データ18 サンプル3
痩せ型の男が恵の腕から注射器を抜くと、注射器を投げ捨てる。
「あーあ、びしょびしょだよ」
「・・・結局佐藤恵はどうするんだよ」
悠斗と恵はその場で倒れていた。
「資料は手に入ったんだし、こいつはここに置いて行けば良いだろ。変な薬品も打っちまったんだから」
男二人は研究室から出て行くと、県立大学の駐車場にとめてある黒色のセダンに乗り込むと車を走らせて行った。
「何とかしないと・・・」
恵は立ち上がると近くの机の引き出しから手探りで針金を取り出すと、適度に曲げ手錠の鍵穴へと差し込む。
カチャッ
恵の手錠が外れるとすぐに倒れている悠斗の手錠も外す。
「起きて!」
恵が悠斗を揺らすが、額からは大量の汗が吹き出ていた。
「確か、パソコンに失敗作のデータが・・・」
恵がノートパソコンの電源をつけると、データを確認するが、何も残っていなかった。
「あいつ等消して行ったのね!」
恵はパソコン閉じると研究室の隅にある実験用マウスの飼育されている箱の向かうと、「サンプル1」と書かれた箱の中を見る。
「もう症状は出てもいいはず・・・」
箱の中ではマウスが死んでいた。
「嘘でしょ・・・」
恵は「サンプル3」の箱を取る。
箱の中のマウスは暴れまわっており、体には無数の傷が出来ていた。
恵はその場で座り込むと悠斗を見る。
悠斗は苦しそうに胸を押さえていた。
「とにかく寝室に・・・」
恵は悠斗を背負うと階段を上り1階にある寝室のベットへと悠斗を運ぶ。
「お願い・・・」
恵は悠斗の手を両手で握ると、ベットに座る。
悠斗は汗は大量に掻いているがそのまま眠っていた。
恵もそのまま寝てしまう。
恵は気がつくとベットで寝ていた。
横では悠斗が目を覚ましていた。
「良かった!目が覚めたのね!」
「・・・あぁ」
「待ってて!お茶持ってくるね」
恵はキッチンに向かう。
悠斗は両手を目の前に突き出すと手を握ったり開いたりする。
「持ってきたわよ」
恵はペットボトルのお茶を悠斗に差し出す。
「ありがと」
悠斗が手を伸ばしてペットボトルを掴もうとするが、その手前を掴もうとしてしまう。
「悠斗・・・あんたもしかして・・・」
「あぁ・・・何か目が覚めたときから右目が・・・」
「・・・他には無いの?」
「左目もちょっと霞んでるんだ」
悠斗はペットボトルを取ると、キャップを開けて飲む。
「冷えてない・・・」
「そうなの・・・家中の電気が使えなくなってるの・・・」
悠斗はキャップを閉めると、ベット横の机にペットボトルを置く。
「それで、この目は治るのか?」
恵は無言で首を横に振る。
「そっか・・・」
「ごめんなさい。さっさと失敗作を処分していれば・・・」
「もうこうなった物はしょうがないよ」
悠斗はベットから出る。
「佐藤も何か打たれてなかったか?そっちは大丈夫なのか?」
「えぇ、マウスを見たけれども特に変わった様子は無かったわ」
しばらく二人は黙り込む。
悠斗はおもむろにスマートフォンを取り出し、電源をつけてみるが画面は真っ暗なままだった。
「そう言えば電気が使えないってどういうことだ?」
「分からないわよ。ブレーカーは落ちては無かったわよ」
悠斗が外を見ると真っ白な景色の中をゾンビが足跡を残し歩いていた。
「これからどうしようか・・・」
「どうしようも何も、脱出するだけでしょ」
恵が車の鍵を見せる。
「俺に運転しろってか!?」
「そんなわけ無いじゃない。さっさと行くわよ」
恵が悠斗に9ミリ拳銃を渡す。
「あいつ等リビングに残していってくれたわ」
「当たるかな・・・」
悠斗は不安そうに9ミリ拳銃をジャンパーの内ポケットにしまう。
悠斗と恵は家を出ると、横の県立大学の駐車場にとめた高機動車に乗り込むとエンジンをかける。
ドルゥン
車は轍を作りながら進む。
「今日こそ富山県に抜けるわよ」
高機動車は県道157号線を進む。