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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第61話 挑発(ティア視点)

 視線を向ければ、若いオスが三人こちらに近づいてきた。先頭とその後ろがにやにやと気持ち悪い笑みを浮かべている。

 どこかで見た顔ぶれと匂いだ。どこだったか。

「これはこれは中級者(シルバー)に弟子入りした変わり者たちじゃないか」

 先頭のオスが声を張り上げて大仰に言った。七三分けの茶色の髪をぺったりと()でつけている。金色の悪趣味な胸当てと、そこに出ている金色のタグを見て、誰だったのかを思い出した。

「そろそろ第二十階層踏破者(ゴールド)にはなったのか?」

「師匠が第十階層踏破者(シルバー)なのにその弟子が第二十階層踏破者(ゴールド)になれるわけないだろ」

 七三分けの言葉に笑ったのは、大きな(おの)を背負った金色の短髪のオスだ。体格がよく、全身(よろい)をつけていて、この鎧の色も金色だった。

 もう一人は、黒いローブのフードを被り、さらに片目を黒い前髪で隠しているオスで、ゲラゲラと笑っている二人からは一歩下がっていた。不安そうに上目遣いをきょろきょろと動かしている。 

「なんなのよ、あんたたち」

 あからさまな嘲笑に、レナが苛立(いらだ)ちを隠さずに言った。

「てか誰?」

「わたくしたちが最初にお願いしようとしていた案内人の方の弟子の方たちですわ」

 言葉こそ丁寧だが、シェスの声にも苛立ちが混ざっている。

「ああ、やたらクロトに突っかかってくるあのアレンとかいう――」

「アランさんだ!」

「ああそう。……で、何の用? 確かにあたしたちはまだ第二十階層踏破者(ゴールド)じゃないけど、だから何?」

 レナにしては冷静な言い方だった。

 私たちが第十階層のボスを倒すのが精一杯なのは事実だ。師匠が第十階層踏破者(シルバー)だと馬鹿にされているのはムカつくけれど、第三十階層踏破者(プラチナ)であることは隠しているのだから仕方がない。

「噂のパーティの実力はどんなものかなと思ってね」

「どんなもなにも、だからまだ第十階層踏破者(シルバー)だって言ってるでしょ? 今は第十階層までの地図を作ってるところよ」

 その言葉を聞くと、オス二人は吹き出した。

「地図!? 地図なんか作ってんのか、お前等!」

「まだ第十階層踏破者(シルバー)でしかも地図作りwww」

 二人が笑っている理由がさっぱりわからない。

「何が可笑(おか)しいのよ」

「だって地図なんて描かせればいいだけだろう? そもそも案内人を雇えば地図なんて要らないんだ。それを自分たちで描くとかwww」

「よっぽど金がねぇんだな。まあ師匠が第十階層踏破者(シルバー)じゃな。凄腕第二十階層踏破者(ゴールド)のアランさんと違って」

「クロトは第十階層踏破者(シルバー)じゃ――」

 レナの叫びをシェスの手が塞いだ。

「ダメです、レナさん」

「……そうね」

 師匠の秘密を話してはいけない、という意味でレナは黙ったのだが、相手はそうは受け取らなかったらしい。

「意気地がないなぁ。さすがあの臆病者の弟子なだけはある」

「はぁ!? クロトが臆病者!? なによそれ」

「お師匠様が臆病者なわけありませんわ!」

「……絶対嘘」

「知らないのか?」

 にんまりと七三分けが笑う。

「難易度の高い依頼は受けない、どんなに浅い階層でも大量に荷物を持って行く、依頼者が先を急ごうとすると渋るって話だよ」

「依頼は()り好みしてるだけだし、大量の荷物は慎重なのもあるけど冒険者に売りつけるためだし、危ない攻略をしようとしてたら止めるのは案内人として正しいわ!」

 全然フォローになっていないがその通りだ。師匠が臆病者なわけじゃない。

「つっても、まだ第十階層踏破者(シルバー)なんだから結局は臆病者だろ。ビビって絶対に第二十階層のボス部屋には入らねぇっつー話だぞ」

「だからクロトは――」

「レナさん」

 シェスが止めるが、その止めている本人の目が怖い。

 私もかなり苛立っていた。

 師匠が第二十階層のボス部屋に入らないのは、倒したら第二十一階層まで降りないのは不自然すぎるし、降りてしまったらタグの色が金色になっていないのを不審に思われるからだ。先日ユルドの最強パーティの案内をした時は、第二十五階層のボスであるドラゴンを倒したと言っていたから、第二十階層のボス部屋に入っていないわけがない。

 師匠はとても強いのに、それを言えないのが悔しい。

「わたくしたちが第十階層踏破者(シルバー)なのは実力がまだないからで、自分たちのフロアの地図を作っているのは案内人の方に頼らずとも自分たちで攻略できるようになりたいからですし、自分たちの手で描いているのは、修行も兼ねているからですわ。お師匠様は関係ありません。それに、わたくしたちにお金がないのは事実ですが、お師匠様はその辺の冒険者の方々よりもよほど裕福です。なにせこんなアイテムまで――」

「ストーップ!!」

 レナがシェスを止めた。なぜならシェスの右手には、ポーチから取り出した帰還の卵が握られていたからだ。

「あら」

 我に返ったシェスがそれをそっとポーチに戻した。

 確かに、こんな貴重なアイテムを自分のも含めて四つも持っていて、それを簡単に私たちに渡すくらいだ。師匠のことだから絶対に予備も持っているし、家の中にはさらに予備があると思われる。派手な生活こそしていないけれど、所持しているアイテムだけでも売れば大金になるし、師匠なら下層でさらに稼ぐことだってできる。


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