データ19 銃撃戦
高機動車は国道157号線を進む。
路肩には乗り捨てられた車の上に雪が積もっていた。
「もう生き残っている人は居ないのかしら・・・」
ドガッ
道を歩いているゾンビを跳ね飛ばすと、フロントガラスに血が少し飛び散る。
「それにしても信号もついてないなんておかしいよな・・・」
車は乾東交差点に差し掛かる。
交差店内では、乗用車同士が正面衝突を起こして大破していた。
車の中では挟まれたゾンビが暴れていた。
高機動車は金沢バイパスを走る。
両脇の店舗の電気は消えており中の様子は見れなかった。
「発電所でもやられたのかしら?」
「多分そうなんじゃねぇか?」
高機動車は立体交差点の上を通過しようとすると、目の前で大型トレーラが横転して道を塞いでいた。
「バックするわね」
恵はバックギアに入れると車をバックさせる。
「それにしても事故を起こしている車が多いな・・・」
「これくらいは車社会の地方じゃ仕方ないことよ」
「これが東京だったらもっと悲惨だったんだろうな」
「・・・考えたくも無いわ」
車は反対車線に出る。
「検問所でお前は大丈夫なのか?」
「噛まれてはないから大丈夫よ」
「そうじゃなくて捕まったりしないのか?」
「あぁ、そっち?それなら大丈夫よ。逃げるから」
「簡単に言うなぁ・・・」
しばらく走ると大きな陸橋が見えてくる。
その横には建設中の北陸新幹線の高架が見る。
「結局、北陸新幹線開業は無かったな・・・」
「もう、北陸新幹線どころじゃないわね」
その奥の大型ショッピングセンターからは黒い煙が出ていた。
「何か、いろいろありがと」
悠斗が外を眺めながら恵に言う。
「急に何よ・・・気持ち悪い・・・」
「俺一人じゃすぐに死んでたからな」
「そんな礼を言われるようなことはしてないわ・・・目もこんなことになっちゃったし・・・」
「それなら、別に気にしないって言っただろ」
車は御経塚北交差点を通過する。
車内では言葉を交わすことはなく、悠斗はただ外を眺めていた。
道には他の車が通ったであろう轍が出来ていた。
轍はそのまま高速道路へと続いていた。
「みんな富山に逃げてるんだな」
「そっちのほうが近いからね」
高機動車は料金所を通過する。
料金所のバーは2つのうちどちらも折られていた。
高速道路の本線に合流するといくつもの轍が出来ていた。
「結構な数の人が逃げていたのね」
すると、黒いセダンの隣でタバコを吸っているスーツ姿の男二人が見えてくる。
「おい、あいつらはもしかして・・・」
スーツ姿の男二人は、向かってくる車に気がつくと道を塞ぐように並び、手を振る。
片方の男の手にはスーツケースが握られていた。
恵はアクセルを踏み込むとエンジンが唸る。
男二人は拳銃を取り出すと高機動車に向かって発砲する。
キキーッ
恵は車を止めると、車の後ろから89式小銃を取り出すと、車から降りると89式小銃を撃つ。
タタタタタタ
スーツ姿の男は恵の家にいた大柄な男と痩せ型の男だった。
二人はセダンの陰に隠れるとP2000を撃って応戦する。
チュィン
銃弾が高機動車に当たる。
恵は高機動車の後ろに隠れる。
悠斗も助手席から降りると、高機動車の後ろに隠れる。
「あいつ等殺す気満々じゃねぇか!」
悠斗は9ミリ拳銃を取り出し、撃つ。
バスン
悠斗が撃った銃弾はセダンのタイヤを打ち抜く。
パンパンパン
大柄な男が撃った弾は高機動車のフロントガラスに当たり、蜘蛛の巣状のヒビを作る。
タタタタタタ
恵が乱射する。
バリン
黒色のセダンの後部のガラスや、ブレーキランプが割れる。
「あいつ等!殺す!」
痩せ型の男は懐から手榴弾を取り出すとピンを抜く。
タン
痩せ型の男が手榴弾を投げようとしたときに恵によって腕を撃ちぬかれる。
「ぐあっ」
その場に手榴弾が落ちる。
「うわああ!」
「にげ・・・」
パァン
手榴弾が爆発して大柄な男は全身に手榴弾の破片を喰らい、その場に倒れる。
痩せ型の男は背中に破片を喰らう。
その横ではスーツケースが壊れており、中の液体が漏れ出していた。
「く・・・くそっ」
ゴリッ
痩せ型の男の頭に89式小銃が突きつけられる。
「死ね」
恵は笑顔で引き金を引いた。