第18話 撤退
問題がある。
もう戦利品が腰袋に収まりきらないのだ。
戦利品について説明すると、まず魔物を斃すと得られる魔石。
これは巾着袋に入れているのだが溢れる気配は無い。
宝箱から得られる硬貨も同様である。
見た目の容量をはるかに上回る量を入れているのだが、もしかするとこの巾着袋はかなりの上等品なのかも知れない。
まあ、いくら上等品でも袋の口が小さいので、魔石と硬貨以外の戦利品は入れられないのだが。
次に、魔物の中でも迷人を斃すことで得られる武具類、これは随時取得して使用しているので、現在の長脇差と短刀もかれこれ4代目だ。
なので無駄にしているという感覚は無いのだが、使わない剣やら鎖帷子やらは捨て置いているので、小まめに持ち帰ればそれなりに金になるのかも知れない。
まあそんなのは面倒過ぎて気が進まないが。
そして、宝箱から得られる硬貨以外の物品、これが問題である。
これについては価値があるものが多いので、ぜひ持ち帰るようにエリカからも言われている。
そして、これがもう腰袋に入らないのだ。
宝石やら、貴金属と思しき燭台やら、実用性に乏しそうな装飾品のナイフやら、確かに換金性はありそうな品々である。
うーん、確かに食料や水も尽きたので頃合いなのかも知れないな。
迷宮内では時間の経過がよく分からないのだが、また1昼夜以上は潜っているような気もする。
仕方ない、一度地上に帰還するか。
俺は地下2階層の奥地にいるが、おおよその地図は脳内に出来上がったので迷うことは無い。
幾度かの遭遇戦をこなしながら、俺は地下1階層に登る階段前にたどり着いた。
…着いたのだが、距離を取って曲がり角に息を潜める。
階段を下りてくる集団の足音が聞こえるのだ。
なんとなく予想はつくのだが、予断はできないので安全を取ろう。
「どうだ、アニタ。今日は例の変な気配はするか?」
「…ううん。今日はしないよ」
やはりこいつらか、やたらと遭遇するけどこいつら以外の迷宮探索者はいないのだろうか?
それにしても、今回は過去2回とは異なり女斥候の察知から逃れることが出来ているな。
俺の潜伏能力も向上しているのかも知れない。
「よし、調子が戻って来たみたいだな。じゃあ今日は2階層で探索するからよ、気を引き締めて行こうぜ」
よし、今回はすんなりやり過ごすことが出来たぞ。
一団が通り過ぎたことを確認して、俺は潜んでいた曲がり角から姿を現す。
階段を登ると地下1階層を抜けて、俺は真っすぐに地上を目指す。
すれ違う犬頭の魔物の首をサクサクと刎ねて、体感で1時間もせずに地上に通じる階段に到達できた。
石階段を踏みしめて登ると、一歩ごとに地上の光が網膜を灼くように感じられて耐え難い。
…ゆっくり目を慣らしながら登ろう。
「おい、あんた大丈夫か!?」
「問題ない。地上の光に目を慣らしているだけだ」
このやり取りも前にあったな。
どうやら俺のように一人で迷宮探索をしていることは珍しいようだが、帰還するたびに遭難者と間違われるのも面倒である。
「お、シュウか。…お前まさか、3日前に入ったあのまま潜ってたのかよ」
む、3日だと。
1昼夜以上の経過は感じていたが、その倍以上だったか。
たしかに迷宮内では時間経過が分かりにくいが、それにしてもこの感覚のズレは酷いな。
体力的にはまだまだいけそうなのも、時間経過の分かりにくさを助長してる。
「シュウ。エリカの嬢ちゃんは、表通りのビオレータの店の菓子が好物だ。ビオレータに言えば見繕ってくれる」
ん、なにその情報は?
賄賂? それがあるとダメージを受けなくて済むのか、なるほど。
表通りを経由して帰ろう。
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