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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第49話 見合わない称号

 次の日の朝。

 レナが立てそうになったフラグをへし折って、昨夜何事もなく帰宅した俺は、一晩寝てすっきりとした顔の三人を連れて、ダンジョンの入り口にいた。

「準備はいいな」

「いいですわ」

「……いい」

「いいに決まってるでしょ。家を出る前にクロトだって確認したじゃない」

 それはそうだけど、念押しは大事だろ。

「もたもたしてないで早く開けなさいよ」

 待ちきれない、というように、レナが言う。

 遊びじゃないんだぞ、と釘を刺そうかと思ったが、たぶんこいつらはダンジョンに一歩足を踏み入れれば、ちゃんと気を引き締めるだろう。

 入り口を開けようと、大岩の扉に両手をつける。

 その時、後ろからかかる声があった。

「ああ、クロトじゃねぇか」

 上から目線なダミ声――アランだった。

 俺はため息をついてから、ゆっくりと振り返った。

 面倒なヤツに捕まっちまった。

「どこまで潜るんだ?」

「答える義務は――」

「第十階層よ!」

 俺の声をさえぎってレナが答えた。

「はっ! まだ第十階層か。こいつらはもう第二十階層を踏破したぜ。これからまた第二十階層まで行く」

 アランが後ろに連れていた三人の弟子を前へと押し出すと、三人は首元から金色のタグを引き出してレナたちに見せびらかし、アランそっくりに鼻で笑った。

 一番後ろにいる俺にはレナたち三人の顔は見えないが、三人とも拳を握り締めていて、ティアの耳と尻尾の毛が逆立っていた。尻尾の先が特にぶわっと広がっている。

「出来の悪い弟子を持つと大変だな、クロト」

「まあな」

 先日と同じ事を言われて、俺は肩をすくめた。

「ちょっと!」

 レナが俺を振り向いて目をつり上げた。

「なんだよ」

「あたしたちは出来がっ……悪く、なんて……」

 最初は強かった語気が、だんだん弱くなっていく。最後はもごもごと言葉にならなかった。

「お前らも出来の悪い師匠につくのは大変だろう。どうだ、特別にオレの弟子にしてやってもいいぞ」

「わたくしのお師匠様はお師匠様だけですわ」

「あたしの師匠はクロトしかいないんだから!」

「……クロトだけ」 

 アランの誘いに、三人はそれぞれの言葉で断った。

「出来の悪いクロトには出来の悪い弟子がお似合いだな」

第二十階層踏破者ゴールドなんてすぐになってやるわよ! それにクロトはあんたなんかよりずっと――むぐっ」

「そこまで」

 俺は後ろからレナの口を手で塞いだ。

 何ポロッと言いそうになってるんだよ。

「弱いもんは弱いなりにやるさ。ほら、三人とも、行くぞ」

「ですが、お師匠様っ」

「……侮辱ぶじょく

 シェスとティアは納得していないようだったが、俺はレナの口を塞いだまま後ろ向きに引きずって、ダンジョンの入り口に足を踏み入れた。

 残りの二人も追いかけてくる。

 階段を下り、第一階層の最初の部屋に入った所で、レナの口から手を放した。

「なんで止めるのよ! どうして言い返さないの! クロトの方がずっとずぅっと強いでしょ!」

「そうです。実力を見せて黙らせてやればいいのですわ」

「……ムカついた」

「言わせておけばいいんだよ。相手するの方が面倒だ」

「クロトは第三十階層踏破者プラチナなのに!」

 悔しい、とレナが体の前で拳を縦に振った。

「それになんなの、あいつら! あたしたちの事を見下してた!」

「……弱い」

「そうですわよね。わたくしにもあまり実力のある方には見えませんでしたわ」

第二十階層ゴールドなんて絶対おかしいわよ!」

 シェスとレナは感情的にそう思っているだけだろうが、ティアはちゃんと感覚で嗅ぎ取っているはずだ。

 俺も、アランの弟子たちは第二十階層踏破者ゴールドの実力はないと思っている。

「あいつらの後ろに他の冒険者がいただろ。弟子どもは同行してるだけだ」

「そんなのズルじゃない!」

「……卑怯ひきょう

「よくあることだ」

「そうかもしれませんが……」

 三人は納得がいかない、という顔をしていた。

 本当によくある事なんだが、こいつらは踏破の称号が必要だった時も、案内人である俺を頼らずにほぼ自力の踏破をしているから、余計にそう思うのだろう。

「他人は他人だ。気にするな。それとも、お前らは称号が欲しいだけなのか?」

「そんな訳ないじゃない!」

「……違う」

「冒険者として生きていくための実力をつけたいです」

「なら自分たちの事だけ考えていればいい。外野には言わせておけ。――ほら、お前らが騒ぐからスライムが来たぞ」

 俺が言うのと同時に、三人の空気がピリついた。

 たかがスライムだが、ちゃんと気持ちの切り替えができている。

 レナが素早く剣を抜き、スライムに向かって駆けた。

 縦に一閃いっせん

 剣は正確に核を破壊し、スライムは黒い霧となって消えた。

「んん?」

 レナが剣を見て首を傾げる。

 出発前に抜いて確認した時には気づかなかったようだが、さすがにモンスターを斬れば気づくか。

「ねぇ、クロト、あたしの剣に何かした?」

いでおいた」

「えっ」

「使いにくいか?」

「ううん、それは大丈夫だけど……」

 何か言いたそうにレナが俺を見つめる。

「なんだよ」

「な、なんでもないわ! ――シェス、ティア、行くわよ!」

 足早に通路へと出て行くレナを追って、シェスとティアが走っていった。

 俺もその後に続いた。

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