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ヒナゲシの華  作者: 水無月奎
本編
18/90

赤いのと緑のと水のと黄のと……えーい皆でお茶にしよう!

雷様とは言わせない。

「精霊ですよ」


 現実を見ない振りしてたのかと思ったリーゼシアさんは、あっさり解説してくれた。

 てか、精霊?


「え、精霊って森の中に住んでたりするアレ? 羽根生えてたり空飛んだりする生き物?」

「羽根? いえ、それは聞いたことがありませんけれど……そうですわね、確かに自然に根付いた存在かしら」


 案の定出てきた緑の少年が決まり悪げにしているのに対し、水色の少女は椅子に落ち着き給仕されている。どうやら赤いのと同じで、チョコレートが気に入ったらしい。その赤いのはというと、


『踏むなよ! 爪先使ってグリグリすんな! ってででででイデェーっ!! だからって膝はないだろ!』


 緑の少年の足下にいた。

 少年……理知的で落ち着いた印象だが、実はSっ子なのか? お姉ちゃん、ちょっと君の将来が心配だよ。


「何でこの部屋一室にこんなに精霊集まってんのかな。それともこれって普通のことなの?」


 何となくゲームプレイした先入観で言わせてもらえば、赤い少年は火の属性、水色の少女は水の属性っぽい。台所に集まるならまだしも、三人揃って一箇所に留まるなんてことがあるのだろうか?


「あ、それは……」

『すみません、まだ言えません』


 困るリーゼシアさんの言葉に被せるように、緑のが言う。何か事情があるものと察せられる。


『僕たち本当は人に見られるのも禁じられてるんです。ましてや交流なんて』

「うん、ダメなのはわかったから、止めを刺すのはやめようか」


 赤いのが必死にタップしてるから。バンバン床叩いてるから。


『お前らほんと要領悪すぎ。つか、頭悪い』


 甲高い声が、四つ目。ぎょっと振り返ればちっこいのが増えていた。


『黄の』

『緑もバカ正直にあいつらの言うこと聞いてんなよ。一から十まで聞いてたら、いざって時動けねぇっつの』


 口を動かしながら頭を突っ込んでるのは、私のリュックサック。……おい。


 赤、緑、水色ときて、お次は黄色らしい。

 上半身は未だカバンの中であるが、黄色い下半身がもぞもぞと蠢いているのが見えた。

 道理で発言すべてがくぐもって聴こえた筈である。


『ちょ、黄の!』

『っんだよ、うっせぇな。ははぁん、この黒いのが赤が自慢してたチョコか。ふんふんふん……甘ったるい匂いしてんな。でも悪くねぇ。他には』

「うんうん、君もチョコ食いたいか。わかった、わかったからそこから出ような。人の私物だからね」


 ずるるーっと両足掴んで引っこ抜くと、これまたアニメか漫画かと突っ込みたくなるイエローヘアーが現れた。


『……あ?』


 素晴らしく目付きが悪いお子さんだ。将来ヤクザ屋さんにでもなりたいのか。


「とりあえず、リーゼシアさん」

「はい」


 私は真面目な顔で振り返った。


「お茶にしよう。お菓子もプリーズ。残り少ない向こうのおやつが食い尽くされる前にねっ!!」

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