表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4





部活の開始時間は8時半。

今朝葉月の家に寄ったが、家には誰もおらずてっきり何か用があって先に行ったのだと思った。

けれど部室に葉月はいなかった。

先にいた龍達と少し待ってみたのだが9時になった今も葉月はこない。

あれでいて意外と真面目な葉月が遅刻をしたことは今まで一度もないというのに。

携帯も幾度と掛けるのに、全て留守電に繋がってしまうし、一体どうしたのだろうか……。



「事故なんてことはないよな……?」

「ない……と思う。あったなら途中で俺が気がつくはずだ」

「幹太と葉月は道が一緒だもんね」



道中野次馬が溜まってたなんてことはなかったし、葉月がいつもの通学路を通っていないなんてことが無ければ最悪の事態ではないはずだ。

不安ばかりが募る中、バンッ! と扉が大きく音を立てて開き、念のためと職員室に葉月の様子を聞きに行った龍が昨日の勇介達のように肩で息をして入ってきた。



「葉月が……補導されたって」

「補導!? 一体どういうことだ!?」

「分からない……。先生も教えてくれないんだ……。ただ、一つだけ聞いたのは……」



呼吸もさながら、慌てるように掠れた声で絞り出すように言った龍の言葉に俺は思わず自分の耳を疑った。



「援交で……補導されたらしいんだ……」



エンコウ……?

一瞬脳内で変換されなかったその言葉。

ようやく脳が機能し漢字に変換された時、俺の脳の容量が一杯になってしまった。


葉月が援交……?

あの葉月が……?

ありえない。ありえるはずがない。

頭が精一杯否定を繰り返し、訴える。

馬鹿馬鹿しすぎる。

誰だそんな出鱈目を言ったのは。



「りゅ、龍。それはねぇだろ。援交なんて……あの葉月だぜ?」

「そ、そうよ。葉月はオープンなところもあるけどそれでいて真面目よ? 龍だって知ってるでしょ?」



俺が否定をする前に勇介と愛可が龍にそう投げかける。

そうだ。

葉月はそんなやつじゃない。

10年以上も一緒にいた俺達ならそんなこと言わずもがな分かるじゃないかよ。

ほら、龍。さっさと言えよ。

そうだね、葉月がそんなことするわけないよね。って。

半ば八つ当たりするかのように龍に視線を向けるが、龍は全力で走ってきたその苦しそうな顔を余計に僻ませ、迷うように言葉を選び繋いだ。



「分かって……る…。でも、葉月を見たって生徒がいて……そいつは葉月が見たことない男と……ラブホに入ろうとしていたらしいんだ……」

「嘘だろ……?」



ポツリと言った勇介の言葉は俺にも充分響いた。

葉月が本当にラブホテルに……?

現行犯で見られただと……?

俺と別れたあの後にってのか……?


ズキンっ


頭が痛くなる。

眩暈が起き、目の前が、世界が真っ暗になったかのような錯覚に見舞われた。

いや、まだ決まったわけじゃない。

その生徒に詳しい話を聞かなければ。

座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、自分でも分かるくらいに怒った口調で龍に言った



「龍……それ言ったの誰だ……?」

「へ? か、幹太どうしたの?」

「そんなことを言った野郎は誰だって聞いてんだ‼」

「……っ! に、2組の森君だよ……」

「おい幹太! おもりの所に行っても何も変わんね……」



引き止める勇介の声を無視し、俺は本校舎の1年2組の教室へと走った。







♭♭♭







夏期講習が行われている本校舎は、幸いタイミングがよく10分休憩に入ったところだった。

受けている人は多くないだろうと思っていたのだが、存外、進学校というだけあってか真面目な生徒が多く、各クラス10名ずつほど夏期講習の為に登校しているようだ。

けれどそんなことを気にしている余裕は当然俺にはなくて真っ先に1年2組の教室に向かう。

途中教師に廊下を走るなと止められもしたが気にしていられない。

龍が部室に入ってきた時と同様に勢いよく教室の扉を開けると、中にいた生徒は驚いて教室内の視線は全て俺に集まった。

生徒数が少ないので見渡すまでもなく一瞬で森を見つけた俺は胸倉を掴んで問い詰める。



「お前か? 葉月が援交で補導されたなんつぅでまかせ流したのは!?」

「で、でまかせじゃねぇって! 俺この目で見たんだってば!」

「嘘つくな! そんなわけねぇだろ!」


「やめろよ幹太! 森は悪くないだろうが!」



鬼神迫る俺を追いついてきた勇介と龍が後ろから抑える。

森から引き離された俺は勇介達に抵抗しながらも森から目線を外さなかった。



「わ、悪い森……。幹太、ちょっと今不安定なんだ……。こいつは俺達が抑えさておくからさ、その葉月を見た時の話を聞かせてくれないか?」

「お、おう……」



耳元で龍に『まずは話を聞こうよ』と言われたので一応落ち着く。

少しビクつきながら森はゆっくりと昨日のことを話し始めた。



「昨日は桜井先生の手伝いをしてて、帰りが8時半になったんだ。そしたら桜井先生がお詫びに晩飯を奢ってやるって言ったからご馳走になって、帰りも送ってくれるって。で、俺ん家の途中にラブホがあるんだけどそこの前でうちの制服着た女子がいて……。慌てて桜井先生が駆けつけたらいたのは汐風でさ……。聞いた話だと夜も遅かったってことで話は明日聞くってことで帰されたらしいから今日学校にいると思う……」

「それは……本当だな……?」

「あ、あぁ……」

「葉月と一緒にいた男は?」

「わ、分かんねぇ……。暗くて見えなかったから……」



俺と目を合わせようとしない森だが、様子をみると本当に嘘をついていないっぽい。

となると葉月は本当に……?



「龍、葉月は職員室にはいなかったよな?」

「う、うん。多分補導だと生徒指導室にいると思う」

「ならそこに……」


『見て……汐風さんよ……』

『援交で補導でしょ……?』

『可愛いからって援交はねぇ……?』



けれど、どうやら俺たちから行く手間が省けたようだ。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ