お父様…
それぞれが仮想空間ルームから戻ると見学をしていた光が駆け寄ってきた。
光「まずは一勝だね!おめでとう!」
翼「あぁ、光はどうだったの?」
光「もちろん勝ったよ!」
と言うたわいもない会話をしている翼達の隣を七辻が横切った。大粒の涙を浮かべながら…
光「はぁ、まあその代わり周りからの目は厳しくなるだろうけど…」
翼「落とすんだったら上げないで!!あながち否定はしないけども!」
翼と光は笑みを浮かべながらその場を後にした。
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美香side
美香「(なんで!なんであんな少年なんかに)」
七辻は仮想空間ルームを後にすると、闇雲に走り出した。昔から何でも出来た美香は七辻家でも天才とうたわれ、同世代など敵無しの状態だった。
しかし、突如現れた失礼極まりない少年『金守 翼』に生まれて初めての敗北をしてしまった。
七辻と言う名家の名前や周りからの期待を背負うには、まだ早すぎたのかも知れない。気付いたときには七辻は、大きな庭園に出ていた。光の反射を受け、光輝いている池は、今の七辻には似合わぬ光景だった。
「どうだ今年の新入生は中々の人材だろう…」
突然の声に驚き背後を振り向くと、そこには一人の男性がいた。まだどこか若々しさを残すが、頭領の様な堂々とした顔立ちの人である。
美香「お父様…」
そう、この人こそ私立七辻魔法学園の創設者であり、美香の父親である『七辻 総一郎』だった。
彼は魔法学だけでなく実戦の方も腕がたち、世界でも数少ない『A級魔導士』に認定されている。
総一郎は美香の側に歩み寄り、話した。
総一郎「試合見たぞ、中々の試合だったじゃないか。大人でもあんな良い戦い出来ないぞ。」
美香「でも、負けました。お父様、なぜ私は負けたのですか?」
美香は素朴な疑問を総一郎にぶつけた。美香はまだ納得いかなかった。なぜ自分が負けてしまったのか、なぜ彼を倒す事ができなかったのかを。
総一郎は考える素振りを見せてから答えた。
総一郎「そうだな…強いて言うなら経験の差とでも言っておこうか。」
美香「経験の差?」
思わぬ解答に美香は聞き返した。総一郎は真っ直ぐ美香を見つめ、「そうだ」と肯定した。
総一郎「彼はあまりにも戦いに慣れている。常に冷静で着々と戦術を組み立てる。あんな戦闘技術、プロの魔導士ですら難しいよ。一体誰に教わったらあんなことを」
美香は総一郎の言葉に少なからず驚いた。あの父が他人をあそこまで誉めるのを初めて見た。
美香は総一郎にお礼を言うと直ぐ様立ち去った。密かに新たな闘士を燃やしながら。
美香「(次こそは絶対に!)」
美香が立ち去ると総一郎がはにかみながら口を開いた。
総一郎「今年は豊富な人材が揃ってるな。」
総一郎の言葉は風に書き消された。