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13/22

データ13 雪

悠斗と恵みはトラックに乗り込む。


「嘘でしょ・・・」


恵は大きく溜息をつく。

悠斗はカーラジオをつけると周波数を合わせる。


『・・・おります。現在、政府も情報が錯綜しており、石川県内の明確な情報は分かっていません。分かっていることは、県内各地で暴動が発生しており、政府は石川県の県境をすべて簡易的な壁で囲って完全に封鎖した模様です。』


悠斗はチャンネルを変える。


『・・・港は自衛隊による空爆で使えない状況になっているとの事です。なお、小松空港と能登空港は現在滑走路が事故により使えない状況になっています。避難される方は、北陸自動車道に設置された検問所で検査を受けてから・・・』


ガン


ゾンビがトラックの運転席のドアを叩く。


「高速から出るしかなさそうだな・・・」

「此処から一番近いインターはどこなの?」

「金沢東か、森本だな」


悠斗はギアをリバースに入れるとトラックからアナウンスが流れる。


『バックします。ご注意ください』


その声を聞きつけて草むらからゾンビが出てくる。

悠斗はゾンビを気にもせずにトラックをバックさせる。

しばらくすると側道が見えてくる。

悠斗はトラックをバックで側道に入れると、方向転換させる。


「運転うまいのね」

「こんなのバックモニター見てれば誰でも出来るよ」


悠斗はルームミラーの変わりについているモニターを指差す。


「そうじゃなくて、マニュアルよ」


トラックはもと来た道を引き返し始める。


「ん?お前オートマ限定か?」

「そうよ。悪い?」

「悪くは無いけど・・・」


ドガッ


トラックは道を歩いていたゾンビを跳ね飛ばす。

すると、目の前にゾンビの群れが見える。


「どうするの?」


恵が不安そうに聞くが悠斗はスピードを緩めることなくゾンビの群れに突っ込む。


ドガッ


ボコッ


トラックがゾンビの群れを抜けると、フロントはへこみ、ヘッドライトは両方とも割れてしまっていた。


「勇気あるわね・・・」

「こう見えて罪悪感でいっぱいなんだぞ」

「そうは見えないわね」


トラックは交差点を左折して県道221号線を走る。


「もう日が暮れてきたわね・・・」

「冬だからな・・・もっと寒くなるぞ」


恵は暖房の風量を最大にする。

それは曇っており、今にも雨が降りそうだった。


「雪が降らなければ良いけど・・・」

「そうね・・・」


キキッ


悠斗は田んぼに周りに民家が無いところで車を止める。


「どうしたの?」

「もう日が暮れる。さっきあいつらの群れに突っ込んだときにヘッドライトを割ったみたいでな、夜は走れそうに無い」

「此処で寝るの?」

「そうだ。幸いなことに後ろのベットには毛布が一枚あったから何とか一夜は過ごせそうだな」

「寄り添って寝るの!?」

「大丈夫!襲ったりはしないから・・・多分」

「多分って・・・でも、しょうがないわね」


悠斗と恵は後ろのベットで背中を向けるようにして寝る。


「ねぇ・・・起きてる?」


恵は悠斗のほうを見る。


「起きてるよ」

「家族は大丈夫なの?」

「家族か・・・」


悠斗は大きく溜息をつく。


「あ、ごめんなさい・・・そんなつもりじゃなかったの」

「勝手に俺の親を殺すな!」

「え?」

「俺の親は大阪に住んでるよ」

「それじゃあ、何で石川県に?」

「親が大阪に住みたいって言って勝手に引っ越したんだよ。俺は地元に残ってけど」

「自由な、ご両親ね」

「自由すぎて困るよ・・・。そっちはどうなんだよ」

「私?私はこの裏の業界に入るときに家族も、友達とも縁を切ったからどこに今住んでるかも知らないわ」

「大変なんだな」


気がつくと恵から寝息が聞こえてくる。

しばらくすると、悠斗も眠りにつくことが出来た。






先に目が覚めたのは悠斗だった。

車内から外を見ると一面真っ白になっていた。

雪が積もる中、ゾンビはゆらゆらと歩いていた。


「おきろー」


悠斗が恵を揺らすと、ゆっくりと起き上がる。


「わぁ、雪だ!」


恵は雪を見てテンションが上がる。


「雪は初めてか?」

「初めてよ!」


悠斗は運転席に座るとエンジンをかける。


キュルルルル


しばらくセルモーターを回すが、エンジンは掛からない。


「あれ?ガス欠なはずは無いんだけどな」


キュルルルルル ドルゥン


ひときわ大きな音があたりに響くと、周りに居たゾンビが寄って来る。

恵は助手席に座るとシートベルトを締める。

悠斗はシートベルトを締めると、トラックをゆっくりと進める。

トラックはゆっくりと県道221号線を走る。


「もっと、飛ばせないの?」

「無理だ。このトラックノーマルタイヤを履いてたんだ」

「この時期に?」

「飛ばさなければ大丈夫だろう」

「今日中には高速にはいけそう?」


車内の時計は7時45分を指そうとしていた。


「いけるだろ」


トラックは道に轍を作りながら進む。

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