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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第46話 合否判定

 しばらくして出てきた三人と入れ替わるようにして風呂に入り、タオルを首に掛けて出ると、居間のソファに三人が並んで座っていた。

 三人ともラフな格好をしている。

 こうしているとその辺の町娘と変わらなくて、ヒヨッコ感が余計に強くなるな。

 コップに水を入れて水分補給をする。

 シェスとティアがこっちをじっと見ていて、レナはちらちらと視線を向けてきながら、何か言い足そうにもじもじとしていた。

「お前ら、戻って来てたんだな。終わったのか?」

 さっきの不幸な事故はなかったことにするべきだと判断し、何気なさを装って話を振る。

「あ、当たり前じゃない! じゃなきゃここにはいないわよ! 今日戻ってきたの!」

「そうか」

 ごそごそとレナが足元に置いてあった袋から紙の束を取り出す。

「ほらっ! 第五階層までの地図よ! 三人分!」

 俺が出した課題は、第五階層までの三人での自力踏破と地図の作成だ。

「誰か一人の分で良かったんだが」

「なっ!?」

 十五枚の地図を確認しながら言うと、三人が目を見開いて固まった。

「三人で攻略するならフロア一つずつで十分だろ。三人分も必要ない」

「……確かに」

「そう、ですわね」

「そんな……! あんなに大変だったのに……!」

「だろうな」

 最初に見せられた地図同様、四角につながった線がでたらめに交差しまくっている。

 色を変えて混同しないようになってはいるが、読み解くのに苦労しそうだ。

 これを三人分、十五枚。大変だっただろう。

 どうりで遅かったわけだ。

 課題を出してから、俺は長期の依頼は受けず、一応三人の帰りを待った。不本意にせよ、弟子を持ってしまったからには仕方がない。

 しかし、三人は一向に帰ってこなかった。

 ギルドや他の案内人の目撃情報によれば、地上との行き来はしているらしく、生きてはいるようだった。

 俺の所に転がり込むのはやめて他に拠点を作ったのかと思えば、そんな話も聞かない。

 ただダンジョンに潜り、地上に戻ってくればドロップ品を売ってアイテムを買い、師弟制度の支給品をもらっては真っ直ぐダンジョンに潜っていた。

 相当手こずっているのだと思い、断り続けていたシグルドからの調査依頼を受けて戻ってきたら、こいつらもちょうど帰ってきていたわけだ。

 で、互いにまず風呂に入ろうとした結果、事故に繋がった、と。

「クロトもしばらく居なかったみたいじゃない。どこ行ってたのよ」

「どこって、ダンジョンの案内に決まってるだろ」

「そうじゃなくて」

「……階層」

 正直に言っていいものか。

 まあいいか。第三十階層踏破者プラチナってバレてるしな。

「第二十五階層まで」

「ドラゴンを倒したのですか!?」

 シェスが勢いよく立ち上がった。 

「あ、ああ、ボスの確認に行ったからな」

「……すごい」

黒の閃光ブラック・ライトニング様ですものね」

 ぼすん、とシェスがソファに座り直した。

 その名前はやめろ。

「誰と行ったの?」

「シグルドとアメリアとホラス」

「ギルドの最強パーティじゃない!!」

 今度はレナが立ち上がった。

「なんでクロトがそんなパーティと一緒に行くのよ!」

「……依頼」

「違うの、ティア。そういう意味じゃなくて、なんでこんなヤツがそんな豪華なメンバーと一緒にダンジョンに行けるのかっていう意味で――」

「……くれないの魔法使い」

 その名前もやめろ。

「そうだったわ……」

 レナが両手を覆って、へなへなと力なくソファに腰を下ろした。

「こんなヤツが嫌ならいつでも師弟を解消してやるぞ」

「そ、そんな事言ってないでしょ!」

「わたくしは絶対にご主人様とは離れませんわ!」

「……私も」

 捨て猫のみたいに上目遣いをして耳をぺたっとさせているティアはともかく――。

「シェス、その呼び方はやめろって言っただろ」

 何だよご主人様って。俺が変な趣味を持ってるみたいに見えるだろ。

「あっ」

 シェスが口を指先でそっと押さえた。

「申し訳ありません、お師匠様」

「頼むぞ。領主に聞かれたら抹殺まっさつされそうだ」

「お父様はそのようなことなさいませんわ。お師匠さまはわたくしの大切な方ですもの」

 そうやってほほを染めるのもやめてくれ。マジで殺される。

「……無理」

「そうよ。クロトを殺せる人なんてユルドにいるわけないじゃない」

「別の街にはいるだろ。ここより深いダンジョンはいくらでもあるし、俺より強いヤツはわんさかいる」

 三人はそろって不満そうな顔をした。

 二人はともかく、レナは俺の事をこんなヤツ呼ばわりしながらこの表情だ。訳が分からん。

「で、どうなの?」

「何がだ?」

「……合格?」

 三人が、期待を込めた目で俺を見ていた。

「そうだな」

 俺は地図をめくって見返した。

「部屋の繋がりはわかるし、通った場所も把握できる。最低限ではあるが、まあ、合格とするか」

「やった!」

「やりました!」

「……やった」

 三人が座りながらハイタッチをした。

「それじゃあ、次の課題だが――」

 戻って来たばかりなんだから休ませろ、と文句を言われるかと三人を見れば、合否判定を聞くときよりも、さらに期待する顔をしていた。

「この地図の清書だ」

 あからさまにがっかりした様子を見せる三人。

「やり方は教えてやる。それが終わったら実地試験だ」

「……試験?」

「もしかして」

「お師匠様とダンジョンに行くのですか?」

「ああ、第十階層までのお前らの攻略の様子をテストする」

 ごくり、と三人がのどを鳴らした。

 だよな。師匠にテストされるなんて嫌に決まってる。

 だが、俺は断行する。

「嫌でも行くぞ。そうじゃなきゃ、第十階層までの三人だけの挑戦は許可できない」

 厳しい顔でそう言うと、突然レナがソファから飛び上がったかと思った次の瞬間、他の二人が同時に飛び上がった。

「ぃやったーっ!!」

「嬉しいですわ!」

「……わーい」

 喜んでる……!?

 てっきり嫌がられると思った俺は、コップを手に間抜けな顔をさらしていた。

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