第25話 迷宮の熊
ドラゴンを仕留めた後に出現した宝箱には、例によって弩が仕込まれていたが、これまでのものよりも弩が大きい。
宝箱の後ろに回り込んで蓋を開くと、猛烈な勢いで太矢が射出された。
どうやら毒を送り込むことではなく、射撃そのものでダメージを与えることを目的とした罠だったらしい。
宝箱の中身は硬貨と宝石だった。
ちなみに今さらだが、迷宮で取得できる宝箱の硬貨は地上で流通しているものと同じで、そのまま使用可能だ。
ドラゴンとの闘いの被害を確認すると、毒はもう大丈夫そうだが衣服をボロボロにされてしまった。
綿襖甲は何重にも重ねた布でできており、表面の布を張り替えれば元通りになるだろう。
しかし、短衣はあちこちが破れ、みすぼらしい状態になってしまった。
でもまあ、特に問題が無いので探索を続行しよう。
次に魔物の気配を感じたのは扉の向こうだ。
というかわざわざ気配を探らなくても、迷宮内の扉を開けると非常に高確率で魔物と出くわすのだが。
中からはお馴染みのウサギの気配5~6匹と、人間サイズの2足歩行の存在が…4人。
迷人とそれ以外の魔物がセットになっているのは初めてだな。
すでにウサギがこちらに気づいている様子なので奇襲は叶わない。
俺は両手に小太刀と短刀を握ると、扉を蹴り開いて室内に突入した。
視界に飛び込んできたのは予想通りのウサギ5匹と…、素っ裸の人間?
どういうタイプの迷人かは分からんが、先手必勝でまず迷人を…。
「グオオオオオオオ!」
俺が駆け寄ろうとした迷人たちが突如咆哮をあげ、その姿が変化する。
巨大化した挙句にバサバサと分厚い毛が生え揃い、4人とも直立したヒグマへと変身したのである。
ちっ、こういうのもあるのか。
ヒグマとなれば、例え魔物でなくても恐るべき強敵である。
こうなると得物を間違えたが、今すぐ持ち換えるのは隙が大きい。
ひとまずヒグマとは距離を取ってウサギを先に片付けよう。
「キィー!」
「キュイ!?」
俺の背後から飛び掛かって来るウサギを小太刀で真っ二つにすると、ウサギの群れに飛び込んでもう一匹仕留める。
ウサギどもはなんとか俺の背後や意識の外から急所を狙わんとしてくるのだが、研ぎ澄まされた俺の感覚がそれを許さない。
混戦となっている俺とウサギの闘いが終わるまで、ヒグマは遠巻きに様子を窺いウロウロするばかりであった。
スピードについて来れていないのかな?
ウサギどもは扉の向こうからこちらを察知してくるし、闘いの最中にも常に意識外の一撃を狙ってくるしでやっかい魔物なのだが、そこはやはり獣で魔物同士の連携ということは上手くないようだ。
たぶん、ウサギどもは戦意が旺盛すぎるんだな。
まあそれは俺もなんだが、俺はそもそも一人なので連携を必要としないのだ。
ウサギを殲滅し終えると、俺は両手の獲物を仕舞い背中の太刀を引き抜く。
そこで待ってましたとばかりにヒグマどもが突っかけて来た。
「しぃっ!」
「グゥ!?」
顔面を狙って太刀を振りつけると、鼻先を切り裂かれたヒグマが怯んで突進をやめその場に立ち上がる。
いいぞ、その姿勢の方が好都合だ。
「りぃあ!」
俺は返しの横薙ぎでヒグマの首を斬り裂く。
丸太の様に太いヒグマの首を丸ごと切り落とすことは難しいと判断していたのだが、意外にも抵抗少なく、すぽん、と間抜けな音を残してヒグマの頭部が宙に舞った。
これもクラスの何かなんだろうが、分析は後だ。
なんとなくの感覚では、魔物の首を狙った場合には特別によく刃が走る。
それだけが分かっていれば、現状十分である。
俺はヒグマどもの鈍重な突撃や爪撃を躱しては、太刀を閃かせてその首を落としていく。
あっというまにヒグマ4匹を仕留めると、後には魔石と宝箱が残るのみとなった。
ふーむ、なるほど。
ヒグマは強敵だと思ったが、一撃で仕留めるほどの攻撃力がこちらにある場合は、鈍重な分むしろ組みし易い相手だな。
そして、事前に気配から敵のサイズを測っても当てにならん事が分かったぞ。
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