第12話 深刻なダメージ
「シュウさん! 無事だったんですか!?」
地上に出た俺はさっそく漂人局に出向いたのだが、カウンターで頬杖をついていたエリカが俺を見て驚愕している。
俺が無事なことがそんなに意外だろうか?
「どうして! 訓練をするって私いいましたよね!? 一人でなんて無謀な! それも丸二日以上!」
俺はエリカに襟首を掴まれて前後に激しく揺すられている。
あ、これは疲れた脳にダメージが。
てか、俺は丸二日以上も迷宮に入っていたのか。
楽しすぎて時間の経過を忘れるとはこのことか、たしかに無補給で長時間活動することは無謀なので反省しよう。
「もう絶対死んじゃったって! あ、それより怪我は? 痛いところはありますか!?」
反省するので揺するペースを上げるのはやめてくれないか。
俺が本当に怪我してたら、これトドメになるんじゃないか?
エリカがようやく落ち着いた頃には、頭部を揺すられ続けた俺はめまいを覚えて足元がふらつき始めていた。
「やっぱり、無茶をするから身体が悲鳴を上げているんですね…」
「いや、さっきまでは元気だったぞ」
「地上に戻ったら一気に疲れが出る、というのもよく聞きますからね。言いたいことはまだありますが、今日はともかく身体を休めてください」
え、あれだけまくし立てたのにまだ言いたいことがあるの?
明日も脳にダメージを受けるの確定じゃないか。
あ、そうだ。
それはさておき戦利品について相談するか。
「エリカ、魔石以外の戦利品の扱いはどうなっている?」
「魔石以外の戦利品は探索者の自由ですし、漂人局で買い取りも…て、魔石以外の戦利品ってどういうことですか! まさか迷宮の宝箱を開けたんですか!?」
やばい、今日はもうこれ以上のダメージを脳に受けたくない。
とっさに襟元をガードした俺の肩をギリギリと掴んで、エリカは俺の顔を睨みつけて来る。
迷宮探索行全体で受けたダメージより、今ここで受けているダメージの方がはるかに多いんだが…?
「ああ、宝箱を開くとなにかマズいのか?」
「迷宮の宝箱には危険な罠が! 一人で毒を受けて動けなくなったら! ああ、もう! 全部明日説明しますから、明日は勝手にいなくならないでくださいね!」
憤懣やるかたない様子のエリカだが、俺がカウンター上に置いたマントと巻物に目を移す。
怒ってはいるが、戦利品の査定はやってくれるようだ。
俺はそこに巾着袋からザラザラと魔石を流し出し、ちょっとした小山を築いた。
ついでだから今回の探索行の成果を全部確認してもらおう。
ん、エリカの動きが鈍いな。
あんまり興奮して暴れるもんだから、電池が切れたのだろうか。
「…シュウさん。これはどういうことですか?」
「えーと、巻物は人型の魔物を斃したら出てきた宝箱から…」
俺の返答を遮ってエリカがエンジンを再起動させる。
「迷人と一人で戦ったんですか!? いえ、それより、この魔石の量は!? 低階層でこんな高価なマントが!?」
いったん落ち着いたと思ったエリカだが、また顔を紅潮させてプルプルしてきたぞ。
こりゃ、さらにダメージが増えそうな気配がしてきた。
うーん。
魔石を納入するのが探索者の仕事だと聞いていたが、何か作法を間違えてしまったのかな?
まあ仕方ないか。
この世界のルールには従わざるを得ないし、叱責を受けるくらいは我慢しよう。
「どうやら、シュウさんにはまだお休みいただくわけには…」
そこで俺の腹が、ぐぅーと大きな音をたてて鳴いた。
そういえば丸二昼夜以上、飲まず食わずだったんだっけ。
突然の腹の虫の抗議に勢いを止められたエリカは、目を真ん丸にして驚いたあと、堪えきれずにプッと噴き出した。
「クスクス、もう…! お話はあとにしてご飯にしますか」
少し怒りの残滓を漏らしたあとに、エリカは柔らかく微笑んだ。
いいぞ、なんか知らんが切り抜けたらしい。
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