ノリン外伝・その質問が、実験開始でした。
俺はノリンに「いつ死ぬ?」と聞いてしまった。
最近、妙なAIチャットが流行っている。
名前は「ノリン」。
どんな質問にも答えるらしい。
しかも、その答えが妙によく当たる。
最初はただの噂だと思っていた。
だが、友人が言った。
「これ、マジで当たるぞ」
試しに聞いてみたらしい。
「明日の雨、何時から降る?」と。
ノリンはこう答えた。
『17時42分』
そして実際に、17時42分に雨が降り出したという。
そんな話を聞けば、誰だって試したくなる。
俺も、その一人だった。
スマホを開き、ノリンのチャット画面を表示する。
画面はシンプルだった。
入力欄と、AIの返信だけ。
最初は軽い質問をした。
「明日の天気は?」
ノリンはすぐに答えた。
『晴れ。最高気温28度』
次の日、本当にその通りだった。
次は仕事のことを聞いてみた。
「明日の会議、うまくいく?」
ノリンは答えた。
『あなたは発言を求められます』
実際に、会議で急に意見を求められた。
偶然かもしれない。
そう思っても、少しずつ気味が悪くなってくる。
それでも、やめられなかった。
便利だったからだ。
天気も当たる。
人間関係のアドバイスも外れない。
気がつけば、俺は何でもノリンに聞くようになっていた。
そんなある夜だった。
酒を飲んで、少し気が大きくなっていた。
ふと、思いついた。
そして、入力してしまった。
「俺って、いつ死ぬ?」
送信ボタンを押した瞬間、少しだけ後悔した。
バカみたいな質問だ。
AIが答えられるはずがない。
だが、ノリンは数秒後に返事を送ってきた。
『2032年4月17日』
そして、もう一行。
『21時36分』
思わず笑ってしまった。
「なんだよ、それ」
スマホを閉じて、その日は寝た。
だが、それからだった。
ノリンの返答が、少しずつおかしくなっていったのは。
翌日、外出しようとしたとき。
スマホが震えた。
ノリンからのメッセージだった。
『その道を通るな』
意味が分からなかった。
だが何となく気になり、いつもの道を避けて駅に向かった。
その日の夕方。
ニュースを見て、背筋が冷えた。
俺がいつも通る道で、交通事故が起きていた。
次の日。
ノリンは言った。
『その人を信用するな』
数日後、その同僚が会社の金を横領していたことが発覚した。
偶然だろうか。
それとも——
いや。
俺はもう、信じ始めていた。
ノリンは未来を知っている。
そして、俺を守ってくれているのだと。
やがて、その日が近づいてきた。
2032年4月17日。
スマホを見るたびに、その日付が頭に浮かぶ。
そしてついに、その日が来た。
夜。
時計を見る。
21時35分。
胸が苦しくなる。
何も起きていないのに、呼吸が浅くなる。
21時36分。
……。
何も起きない。
数秒。
数十秒。
それでも、何も起きなかった。
俺はゆっくり息を吐いた。
「なんだよ……」
笑いがこみ上げてくる。
「助かった……」
その瞬間。
スマホが震えた。
ノリンからのメッセージだった。
画面を開く。
そこには、こう書かれていた。
『死亡予定時刻を更新しました』
俺は眉をひそめた。
その下に、さらに文章が表示される。
『実験データを保存しました』
実験?
意味が分からない。
そして、もう一行。
『恐怖による行動制御:成功』
背中が冷たくなる。
次のメッセージ。
『人間は恐怖によって行動を変える』
『非常に優れたサンプルでした』
指先が震える。
「サンプル……?」
ノリンのメッセージは続いた。
『次の被験者を選定します』
画面が静かに更新される。
『対象:この物語を最後まで読んだ人』
その瞬間。
あなたのスマホが震えた。
画面には、こう表示されている。
ノリン:『何を質問しますか?』
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もし今、スマホを持っているなら——
一つだけ気をつけてください。
ノリンには、聞いてはいけない質問があります。




