第23話 魔法抵抗
「ふっ!」
真っ向から振り下ろした太刀が、蝦蟇の化け物を頭頂から胴の半ばまで斬り裂く。
左右に分かれてデロリと石畳に広がった大蝦蟇は、やがて塵と化して消えゆく。
こいつらは動きが鈍いから、据え物斬りと大して変わらんな。
舌を伸ばして俺を絡めとろうとはしてくるが、その予備動作で大口を開くから見逃しようもない。
7匹いた大蝦蟇を全て叩き切ると、いつの間にかいつもの宝箱が出現していた。
太刀を軽く拭って背中に納めた俺は、慣れた調子で宝箱の罠を調べ始める。
うん、毒針だな。
この独特の焦げたような臭いは、虫が体内で生成するタイプの毒に共通している。
種類までは特定できないが、もし身体に刺さればロクなことにはならないだろう。
いずれにしても正面に立たなければ解除するまでもない。
俺は宝箱の中身の硬貨を巾着に入れると、次なる獲物を探して徘徊を再開した。
むむむ。
通路の先に見える迷人の集団は、聖職者風の服装をしたものが前衛5、後衛7の12人。
これ、突っかけて大丈夫かな?
あいつらが全て魔法で攻撃してきた場合、俺は耐えられるだろうか。
以前に地下2階層でやつらの魔法を浴びた感触からすると、3回や4回では行動不能になる気もしないが…。
10回とかになると、ちとどうなるか分からんな。
シミュレーションしてみよう。
両手で可能な限り棒手裏剣を投擲しながら距離を詰めて、あとは近接攻撃で斬り倒して行くのが既定路線だ。
以前の奴らの魔法攻撃のテンポを思い起こすと、なにやらモゴモゴと口ずさんでから錫杖をこちらに向けてきて、そしてあの体内への衝撃だ。
あのテンポからすると駆け寄る間に2~3回、乱戦に持ち込んだあとにも多くて3回耐えれば良さそうだ。
ふむ、なんとかなりそうな気がするぞ。
そうと決まれば、スピード勝負だ。
俺は両手に3本ずつの棒手裏剣を握り込むと、廊下に身を踊り出して投擲を開始する。
「グ!?」
「ゲ!?」
喉元に棒手裏剣が突き立ち、前衛の迷人が2人崩れ落ちた。
俺は両手の投擲を交互に続けながら、一気に駆け寄って距離を詰める。
「がふっ!」
内臓がひしゃげるような衝撃が俺を襲う。
いかん、想定よりもダメージが大きい。
前衛の迷人が放つ魔法の威力は想像通りだが、後衛の迷人が放つ魔法はもう一段強力なようだ。
俺は棒手裏剣の狙いを後衛の迷人に定め、何とか2人を仕留めるがまだまだ数が多い。
後衛の迷人がまた一人、こちらに錫杖を向けてくる。
不思議とその錫杖に集まるエネルギーが知覚できた。
刹那、俺の魂が答えを出す。
「ぜあああ!」
気合の咆哮を放つと、俺の体内から迸ったエネルギーが迷人の放つエネルギーに激突して相殺する。
ダメージは、ほとんどない。
なんだかよく分からんが、考えるのは後だ。
俺は小太刀と短刀を手に、迷人どもの隊列に飛び込んで血煙を巻き上げる。
スポン、スポンと小気味よく首を刎ね飛ばし、とっさに首元を守った迷人は小太刀で脳天を叩き割る。
ときおりエネルギーの奔流が襲ってくるが、俺が気合を発すると空中で霧散した。
最後の一人の腹に短刀を突き立て、捻じり込んでから引き抜くと迷人の中身が石畳にまき散らされる。
凄惨な情景だが、すぐに全てが塵と化して消えた。
はぁはぁ…、ふぅ…、はぁ…。
乱れた息がおさまらない。
戦闘のダメージや疲労だけでなく、身体の芯から活力が抜け出たような深い虚脱感に襲われる。
俺は石壁に背をあずけその場に座り込んだ。
…これはちょっと整理が必要だぞ。
何となくの感覚としては、迷人の魔法を相殺するために俺の身体から何らかのエネルギーが消費されている。
もしかしなくても、クラスの恩恵に関係する現象だろう。
しかし、なんと言うか。
闘いの中でクラスの力が働いたわけだが、さりとて借り物のおかげという気は、不思議としない。
俺の魂から迸り出た閃きというか。
かつて俺が忍の技を体得する過程で得た数々の閃きと、同一線上にある感覚と言うか。
…いや、あえて区別して考える必要は無いか。
この世界の俺に眠る力を、この世界の俺が引き出す。
だから、これが俺の技だ。
俺の闘いだ。
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