第22話 ファーストサムライ
俺は獣たちとの大乱闘を終えて、魔石を拾い終わるとさっそく次の気配を求めて廊下に出る。
今度は曲がり角の向こうに人間サイズの気配だ。
カチャカチャと金属の触れ合う音からして、探索者か迷人の二択だろう。
俺は曲がり角まで忍び足を急がせて、そっと気配の主を覗き見る。
…おいおい。
胴丸鎧に侍烏帽子、腰に太刀を佩き、手に持つ長物は薙刀、いや反りの少ない長巻だろう。
ニンジャの次はサムライですよ、サムライ。
ここが迷宮でなければ映画撮影を疑うところだが、あいにくバッチリ目が赤光を放っているのが見える。
3人いるが、いずれも迷人ということでよかろう。
ふむ、背板が張られているので南北朝期、あるいは戦国初期の胴丸だな。
兜を被っていないし大袖も無いから、首筋から頭部にかけては無防備だ。
俺に武士道は無いので遠慮なくやらせてもらう。
「ヒッ!?」
「アッ!?」
棒手裏剣の投擲が3人中2人まで延髄を穿った。
さすがに3人目は一息に仕留められず、投擲を躱すと赤眼を怒らせて突っかかって来た。
こうなれば見え見えの投擲では必殺たり得ない。
こちらも両手の得物を構えて堂々の真剣勝負…、なんぞするか!
俺が右手の長脇差を投げつけると、サムライは驚いてとっさに長巻を立て柄で防御した。
素直な反応でありがたいぜ。
「グッ!?…カハッ!」
一気に懐に潜り込んだ俺は、胴丸がカバーしていない脇の下から匕首を突き入れ、刃先を心臓に届かせる。
サムライは一瞬こちらを非難するような眼を向けてきたが、やがてその眼も塵となって消え去った。
長物相手に正々堂々なんて冗談じゃないぜ。
やあやあ我こそは、なんてのは侍同士でやってくれ。
うーん、それにしてもだ。
大した手練れではなかったが、こいつらの武器は素晴らしいぞ。
俺は太刀や小太刀、脇差や短刀といった戦利品を拾い集める。
うん間違いない、こりゃ全て古式刀だ。
武器として見てもこれまでの得物より一回り上物だし、現代日本なら全部それなりの美術的価値がつくだろう。
まあ、俺は実践派だからさっそく使うわけだが。
俺のスタイル的には、右手にちょうど二尺ほどの小太刀と、左手には一尺にやや足らずの短刀をいただいていこう。
太刀は…デカいな。
時代劇に出てくるような都市生活様式の打刀とは違って、二尺八寸ほどもある戦場刀だ。
これは俺のスタイルには合わないのだが、大物の怪物が出てくるかも知れんから背中に担いでいこう。
今のところ人間サイズを超える魔物は出てきていないが、どうせ出てくるに決まっているのだ。
小太刀と短刀はもう一組腰袋にしまって、これで相当に継戦できるぞ。
なんで忍者や侍が出てくるのかは知らんが、俺にとって有用な武器を現地調達できる素敵迷宮である。
俺に都合のいいことは一切突っ込まないと決めている。
ちなみに、長巻も間違いなく有用な武器なんだが、いかんせん探索には邪魔だ。
仲間と隊列を組むなら話は別なんだろうが、俺に誰かと連れ立つ心づもりはない。
誰かに合わせる技でもないし、誰かを守る業でもない。
一人で闘って、一人で死ぬ。それがいいのだ。
…また余計なことを考えてしまった。
俺は状況に酔ってるんだろうか?
まあ、ともかく次に行こう。
次なる敵の気配を求めて曲がり角を窺うと、大岩かと錯覚するような巨大なウシガエルが喉を膨らませている。
どうしてこんな水場でもなんでもない所に蝦蟇の化け物が…、いやニンジャやサムライよりは場違いではないか。
妙に納得した俺は、さっそく大物が現れたので背中の太刀を抜き払う。
身の丈は2m以上あるな。
気を付けないと、大口を開けて丸呑みにされるなんてこともあるかもしれん。
「フフフ」
つい笑みを漏らしてしまった。
忍者が迷宮で蝦蟇退治とはね。
面白いなぁ、ここは。
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