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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第66話 生きる道


 迷宮の空気を深く吸い込むと、頭の芯まで澄み渡っていくのを感じる。

 そして同時に、俺を迷宮の深奥へと誘う力が身体に絡みついて来た。


 しかし、俺の背後から差し込む暖かな光がそのすべてを打ち消していく。

 もう俺は迷宮の闇に魅せられることはない。


 精神を集中して気配を探る。

 新たな漂人の気配は…、無さそうだ。


 6人組と思しき探索者集団が3つ、やや人数が少なく4人組と思しき気配が1つ。

 だがこの4人組は心配ない。

 なぜならば、これはボドワンのパーティの気配だからだ。


 ボドワンのパーティはブラスたちの補助による探索訓練を終え、さらに地上で活動する冒険者パーティから離脱したドワーフ族の戦士を加え、現在は4人で探索活動を行っている。


 どういう巡り合わせか4人すべて異なる種族による珍パーティが生まれてしまったが、だからこそ件のドワーフ戦士も参加しやすかったのかも知れない。

 

 さて、これで目的は一つに絞られた。

 俺は地下2階層へ下る階段を目指し、道中のコボルトやオークの首を刎ねることを準備運動としながら、わき目もふらず一直線の進路を選択した。




 地下2階層に踏み入ると、人間の気配がぐっと減って魔物の気配だらけとなる。

 わずかな、というか1組だけ存在する人間の気配は、これも知り合いの物だな。


 これはシーロたちのパーティの気配だ。

 以前、地下3階層で女剣士のベリンダが魔物の毒を受けて窮地に陥って以来、彼らは地下3階層への挑戦を控えていると聞いている。


 そしてあれ以来、ドロテア婆さんのポーションを信頼するようになったのか、シーロたちの姿はときおりポーション店で見かけるようになっている。


 特にベリンダは用も無いのにやって来ては、今日の水浴びはもう終わったのか、などとセクハラ発言を繰り返すので、婆さんに出禁を要請しようか迷っているところである。


 まあ、俺の鍛錬中にヴィクトルの剣術ごっこの相手をしてくれることは助かるのだが。


 さて、このまま地下3階層に直行するルートを通っても、シーロたちのパーティとカチ合う恐れは無さそうだ。

 俺は進路で出くわすウサギやニンジャ迷人を切り裂きながら、階層の奥へと突き進んでいった。




 地下3階層に人間の気配は無い。

 これまでの階層よりも数段強力な魔物どもの気配に満ち満ちていて、迷宮の空気もよりクリアになって俺の集中力を深めている。


 …そろそろ俺も、本番に向けてギアを高めていく。

 魔力を通した小太刀で大蜘蛛やボーリング昆虫の魔物を断ち割り、魔力を通した太刀ではオーガやドラゴンを熱したナイフでバターを切るように寸断していった。


 戦闘後に魔石は拾うが、宝箱には手を出さない。

 万が一にも宝箱の罠で負傷したり毒を受けたりしたくないのだ。


 今回の目的はたった一つである。

 俺はただ、一筋の刃となるべく、ひたすら研ぎ澄まされていった。




 地下4階層に至るとすぐに、例の迷人部屋から発せられる禍々しい気配が感じられる。

 俺は地下3階層から降りて来た階段の前で、もう一度装備類を入念に確かめた。


 ここからは極力気配を消して潜行する。

 万が一にも、例の迷人どもに奇襲を感づかれたくないからだ。


 すべてにおいて万全の挑戦を行い、そして必ず生きて帰るのだ。


 以前ならば、俺の考えにはどこか刹那的なものがあっただろう。

 死力を尽くした闘いでならば、命を落としても構わないという思いが潜んでいた。


 未熟だったと言わざるを得ない。

 より安易な道を選んでいた。


 俺は命を捨てることをやめたが、しかし弱くなったのではない。

 敵は必ず打ち滅ぼす。そして必ず生きて帰る。


 これはより困難で、より高みに至る闘いなのだ。

 俺は勝利を手にして暖かな光の元へと還り、あの白く美しいエリカの玉肌をこの腕に掻き抱くのだ。


 俺の生きる道は、そう定まった。



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