烏丸 天理、その目が見ているものは……
9話目投稿します。
沢山の人が見てくれてとても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
そして翌日、授業を適当に流して放課後が来るのを待っている。あ〜暇だ。毎度毎度こんな低レベルの勉強を受けて……こんなので頭が良くなる訳ないだろ。
一回ハーバード大学の授業見てこい。こんな授業、アイツらなら小学生の頃に出来てるぞ。
大体、座る席が決まっていない時点で何処か適当なとこあるよなこの学校。来た順番で前から詰めていく訳でもないし、本当に適当な席に座って授業を受ける事が出来る。当然中には後ろの席に座って携帯を触る奴やゲームをするバカも出てくるが、教室の至る箇所に監視カメラが配置されておりソレを許す事はない。
「あ、あの烏丸さん。この問題ってどう解けばいいんですか?」
席が自由という事は大体は毎回違う席になる。特に人気なのは真ん中辺りの席だ。教師から指名される事が一番少ない。
逆に後ろの席って指名される事が多いからな。かといって前列に座れば普通に当てられる。
ちなみに授業は基本、各机に配備されている小型のモニターで行われており、これ一つに全ての教科のデータが入っている。
この辺は最先端の技術を取り入れてるんだな。おかげで鞄が軽くて楽だ。教科書代もいらないしな。
「か、烏丸さん。お願いします。次私が当てられるんです。せめてヒントだけでも……」
話は戻るが残念な事に俺は今、最前列の席に座っている。くそ、佐々木の奴が無駄に喋ってくるからいい席が取れなかった。
おのれ佐々木許すまじ。
「か、烏丸さぁん」
「そこはXに三を代入しろ。お前なんで文字式のまま計算しようとしてんだよ。あと二番のルートの計算式間違ってるぞ。そこは……」
そして俺の隣には最近知り合った桜坂 小南が座っている。お前俺と同じクラスだったのな。一クラス五百人もいればそりゃ分かんねぇわ。
大体このレベルの問題なら三秒あれば解けるだろ。まあそんな事を言えば龍神峯の奴は二秒で解けるわ、とか言いそう。アイツ負けず嫌いな性格してるからなぁ。
「あ、はい、とても良く分かりました。では行ってきます」
そう言った直後に桜坂は教師から指名された。まあ俺が教えたんだから間違う事はないだろ。
そんな事より今後の事だ。
放課後まで待ったら帰ってしまう可能性もある。なら教室にいて尚且つ時間がある昼休み中に仕掛けるのが妥当だろう。相手が昨日の奴等みたいにバカなら教室にいるだろうし臆病な奴なら何処かへ身を隠す筈だ。一番面倒なのはそれなりに頭のいい奴の場合だ。もし今回の件に別の目的がある場合、今まで積み重ねたモノを壊す事になる。そしてまたやり直しだ。
大体、別の目的って何だよ。なんか大層な物があの部活にあんのか? いや、絶対ないな。何処からどう見ても冴えない部員共が作った弱小クラブだ。これといった大会も出てないし成果もない。そんな部活にちょっかいを出す理由なんて他に……ない訳でもないな。
でも可能性が圧倒的に低い。仮にそうだとしたら……。
「奴等の内の誰かが嘘を言ってる事になる」
そしてもしそうなら嘘を言ってるのは間違いなく桜坂だ。勝手に決めつけるのは多少なりとも罪悪感があるが……まあ全ては昼休みになれば分かるか。
隣の桜坂が笑顔で感謝を述べるが俺にはその笑顔が本物なのか偽物なのか分からなくなっていた。
一般人だろうが芸能人だろうが総理大臣にだって誰にも見せないもう一つの顔を持っている。もちろんこの俺もだ。人間なら勿論誰だって一つや二つじゃ数えられないくらい持ってるだろ。
まあ仮にもし、人の心を全て読めてしまう秘密道具か何かがあるとしよう。
もしお前がソレを使ったら……お前はこれから人を信じる事が出来るか?
人の汚い部分を全て見て、何を考えてるかを全て知って、ソイツが自分の事をどう思っているかを理解した後……お前とソイツの関係はこれまでと同じで関係でいられるか?
ろくに友達が出来た事がない俺には理解出来ない事だが、一つ言えることは……、
何年もかけて出来た強固な人間関係だったとしても、そんなものはたった数秒の悲劇で簡単に終わってしまうもんなんだよ。
それを理解してようがしてなかろうが、人間ってのは自分を理解してくれる人を探して、最後には裏切られてを繰り返す。
本当に滑稽だよ。人間って生き物は。
読んでいただいきありがとうございます。
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