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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第二部

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第40話 最強パーティ

「さて、いよいよ問題の第十階層だね」

 最後に階段を降りて来たシグルドが、両腕を広げて大仰おおぎょうに言った。

 右手には細い枯木のみきにツタをわせた形状のロッドを持っている。杖の上部には拳大ほどの大きな魔石がついており、幹の先端から伸びた葉のついていない枯れ枝が、それをカゴのように閉じ込めていた。

 両手で持って力を入れれば簡単にへし折れてしまいそうなその杖は、しかし第二十五階層の宝箱から出た超レアな武具だった。

 通常、杖についている魔石は魔力をるときの補助となるものだが、シグルドの杖は、モンスターが消える際に出る黒いモヤを吸って魔石に閉じ込め、使用者の魔力の底上げをする、というチート機能がついている。

 いくら使える魔力が増えても、それを制御して魔法を完成できなければ宝の持ち腐れだが、無駄に器用なシグルドはそれを楽々とやってのける。

「いよいよも何も、ここまで全部戦闘を俺に押しつけてついてきただけだろうが」

「それが一番速いんだから仕方ないじゃないか、黒の閃光ブラック・ライトニング殿」

「だーかーら! それをやめろと何度言ったらわかるんだ!? うっかり外で口を滑らせたりしたらどうするんだよ!」

「シグルドはクロトの前でしか言わない。遊んでいるだけだ」

 今にも消え入りそうな声で言ったのは、全身をよろいで固めたホラス。

 かぶと、胸当て、篭手こてなど、全て第二十四階層のモンスターのレアドロップ品で、強力な物理防御力と魔法耐性を誇る。

 一揃ひとそろい集めるのは至難のわざだが、それくらいダンジョン下層に潜っていることから、実力がうかがい知れるというものだ。

 さらに巨大な戦斧バトルアクスを肩にかついでいる。俺ではオーラなしでは持ち上げることすら叶わない超重量のそれを、オーラを使わずに振り回せるのは、鎧の補助だけではなく、元の膂力りょりょくがあってこそだった。

「遊んでるなら余計(たち)が悪い!」

「まあまあクロトさん、ギルド長はいつものことですから、怒るだけ無駄ですよ。下層に行けばギルド長もちゃんと仕事をするはずですから」

 なだめるように片手を振ったのはアメリアだ。

 冒険者ギルドの受付をしているときのブラウスとロングスカートというで立ちとはうって変わって、今はタンクトップにホットパンツという身軽な服装をしている。

 だが、この面子めんつの中で、アメリアの装備品だけ平凡なわけがない。

 小さな羽根がついているショートブーツは第二十三階の宝箱から手に入れたもので、俊足と蹴りのブースト機能がついているだけではなく、両足で一歩ずつ空中を歩くことができるという逸品だ。

 両(もも)のバンドに差してある六本のナイフは、火や毒といった魔法の効果を乗せることができ、投げれば獲物えものを追尾するという厄介やっかい代物しろもので、これもホラス同様一本ずつ集めたらしく、家にはまだ何本か予備があるらしい。

 その点、俺の装備はつつましく、レアなのはただよくれるだけの剣のみだ。それだって防御力の強いモンスターには通用しない。

 ホラスの鎧の下位互換のような機能しかない外套がいとうは、下層で得たものだがノーマルドロップ品で、高額ではあるものの地上の店で買うこともできる。

 そんな俺がなんでユルドで最強と名高い、魔法使いのシグルド、タンクのホラス、シーフのアメリアの三人パーティと一緒にダンジョンに潜っているかと言えば、先日の異変の調査の案内を依頼されたからだ。

 正式な依頼であるならば、それも冒険者ギルド長たっての依頼となれば、断ることもできない。

 各扉を開いてフロア構造を固定するだけでいいって言われていたはずなのだが、ふたを開ければ俺だけ戦わされている。こんなの案内人の仕事じゃない。

「クロトだって、早く可愛い弟子たちの元に帰りたいだろう?」

 シグルドがまたかんさわることを言う。

 本気とも冗談ともつかない口調なものだからなおさら腹が立つ。

「あいつらには課題を与えてあるから随分前から潜りっぱなしだ」

「ギルドにはこの前来ていましたよ?」

 アメリアが首をひねる。

「師弟制度の支給品を取りに行っただけだろ。課題をクリアするまでは帰ってくるなと言ってある」

「あはは、さすがクロトだね。スパルタだ」

「俺にはあいつらを指導する気はない。さっさと他の奴にくら替えすればいい」

 だいたい、あいつらを弟子にする羽目になったのも、お前のせいだろうが!

「わたしは早く帰りたい。仕事が山積みだ。……シグルドもな」

「あはは……。ホラスに怒られる前に、先に進もうか。アラクネが上がってきているか確かめたいから、ここからは最短距離じゃなくて、全部の部屋を回ってってね」

 シグルドが俺を見てにこりと笑った。

 また俺が先頭かよ。

 だが、それが一番手っ取り早いのは確かなのだ。

「遅れずについてこいよ」

「あ、僕らは最短距離で行くから」

「は?」

「探すだけならクロトだけでいいよね? 第十階層ここなら危ないこともないし。僕らはボス部屋の前で待ってるから、探索よろしく。アラクネがいたら呼びに来て」

 いや、確かにこの三人を引き連れて行くより、俺が一人で走り回った方が速いけどな?

 文句を言おうとしたが、にっこりと笑みを深めたシグルドを見てやめた。

 問答を繰り返すだけ無駄だ。こいつは柔和な見た目と態度をしているくせに、我はゴリ押しするヤツだ。

 俺はため息をついて、オーラを全開にした。

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