天才少年、入部を決意する
4話目です。書けたら直ぐに投稿してしまうのでストックとか考えてないです。しかし完結させるように頑張りますので応援よろしくお願いします。
「入りなさい」
そう催促され、黙って教室に入る。
「なんだコレ?」
目に映ったのはとても広い教室。それはこの学校に来てからもう見慣れてしまった。目がいったのは教室の内装だ。
天井に取り付けられた高価なシャンデリア。規則正しく並べられた長机。その奥にある貴族が座りそうな大きな机と椅子。周りには様々な形をした鎧の武者のオブジェ、ファンシーグッズが飾られている。さらにはキッチンや和室まで配備されている。壁は西洋の屋敷の様な感じであらゆる文化が取り入れられた全くわからない内装をした部室だ。
「隣の教室の壁を取り除いて敷地を広くしたの。それが偶々調理室だったからキッチンとして使う事にしたのよ。先輩達は事件の依頼で今はいないわ」
「他の二年生はいないのか」
「ええ。今のところ二年生は私だけよ。一年生はまだ来てはいないわね」
へぇー。意外だな。コイツの人気っぷりなら美貌に騙された哀れな子羊共が揃って入部しそうなんだが。
「で、貴方は入部するの?それとも死ぬの?」
「何その質問。何気に断るっていう選択肢を潰しにきてるよな?」
何コイツ。まさか俺に入部してほしいっていう意思表示ですか。俺の事好きなの?
「今何かとても不愉快な事を考えられた気がするのだけど……」
まあ、コイツに限ってそれはないか。
俺の事好きな奴なんて俺くらいしか思いつかないし。偶に見た目だけを見て告白してくるアホ共がいるが、そんな奴にはキツイ毒舌でも食らわせてやれば直ぐに泣き出し次の日にはアイツ最低なんて雰囲気を醸し出す。
つい前日まで好きだったのに翌日に嫌いになるって、お前らの言う好きって一体なんだよ。科学的に説明してくれよ。
結局、人間は見た目が全てだという事だ。誰だよ。人間は見た目じゃない。中身だ! なんて言ってる奴はよぉ。
「まあ、今日のとこは見学って感じだ。なのでまだ答えは出てない」
「なるほど。つまり死を選ぶと」
あれー? 結局死んじゃうのかよ。先送り作戦失敗。
そんなやり取りをしていると突如、電子音が聞こえてきた。音の発生源はどうやらあの貴族の机に置いてあるあの電話だろう。
龍神峯が受話器を取り、さっきまでとは違う猫被りの声で対応する。
「はい、こちら総合国際高校探偵部でございます。本日は黒崎部長不在の為、代わりに部員である私、龍神峯 皐月が受けたまわせてもらいます。お名前と依頼内容についてお聞きしてもよろしいですか?」
うわぁ、さっきまでの黒い気配が一気に消えやがった。変わり身の術がうまいこった。探偵より忍者の方がむいてるんじゃねえの?
「……はい。……はい。……では今すぐ其方に向かわせてもらいます。……はい。分かりました。では報酬はその時に。それでは後ほど」
「もしかして依頼か?」
「依頼に決まってるでしょう。今の会話を聞いてそんな事も分からないなんて、それだから万年四位なんて不名誉を与えられるのよ」
「本当に一言多い奴だな」
会話に愚痴を入れないと会話出来ないのかよコイツ。
それにしても、報酬が出るのか……そこら辺のボランティアとは違うってわけか。
……決して金に目が眩んだ訳ではない。そんな事しなくても金に困ってなんかないし。自慢ではないが運と金を呼ぶ力だけはあると自覚している。
中学の頃、初めて宝くじを買った時に過去数年の当選番号からある程度の予想を弾き出し、その中で最も使用頻度の高い番号を使っただけで俺は二等の二億円が当たってしまった。
偶々運が良かっただけか……それとも俺の計算方法が神がかってたのか……今としてはもうどうでも良い事だ。
今になって分かるのは、過去の当選番号から次の当選番号の予想を弾き出す事が普通は出来ないという事だけだった。うわっ、俺って天才じゃん。……あの時どうやったんだっけ?
「何バカな事を考えているの。早く行くわよ」
おっと変な事を考えてた。
ん? そもそも行くってどこに?
それよりなんで俺がついていく事が確定してんだよ。
大体コイツのこの態度が気にいらねぇ。男が全員自分の手玉になると思ってんじゃねえよ。
「別に俺は部員でもないし、行く必要ないだろ。そもそもお前ほど完璧な奴なら一人でも何だって出来るだろうし……」
「見た目と噂だけで人を判断するなんて最低だわ。貴方ならその気持ちは分かると思ってたのだけれど……所詮貴方もそこら中にいる頭が残念な人達と同じという事ね。そんな人間が人助けなんて出来るわけなかったわ。なら早く出て行ってくれない? 貴方みたいな口先だけで何も出来ない人間が私は大嫌いなのよ」
「……俺が……あのゴミ共と同じ……?」
……この俺が口先だけ? 何も出来ない?
……ふざけんな。……ふざけんなよ。
俺はお前ら雑種共とは違う。
出来もしない夢を見たり、叶いもしない願いを抱いたりなんかしない。
あんな群れることでしか自分を保てない野郎共とは違うんだ。
俺みたいな人間に人助けなんて出来ない?
……上等だよ。やってやろうじゃねぇか。
天は俺の上に人を作らず。
こんなクソみたいな女王なんぞに俺の全てを評価されてたまるか。
ポケットに入れてた入部届の紙を取り出し、そこに乱暴に、それでいて綺麗に文字を書いていく。そして文字を書き終わると紙を龍神峯の前に突きつける。
それを見た龍神峯は俺の顔と紙を交互に見ながら言葉を口にする。
「……本気なの?」
「本気に決まってるだろ。お前に俺の評価を改めさせてやるよ」
一呼吸置いた後、静かに宣言する。
「入部してやるよ。探偵部」
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