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ヒナゲシの華  作者: 水無月奎
本編
7/90

昨夜は妙齢の女性と寝ました。

人と目が合う。嬉しい。

 十三にして泣き喚くとか超恥ずかしい。

 けれど生まれて初めて『ヒナゲシ』を見てくれたのが嬉しくて、それどころか私の涙で感情を揺らせてくれるなんて天使としか思えなくて、理性がハジけ飛んだ。


 おいおいと泣いた私は気がつけば銀髪美形にお姫様抱っこされてベッドインさせられていた。もちろん銀髪美形のではなく、リーゼシアさんという女性のものだったのだが。

 グスグス涙の止まらないヒナゲシを優しく抱きしめ、一緒に眠りについてくれた。


 泣きすぎて前後不覚に陥るように意識を落とし、目覚めるとお湯で絞った布で顔を丁寧に拭ってくれる。

 羞恥心で死にたくなっているヒナゲシに無体を強いることも一切なく、優しく手を引かれて食卓に連れて行かれた。何故か昨日会ったオッサンと肉椅子が居たが。


 そして、ハイ、今ここね。

 今現在、何故か銀髪美形のお膝に乗って朝ごはんを食べております……よ……。


 いたたまれない、と顔面に貼りつけて懸命に逃れようとしているのだが、昨日目の前で幼子のように泣き叫んだことが念頭にあるのか、まるであやすように朝食を食べさせようとするのだ。オッサンと一緒になって。


「まずはスープで喉を潤してからパンを食べるか? それとも先に飲み物を口にするか。何がいい? 昨日はミルクを好んで飲んでいたな。果実を絞ったものも幾つか用意させたぞ」


 テーブルに並ぶ食器は多い。一斤どころじゃないパンが複数種と、スープの入った皿の下にまた皿が敷いてあるし、サラダにつけるらしきドレッシングも複数あるようだ。

 卵の下にある肉はベーコンやハムより厚みがあって、何かわからない。そこは異世界らしさだろうか。


 物珍しさからじっと食卓を眺めてしまったが、お腹が空いているとでも思われたか。

 オッサンが自分の好みか子供向けか不明のジャムを伸ばしてパンを寄越した。銀髪美形に。


 ──おい……。


 勇者特典なのか、また泣かれてはたまらないと思われてるのか、実際年齢より低く見積もられているのか、ヒナゲシに羞恥プレイを要求する。

 一晩一緒に過ごしてしまったリーゼシアさんはニコニコと見守っている。助けは期待できない。


 基本、ヒナコが傍らにいたことで、注目を浴びない生活を送り続けていたヒナゲシには刺激が強い。

 どうして自分は男性のお膝で食事をしているのか。いちいち食べるものをリザーブされているのか。口元が汚れるとすかさず拭われるのか。さっぱわからん。

 私は幼児ではないのだから。


 困惑顔で銀髪美形を見上げると、前髪を撫でられた。違う!

 ねぇリーゼシアさん、と救いを求める目で見つめると、おかわりですねとミルクを注がれた。違う!

 ちょっとオッサン、と金髪に呼びかけると「何で自分だけ」といじけられた。ついうっかり!


 口を閉じれば喉をくすぐるように撫でてくる。ペットか!


 大事に大事にされることに慣れなくて、子供みたいにお世話されるのが恥ずかしくて、ヒナコではなくヒナゲシを見てくれるのが嬉しくて、やっぱり涙目になるのであった。まる。

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