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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第48話 道具の整備

 結局、三人が地図を完成させたのは、三日後の朝だった。

「できたーっ!!」

 仕事部屋にこもって道具の整備をしていたら、居間から雄叫びが聞こえてきて、ドアが勢いよく開いた。

「できたわよっ!」

 先頭のレナが、椅子に座っている俺に紙の束を突き出した。

 レナはもちろんのこと、その後ろで、ティアとシェスも両手の拳を握って得意げな顔をしていた。

 俺は地図を受け取って目を通していく。

 交差しまくっていた通路は綺麗に整理され、部屋の位置関係が一目でわかる地図ができ上がっていた。

「十五枚そろってるな」

「……合格?」

 ティアが首を傾げ、レナとシェスは不安そうに俺を見ていた。

「ああ、合格だ」

「やった!」

 三人が手を叩き合って喜ぶ。

「じゃあ、ダンジョンに行くわよっ!」

「明日な」

「どうしてですか!?」

「あのなぁ……」

 俺は三人を見上げた。

「目の下にクマ作ってるようなヤツをダンジョンに連れて行くわけないだろ。ダンジョン攻略の課題出した時に、夜は寝ろって言ったよな? 外でも同じだ。夜は寝ろ」

 ボス戦が長引いてとかならまだしも、地図作りに夢中になって徹夜するなんて言語道断だ。

 三人が顔を見合わせる。

「シェス、酷い顔してるわよ」

「……レナも」

「ティアさんは耳と尻尾がボサボサですわ」

 互いにけなし始めた。

「うるさい。仕事の邪魔だ。出てけ」

 しっしっと手で追い払うと、三人は何かを言いたそうにしていたが、何も言わずに出て行った。自分たちが悪い事はわかっているのだ。

「仮眠は程ほどにしろよ。夜眠れなかったら意味ないぞ」

「わかってるわよ!」

 扉が閉まる前に言うと、レナが振り返って叫んだ。

 まあ、その位はわかってるか。

 俺は道具の整備に戻った。

 今やっているのはランプの清掃だ。分解して綺麗に拭いていく。

 ダンジョンの中は基本的に明るいが、休憩部屋は若干暗いし、下層に行けば真っ暗なフロアもある。

 俺は案内中に魔法は使わない。魔力がダダ漏れになって第三十階層踏破者プラチナだとバレるからだ。

 だから自分で水も持って行くし、ランプも持って行く。

 案内する冒険者が明かりの魔法を使うから困ることはまずないが、魔法使いが負傷したら終わる。

 これまで潜る時には万全の準備を整え、案内している冒険者が死にそうになれば身バレしない程度に助け、なんとかやってきたってのに、そんな事でバレるわけにはいかないのだ。

 それに、最悪、俺の魔力すら尽きる可能性もある。ダンジョンでは何が起こるかわからないのだから。

 ランプがかなくて攻撃が見えずに死ぬなんて、冗談じゃない。

 一通り整備を終えると、壁際に置いてあるあいつらの装備に目が留まった。

 レナの剣を手に取り、さやから抜く。

 やはり良い剣だ。

 他のダンジョンの戦利品だそうだが、浅い階層で見つかった物ではないことはわかる。

 手入れはしているようだが、ずっとダンジョン潜りっぱなしだったこともあって、少し刃が摩耗していた。

 両手剣だから、刃の切れ味で斬るというより、剣の重さも合わせてぶった斬るような使い方をする訳だが、切れ味が良くて悪いことはない。

 レナなら、斬れ過ぎても重さに振り回されることもないだろう。

 そもそも俺の研ぎの腕じゃ、そこまで大層な切れ味にはできない。

 奥にある流し台の所に剣と椅子を持っていって、流し台に板を渡す。

 その上に研石とぎいしをセット。

 もちろんダンジョンで手に入れた特別な石だ。レナの剣もそうだが、俺の使うナイフや剣じゃ、地上の石じゃ石の方が削れて終わる。

 石に水を掛けて剣の刃を乗せ、剣を研ぎ始めた。

 本職の武器屋に任せれば良く切れるようにはなるが、俺は自分の好みの切れ味にしたい。あまり刃を鋭くしすぎると、薄くなって欠ける危険性も増すというのもある。

 途中で目の細かい石に変えながら、以前案内した時のレナの戦い方を思い出し、このくらいだろう、と思う所まで研いだ。

 さて、レナは気づくかな。

 午後、装備を整えて部屋を出ると、寝起きのレナが三人の部屋から出てきた。

「ティアとシェスはまだ寝ているのか。そろそろ起きないとマジで夜寝れなくなるぞ」

「ちゃんと起こすわよ」

 レナの前を通って玄関に向かう。

「どこ行くのよ」

「見ればわかるだろ。ダンジョンだ」

「あたしたちを置いてく気?」

「夜には戻って来る」

「仕事?」

「いや、一人だ」

「荷物は?」

 俺が剣しか持っていなかった。

「持って行かない。第一階層しか行かないからな」

「第一階層だけ? 何しに行くの?」

 質問が多い。

「訓練だよ、訓練。外でやるわけにいかないだろ」

「スライム相手に?」

「素振りだ」

「あたしも行きたい」

「駄目だ」

「ケチ」

 口をとがらせながらも、そう言われるのがわかっていたのか、レナはそれ以上文句を言ってこなかった。

「ちゃんと帰って来なかったら承知しないから」

「夜までには帰るって言っただろ。フラグが立つからやめろ」

 第一階層から帰ってこないとかヤバいだろ。

「行ってくる」

「いってらっしゃい」

 手を振るレナを背に、俺はダンジョンに向かった。


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