第13話 マジックバッグ
翌日もエリカの叱責に晒された俺は、水や食料を携帯せずに迷宮に潜る無謀さについては反省し改善を約束した。
また、迷宮内で毒を受けた場合のリカバリー手段を持つことも、全くその通りなので受け入れる。
しかし、訓練を受けてから迷宮に挑むことや、同行するパーティを結成することは丁重にお断りした。
だって面倒だからね。
俺はいま誰かに仕える身でもなく、己の興味の赴くままに行動することが許される立場なのだ。
爺ちゃんの身勝手さに倣って、俺は俺のやりたいことをするのみである。
「お、見ない顔だね。新しい漂人かい?」
「俺はシュウ。エリカの紹介だ。よろしく頼む」
俺はいま、エリカの紹介で迷宮探索者がよく利用する店舗を巡っている。
この店舗では、探索の必需品であるマジックバッグを購入するつもりだ。
ちなみにマジックバッグとは、俺が迷宮内で手に入れた巾着袋のような見た目の容量を超えて物品を収納することが出来るアイテムのことである。
安価なものでは見た目の容量に対して何割かの拡張性を持つが、高価な物ならば何倍もの容量を収納できるらしい。
一人で迷宮に潜る俺にとって、水や食料その他の物品を多く携帯できることは、確かに必須の機能と言ってよいだろう。
「エリカちゃんの紹介ならサービスしたいけど、まだ駆け出しなんだろう? マジックバッグは高くつくから、地道に稼ぎを増やしたらどうだい?」
「どうだ、これで足りるか?」
俺は巾着袋からジャラジャラと銀貨を取り出す。
前日にエリカに提出した戦利品のうち、魔石はすぐに換金してもらえたのでそれを持ってきたのだ。
なんでも、魔石分だけで450ドゥカートという金銭価値になったらしい。
それがどのくらいの価値なのかは分からないが、最優先の探索アイテムなのでここで可能な限り投資してしまおう。
「お、結構あるじゃないか。これならそうだな…、この腰袋で容量1.5倍ってところだな。400ドゥカートにしてやろう」
ふむ、大した増大割合ではないが、元の容量が巾着袋よりはるかに大きな腰袋なので効果は大きいな。
さらにマジックバッグは静穏性が高いので、容量以前にそこも重要なのだ。
購入した腰袋を装備し、その機能を試してみる。
試しに石をいっぱいに詰めてみたが、確かに見た目の容量の1.5倍ほどの収納量があるし、なにより石同士がこすれ合う音が一切しない。
ふむ、こりゃ便利だな。
これで迷宮内に滞在する時間を飛躍的に伸ばすことができるぞ!
なお、迷宮での滞在時間が長過ぎることもエリカに叱責されていたが、このときの俺は完全に忘却していたのである。
その後、水や食料に加えて毒消し薬を購入した俺は、再び迷宮の入り口がある広場に足を向けていた。
ちなみに毒消し薬は生物毒だろうが鉱物毒だろうが効くらしい。
そんなバカなと思うだろうが、というか俺もそう思ったのだが、手に取ってみると本当にそういう効能があることが感覚で分かるのだ。
うーん、まあ俺にとって有利に働くことなら受け入れるスタイルを貫こう。
なお、毒消し薬はなんの毒にでも効くかわりに、等級に応じて効き具合が変わるらしい。
今回購入したのは低級毒消し薬なので、強力な毒に対しては進行を遅らせる効果しかないとか。
また、他の店舗で注文した物品が完成するまでに時間がかかるとのことで、次に地上に来たときが楽しみだ。
迷宮の入り口が近づくと、見覚えのある顔が見えてきた。
「お、あんたシュウだな?」
「そうだ」
声をかけてきた衛士はウーゴという男で、俺が初めて地上に現れたときに出会った人物である。
「あんたのことは聞いてるぞ、ちゃんとエリカの嬢ちゃんに許可を取ったんだろうな?」
「ああ、問題ない」
別に禁止とかそういう話はなかった。
…ような気がする。
ウーゴは疑わし気な目を向けてくるが、俺にやましいところはない。
堂々と迷宮に足を踏み入れると、階段を降るほどに意識のシャープネスが高まっていく。
ああ、この感覚は何物にも代えがたい。
こりゃもうやめられんな。
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