第19話 探索の成果
結論から言うと、衛士のウーゴにすすめられた菓子の賄賂はよく効いた。
俺の姿を見るや憤怒の気配を漂わせ始めたエリカであったが、すかさず俺が繰り出したプレゼント攻勢により、溜息を吐きつつも俺の話に応答してくれるようになったのである。
「…意欲的に探索に取り組んでくださるのは嬉しいですが、もっと休息を取ってください!」
これは耳に痛い指摘だ。
俺はこの世界に来てからというもの、地上で休息を得たのは一晩だけで、それ以外はぶっ続けで迷宮探索を行っているのである。
これではいずれ身体に変調を来たすか、そうならずとも瘦せ衰えて身体能力の低下を招くかも知れない。
今のところは位階上昇により身体能力は向上する一方だが、基礎となる身体の維持向上を軽視してはなるまい。
エリカの指摘はいちいちもっともであるのだが、やれパーティに参加せよだの、やれ訓練に参加せよだの言うのは、丁重に辞退させてもらった。
「もう! 仕方ありませんね。それと、前回預かった戦利品の鑑定結果をご説明しますね」
そういえばそんなのもあったな。
聞いてみると、幽鬼から奪ったマントは純粋に換金性の物品だったようなので換金を依頼して、600ドゥカートを受け取った。
前回得た魔石量の全換金額を超える実入りだ。
さらに、巻物は魔法の発動を実現するアイテムで、使用すると自身の周囲を魔法の明かりで照らすそうである。
なにそれ? 潜伏の邪魔過ぎるじゃん。
ということでこれも要らないので換金してもらい、150ドゥカートを受け取った。
前回地上で食料品等を仕入れた感覚からすると、これは1月程度の生活が可能になる額の収入が得られたのではなかろうか?
こんなに簡単に収入が得られるなら、みんなこぞって迷宮に押しかけそうなものだが。
「普通はパーティメンバーで分割しますし、装備や消耗品の修理補充が必要なんです! それに命がけなんですから、普通は多くとも数日に1度のペースで探索を行うんですよ!」
エリカはさも俺が非常識な認識をしているように指摘してくる。
なるほど、そう聞くと今度は一気に割に合わない職業に聞こえてくるな。
あ、そうだ。
今回の探索で得た分の魔石や戦利品も預けよう。
俺が腰袋から次々と戦利品を取り出してカウンター上に並べると、エリカは目と口で三つのOを作って固まってしまった。
さらに巾着袋から魔石を全量取り出すと、エリカは再起動して今度はプルプル震え始める。
表情が豊かで見ていて飽きないなぁ。
などと俺がのんきな感想を抱いていると、急にうなじがチリチリし始めた。
「…シュウさん、この魔石は、どこで?」
あ、そうか。
魔石の大きさで地下2階層に潜ったことが露見してるな。
「エリカ、実はもう一袋、菓子を持っているんだ」
「お菓子はいただきます。それで、この魔石はどこで?」
笑顔のエリカから殺気すら漏れ始めている。
こりゃイカン。
次回に備えて、ウーゴからもっと情報を収集しよう。
その後、俺は小一時間の叱責を受けた後に解放され、いくつかの課題を言い渡された。
まず漂人局の宿舎から出た後の生活環境について、計画を立てその報告をしなければならない。
そうしなければ、迷宮探索を再開してはならないという制約を受けてしまったのだ。
確かにあと20日と少々の内には漂人局の宿舎を出ないといけないからな。
エリカは漂人の流民化を防止する目的を持つ役所の職員なのだから、これは妥当極まる要求である。
また賃貸物件や下宿先について、いくつかの候補をエリカが調べてくれている。
ここは素直に感謝して、当面は地上での生活基盤の構築を目指そう。
★★★★★やブックマークはもちろんのこと謎スタンプもいただけますとモチベーションになります!




