ねこと風鈴
今年も年賀状が届いた。
4枚だった。メガネ屋さん、車屋さん、質屋さん、知らない県会議員──
すぐにゴミ袋に入れると、ねこのキーコがほじくり出す。
キッチンタイマーにはオルゴールの音色を設定していた。それが鳴りだすとキーコの動きも止まる。
私がカップうどんを食べはじめると、足の間に入ってきて、『何食べてるニャ?』と聞いてくる。
私は彼女に答えた。
「キーコの好きなものじゃないよー」
彼女もそれに答えた。
「また牛焼肉のカルビが食べたいニャー」
「おいで」
それがねこと戯れる合い言葉。
うどんをまだ食べ終えてない私の胸で、白いねこがゴロゴロと喉を鳴らしだす。
自転車で近所のリサイクルショップへ行った帰り、雨が降り出した。
思わずスーパーマーケットで雨宿り。
買うものはないから、お歳暮のギフトセットを眺めて歩く。
ホットケーキミックスが切れてたのを思い出し、それだけ買った。
リサイクルショップで買ってきたのはマッサージクッションと、それから風鈴だった。
12月に不要なそれは、捨てられるもののようにジャンク品コーナーにあったけど、新品のように綺麗だった。
赤い金魚の描かれたプラスチックの風鈴は、ねこの遊び相手になってくれると思えたのだった。
「これなに?」
私が床に置いた丸い風鈴を、キーコが珍しそうに眺めまわす。
「風鈴ってものだよ。10円で買ってきた」
「何するものニャ?」
「好きに使えばいいものだよ。綺麗だし」
「くるにゃっ!」
キーコがお手々で転がすと、風鈴がガラガラと鈍い音を立てた。
そうか──。吊るさないと綺麗な音で鳴ってくれないんだ。
長い糸につけて、蛍光灯の紐に結びつけて、上から垂らすとキーコが走ってきた。
無言で飛ぶ。風鈴に向かってフライング・アタック!
ちりりりりーん♪
いい音。
暖房のきいた部屋に心地良い。
それからキーコのサバイバル・ショーがはじまった。
高い机の上に飛び乗ったかと思うと、そこでお尻をふりふり、標的をロック・オン──
「ニャニャーーッ!」
どたどた床に激しい音を立ててねこが走る。
熱い遊びに外の木枯らしも吹っ飛んでいくよう。
激しいアタックに部屋の電気が消えた。
紐をほどいて床に転がすと、ねこと風鈴はどちらも大人しくなって、優雅な舞踏会がはじまった。
風鈴を抱いて、ねこが右に左に、身体を揺する。
風鈴にエスコートされてるみたい。
やがてねこは風鈴を抱いたまま眠り──
私は思う。
ねこが飽きたら来年、ベランダに吊るそう──




