七辻 美香
学校の中に入ると、翼と光はバカ広い体育館へ着いた。まずは、参加者への実施試験の説明をするらしい。
時間はまだ30分以上あるので、二人で話していた。
すると急に周りがざわめき出した。誰かが来たのかと思い、辺りを見渡すとそこには一人の女性がいた。金色の長い髪の人だ。
翼「光、あの人誰?」
光「知らないの!彼女は『七辻 美香』学園長の娘さんよ!!」
光はため息混じりに小さな声で耳打ちをする。翼は「へぇー」と興味無さそうに答え、話を続ける。
翼「じゃあ、あいつも結局倒さなきゃいけないわけか。」
「「「・・・・・。」」」
周りは一気に静かになり、視線が翼と光へ行く。
その発言は非常に不味かったと言えよう。あまりに声が大きかったため、周りの人に聞こえてしまったのだ。当然本人の耳にも入っている。
知らない男性数人が翼の周りを囲む。
男性1「お前!七辻様に向かってずいぶん偉そうな口を叩くな!!」
翼「いや…お前がその女の事言っても説得力ないぞ。」
翼はごもっともな発言の様にも思えるが、翼の周りは翼を敵視しているのでそう思う者は今誰も居ない。更に男性2は話を続ける。
男性2「餓鬼のくせしていい気になってんじゃねーよ!!二度とそんな口きけないようにしてやる!」
翼「その言葉、そのままそっくりお前達に返すよ。」
今すぐドンパチやりそうな勢いだったが、「止めなさい!」と言う仲裁の声が掛かった。声を掛けたのは他でもない七辻美香である。
男性1「しかし七辻様!こいつは七辻様を………」
美香「いいわ話は私がつける!貴方達は下がってて。」
美香の声が掛かり、男性達は翼を睨みながら下がる。美香は凛とした表情で翼の前に立ち、話をする。
美香「訂正するなら今よ?」
翼「何の事でしょう?」
美香「あらそう、ならいいわ。私を誰だか分かってるの?今すぐ不合格~って事も可能よ?」
翼「まさか、天下の七辻様が庶民の“この程度”の発言でお気を悪くさせるほど、器が小さいお方だとは思わないもので。」
翼と美香が火花を散らす中、先生が登場したため一時休戦となった。実施試験の説明を始めるようだ。
美香「あなた、今日はついていたわね。それに免じて今回は許してあげる。」
こう言い残し、美香は翼の前から去った。すると先生がマイクからしゃべり出す。
先生「それではこれから実施試験を始めます。今回は仮想空間ルームで一対一をひたすら行い、合計ポイントで合格者を選考したいと思います。それでは受験者の皆様、くじ引きを引いてください。」
翼は近くのくじ引きBOXを引いた。紙には2276番と書かれていた。光と別れ、早速仮想空間ルームへ向かうとそこには美香の姿があった。
美香「あら、貴方もここの仮想空間ルームでということは………」
翼「はい。僕が貴女の相手ですね。」
二人は手元の2276番と書かれた紙を見せ合いお互い顔をしかめた。