~」
悠斗は外のアパート裏の駐車場を見る。
「どれ?」
恵も窓から駐車場を見る。
「あの端から3番目の車」
「え・・・あれ・・・?」
悠斗が指差す先には車高は落とされマフラーは交換された白のトヨタ・チェイサーが停まっていた。
「向かないわね」
「だろ?でも、会社から乗ってきたトラックはもうガソリンはないぞ」
「あっちの車は?」
恵はチェイサーを指差す。
「あれは昨日ガソリン入れたばかりだから満タンだぞ」
恵は大きく溜息をつくとチェイサーを指差す。
「じゃあ、こっちしかないでしょ。ガソリンスタンドで給油するほうが危険だわ」
「決定だな」
悠斗はリュックを押入れから出すと中に食料と着替えを入れる。
「準備できた?」
「あぁ、大丈夫だ」
「もう二度とここには戻ってこられないと思って」
「分かった」
恵は拳銃を取り出すとゆっくりと扉を開けてゾンビが居ないことを確認する。
「いないわ」
部屋を出るとゆっくりと進み、階段を下りる。
ゾンビは悠斗たちには気づいていない様子だった。
アパート裏につくと、悠斗は車の運転席側に回りこみ鍵を開ける。
ガチャ
鍵が開くとすばやく二人は車に乗り込む。
「いくぞ」
フォォン
悠斗がエンジンをかけるとマフラーから大き目の音がする。
その音にゾンビが反応してゆっくりと近づいてくる。
フォォォン
悠斗が車を走らせるとその後を追うようにしてゾンビがついて来る。
「ひとまず能登空港に向かって、うまくいけば飛行機で脱出できるかも」
車は能登空港に向かって走り出す。
自分が好きな車種を出しただけなのでストーリには特に関係ありません