第1話 転移事件
やはり、空はいつでも青い。
僕は教室から見える空を見ながら物思いにふけっている。
今はそれどころではないことはわかっている。
昨日の強姦未遂事件で僕はクラスメイトを助ける形となった。名前は何だっただろうか。確か彼女はクラスでも目立っており、委員長の役職についていたと思う。そうだ、天竺葵さんだ。
昨日は大変だった。コンビニにアイスを買いに出かけた帰り道、男の笑い声と誰かが暴れる音がした。興味本位で見に行ってみると、天竺さんが男に襲われているところだった。このまま、なにもしなければ彼女は大変な目にあうだろうが、僕には関係のない話だ。ほかの犯罪なら、僕はそう考え見て見ぬふりをするだろうが、今回は強姦だ。8年前にあった強姦事件を思い出し僕は異常なほどに頭に血が上った。
僕は怒りに任せ、アイスの入った袋を思い切り振りかぶり、男の頭を殴った。男はひもが切れた人形のように倒れた。僕は怒りにまかせ、そのまま男を殴り続けようかと思ったが自分が捕まってしまうのも嫌だったのでやめておいた。そのあとは、警察に通報し、事情聴取で帰宅の時間が予定よりもかなり遅くなってしまった。母が迎えに来てくれたため、歩く手間は省けたが、アイスは溶けてしまっいた。
家に着くと、父も母も嬉しそうに泣きながら、僕のことをほめてくれた。その時に言われた父の「昔のヒロが戻ってきてくれたみたいだ」という言葉が、今でも頭から離れない。
こんなことをしても無駄だ。 無駄だとわかってる。
だって僕は...
僕はもうヒーローにはなれない