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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第47話 ご褒美

「早く地図の描き方を教えなさいよ!」

 レナが俺の手から地図をぶんどってテーブルの上に置くと、ばんばんと叩いた。

 ティアも「早く早く」とばかりに耳をピクピクさせながら尻尾を振っている。

 シェスはと言うと、胸の前で手を組み合わせて期待に満ちた目を向けていた。

 三人ともやる気一杯だ。

 俺とダンジョンに潜るのがそんなに嬉しいのか……?

「道具があるから取ってくる」

「あたしも行くっ!」

「……行く」

「行きますわ!」

「いや、すぐそこの部屋だから」

「行くわ!」

 何が楽しいのか、三人は仕事道具が入っている部屋についてきた。

 奥の壁際の棚に置いてある木箱を取る。

「……板」

「どうやって使うのですか?」

「説明して!」

「あっちで説明する。ほら邪魔だ。どけ」

 抱えた木箱をのぞき込んでくる三人を追い払い、リビングに戻った俺は、木箱を傾けてテーブルの上に中身を出した。

 入っていたのは、様々な大きさの四角い木の板とひもの束だ。板には端に複数の穴が開いている。

「いいか。この板がダンジョンの部屋で、この紐が通路だ。板と板を地図通りに紐で結んでいく。通路が交差している所は紐と紐を結ぶ。最後に紐同士が交差しないように板の位置を整えれば、部屋の位置関係がはっきりする。部屋の大きさや通路の長さは適当になるが、そこは追々修正していけばいい」

 俺は板と紐を結び合わせて地図の上に置いた。

「……へぇ」

「面白いわね」

「なるほど?」

 レナとティアは理解したようだが、シェスは首をひねっていた。とことん地図に弱いヤツだな。

「とにかく、板をこの地図の部屋の上に置いていって、紐で結べばいいのよ」

「……うん」

「わかりました」

 三人はさっそく作業に取りかかり始めた。

「じゃあ、俺は寝るわ」

 首の後ろに手をあてて、ごきごきと鳴らす。

「ちょっと! これ終わったらダンジョンに行くのよね!?」

「ああ」

 肯定すると、レナは満足そうに笑った。

「さっさと終わらせるわよ!」

「はい!」

「……おー」

 早く終わるといいな。

 ふっと笑ってから、俺は自分の部屋に入り、ベッドに横になった。

 はぁ。ベッドで寝られるのは久しぶりだ。

 生活リズムは狂ってしまうが、体の回復も重要だからな。

 疲れていた俺は、一瞬で眠りに落ちた。

 俺が仮眠から目を覚ますと、窓の日差しは弱く、だいぶ日が傾いていた。

 ベッドのふちに座り、ふぁあ、と大きくあくびをして、首を鳴らす。

 腹減ったな。何か食うか。

 のっそりと部屋から出ると、居間のテーブルを三人が真剣な顔で囲んでいた。俺が出てきた事に気づきもしない。ティアが気づかない程だから、相当集中しているな。

 俺は台所の棚から干し肉を出し、立ったままかじった。

 うちには保存食しか置いていない。どこの冒険者と案内人の家もそんなもんだろう。

 長期間家を留守にするのが当たり前だから、食品など置いておけないのだ。

 だから必然的に食事は外食になる。休みが続く時は朝食くらいは用意することもあるが。

 コップで水を飲みながら三人の様子を見ると、ああでもない、こうでもない、と板の位置を変えながら紐を結び直していた。

 地図はまだ二枚しか終わっていないようだ。

 慣れれば大した事のない作業だが、初めてのこいつらには大変だろう。

 ふと、ティアがこっちを向いた。

「……あ」

 その声でレナとシェスも気づく。

「ねえ――」

「手伝わないぞ」

 レナの口を封じると、「くっ」と悔しそうな顔をした。

「ケチ」

「嫌ならやらなくても――」

「やるわ! やるわよ! 何でいっつもそうやって……」

 ぶつぶつと文句を言いながら、レナはテーブルの上に視線を戻した。

 ティアも耳をぺたりと垂れさせながら、作業に戻る。

 すると、シェスが立ち上がって寄ってきた。

「ごしゅ――お師匠様、何かコツなど教えて下さいませんか」

「コツか」

 レナとティアが顔を上げる。

 聞きに来たのなら教えるしかあるまい。

「一番紐の多い板を中央において、それを基準に周りの板を配置していくといい」

「……なるほど」

「早く言いなさいよ!」

 聞こうとしなかったお前らが悪いんだろ。

「ありがとうございました」

 シェスが頭を下げてテーブルに戻って行った。

 代わりにティアがやってくる。

 俺のそでをつかんで見上げてきた。

「……交差しない?」

「ああ、通路か?」

 こくり、とティアがうなずいた。

「下層に行くと上下で立体的に交差する場合もあるが、第五階層くらいじゃ出てこない」

「……わかった」

「よくそこに気がついたな」

 俺はティアの頭をなでた。

 ついでに耳の根元をかいてやる。猫はここをかかれると気持ちがいいと聞いた。

 ライオンでもそうなのかはわからなかったが、目を細めながらのどをゴロゴロと鳴らしたから、間違っていないのだろう。

 するりと脚に尻尾が巻き付いてきた。

「ティアさんだけずるいですわ!」

 シェスとレナが勢いよく立ち上がる。

「わたくしの頭もなでて下さいませ」

 どーん、といつもの勢いでシェスが体当たりしてきた。

 体を密着させながら、上目遣いで見てくる。

「なんでだよ」

「ええと、ダンジョンを攻略して課題をやり遂げました! そのご褒美に」

 どこがどう褒美になるかわからなかったが、シェスが顔を俺の胸にうずめて頭頂を見せてきたので、子どもをあやすようによしよしと撫でておいた。

 にまにまと口元を緩ませてシェスが離れていく。ゾンビ肉を手に入れた時と同じような顔になっているのは気のせいか?

 シェスと交代するようにレナがずいっと近づいてきた。

「あの……」

 下を向きながら、ちらちらと俺を見てくる。

「なんだよ。お前もなでて欲しいのか?」

「ちが……っ」

 顔を上げたレナの頭にぽんぽんと手を置く。

「よくやったな」

「べ、別に……っ、第五階層くらい、攻略できて当然よっ」

 レナはぷいっと横を向いた。

「ほ、ほら、二人とも、続きやるわよっ!」

「はい!」

「……うん」

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