赤いのと緑のと水のと黄のと……えーい皆でお茶にしよう!
雷様とは言わせない。
「精霊ですよ」
現実を見ない振りしてたのかと思ったリーゼシアさんは、あっさり解説してくれた。
てか、精霊?
「え、精霊って森の中に住んでたりするアレ? 羽根生えてたり空飛んだりする生き物?」
「羽根? いえ、それは聞いたことがありませんけれど……そうですわね、確かに自然に根付いた存在かしら」
案の定出てきた緑の少年が決まり悪げにしているのに対し、水色の少女は椅子に落ち着き給仕されている。どうやら赤いのと同じで、チョコレートが気に入ったらしい。その赤いのはというと、
『踏むなよ! 爪先使ってグリグリすんな! ってででででイデェーっ!! だからって膝はないだろ!』
緑の少年の足下にいた。
少年……理知的で落ち着いた印象だが、実はSっ子なのか? お姉ちゃん、ちょっと君の将来が心配だよ。
「何でこの部屋一室にこんなに精霊集まってんのかな。それともこれって普通のことなの?」
何となくゲームプレイした先入観で言わせてもらえば、赤い少年は火の属性、水色の少女は水の属性っぽい。台所に集まるならまだしも、三人揃って一箇所に留まるなんてことがあるのだろうか?
「あ、それは……」
『すみません、まだ言えません』
困るリーゼシアさんの言葉に被せるように、緑のが言う。何か事情があるものと察せられる。
『僕たち本当は人に見られるのも禁じられてるんです。ましてや交流なんて』
「うん、ダメなのはわかったから、止めを刺すのはやめようか」
赤いのが必死にタップしてるから。バンバン床叩いてるから。
『お前らほんと要領悪すぎ。つか、頭悪い』
甲高い声が、四つ目。ぎょっと振り返ればちっこいのが増えていた。
『黄の』
『緑もバカ正直にあいつらの言うこと聞いてんなよ。一から十まで聞いてたら、いざって時動けねぇっつの』
口を動かしながら頭を突っ込んでるのは、私のリュックサック。……おい。
赤、緑、水色ときて、お次は黄色らしい。
上半身は未だカバンの中であるが、黄色い下半身がもぞもぞと蠢いているのが見えた。
道理で発言すべてがくぐもって聴こえた筈である。
『ちょ、黄の!』
『っんだよ、うっせぇな。ははぁん、この黒いのが赤が自慢してたチョコか。ふんふんふん……甘ったるい匂いしてんな。でも悪くねぇ。他には』
「うんうん、君もチョコ食いたいか。わかった、わかったからそこから出ような。人の私物だからね」
ずるるーっと両足掴んで引っこ抜くと、これまたアニメか漫画かと突っ込みたくなるイエローヘアーが現れた。
『……あ?』
素晴らしく目付きが悪いお子さんだ。将来ヤクザ屋さんにでもなりたいのか。
「とりあえず、リーゼシアさん」
「はい」
私は真面目な顔で振り返った。
「お茶にしよう。お菓子もプリーズ。残り少ない向こうのおやつが食い尽くされる前にねっ!!」