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俺はダンジョンの案内人であって冒険者ではないのだが?  作者: 藤浪保
第一部

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32/68

第32話 違和感

「何かおかしい……」

 俺は足を止めた。

 ゆっくりと辺りを警戒しながら歩いていた前の三人も、それに合わせて歩みを止める。

「ボスがいませんね」

「そうね。後ろの扉も閉まらないわ」

「いや、ボスは奥に行けば現れるし、扉はその時閉まるんだが……」

 どうも嫌な予感がする。何か変だと直感が告げている。

 こういう時は絶対に何かある。これまでの経験がそれを裏付けている。

 自分よりも格上のモンスターに不意打ちされる直前だとか、強力な罠を踏みそうになった時だとかに、こういう感覚に襲われる。

 無視してはいけない。

 だが、ここはボス部屋だ。不意打ちはあり得ないし、罠もない。

 なら、この嫌な感覚はなんだ?

 あごに手を当てて、これまでの出来事を考える。

 第八階層にいたゾンビ――下層のモンスターが出現するレアな現象。

 第十(この)階層のアラクネ――下層のモンスターというだけでなく、ボス部屋までをも越えてくる、超レアな現象。

 それだけじゃない。そこまで珍しいというわけでもないが、第九階層には大部屋のモンスターハウスがあった。

 一つ一つは、(まれ)でも起こり得る出来事だ。

 二つ重なることもなくはない。それは俺自身も体験している。

 だが、三つも重なることがそうそうあるだろうか。

 少なくとも、俺は聞いた事がない。

 それだけ珍しいことなら、誰かが自慢げに話し、すぐに噂になるだろう。ギルドにだって報告が上がり、案内人である俺たちにも伝わるに違いない。

 こいつらにとっては、第十階層への初めての挑戦だ。よりによって、そこでこんなウルトラレアな現象を引き当てるだろうか。

 それに――ずっと頭の中にしこりのように残っている違和感。

 三人が途中で倒したアラクネと、最初に出会ったアラクネが同一でない可能性――。

 蜘蛛(くも)部分の模様が違ったような気がする、という考えが、どうしても否定しきれない。

 遭遇した地点は、だいぶ離れていた。フロアに入ったばかりの所と、奥のボス部屋の近く。

 だが、モンスターはフロアを徘徊(はいかい)するから、移動していても全くおかしくない。

 見間違い。気のせい。ただの杞憂(きゆう)

 そう考えるのが妥当(だとう)だし、俺もそう思った。

 それに、下層のモンスターが、二体も同時に上がってくることなんて――それも、ボスを越えてくることなんて、あるだろうか。

 あるわけない。

 だからあれは同一個体だ。

 そうやって否定すればするほど、逆に別個体だったのではという考えが強くなっていく。

「もう、何よ。先行くわよ」

「レナさん、お待ちした方が……」

「……うん」

「どうせこいつは戦わないんだから、待ったって意味ないわ」

 モンスターの出現はあくまでもランダムだ。三人の中に、たまたま今回特別不運だった奴がいるのだ、と考えれば、それまでの話。

 雨男と同じで、何をやっても上手くいかない奴ってのはいるもんだ。人間、ツイてない時もある。

 しかし、これがもしもただの偶然ではないとしたら――。

 原因として思い当たる事は一つだけある。

 いや、それはあり得ない。あれからまだ三年しかたっていない。

 それこそ起こり得ないことだ。

 考え込んでいた俺は、その部屋の異常さに気づいていなかった。

 つい数日前まで何度も往復し、見慣れていたというのもあるだろう。

 とにかく気づくのが遅れた。案内人としてあるまじきことに。

 ふと視線を感じたような気がして、周りを見回す。

 ごつごつとした岩肌で覆われている、円形の広場。ほんのり暗く天井がひどく高い。

 第十階層のボス部屋は――こんな所だったか?

 石造りの壁のある、墓所のような造りではなかっただろうか。

 ここは。この場所は――。

「まずい! 戻るぞっ!」

 はっと気がついて叫んだときにはもう遅かった。

「え?」

 同時に振り返った三人はいつの間にかずいぶん先にいて。

「ばっ……!」

 先頭のレナが踏み出した足が、ある一線を越える。

 途端、バタリと背後で扉が閉まった。

 くそっ、遅かった……!

 舌打ちをするのと同時に、レナたちの背後に、どさっと黒い大きな影が二つ落ちてきた。

「出たっ!」

 三人が走って戻って来る。

 どくりどくりと心臓が嫌な音を立てる。

 あり得ない。

 部屋の中がさらに明るくなっていき、二つの影の姿が明らかになっていく。

 巨人の上半身を持ち、大蜘蛛の下半身を持つモンスター。

 女王蜘蛛(クイーンアラクネ)

 ――第十五階層の(・・・・・・)ボスだった。


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