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4. 婚約の理由

 その頃のイリーナの頭痛の種といえば、前の年に婚約を交わしたセイブル伯爵家の嫡男、トーマスのことであった。


 彼は彼女より3歳年上で、金髪碧眼の美しい王子様のような姿で貴族の女性だけでなく市井の若い女性に大人気の青年だった。


 証拠は上手く隠してはいたが、あちらこちらから聞こえて来る浮名は相当なもので、酒場で『女好き』といえば『セイブル家の息子』という返事が阿吽の呼吸で返ってくるという有様。


 何だってそんな素行の悪い男と婚約してしまったのかというと、国王陛下の肝入りだったため断れなかったのだ。


 イリーナも最初は王子様然としたその姿に何度かうっとりと見惚れたこともあったが、顔合わせの茶会の度にチャラチャラとしたその態度と、ベタベタとすぐに触れたがる仕草に辟易した。


 何かというと王妃殿下の遠縁であることをひけらかし、自分が女性に人気があることを自慢するのである。


 何度か見合いの打診やそれこそ婚約寸前迄行ったこともあったようだが、身持ちも堅い真面目な貴族の女性のお眼鏡には適わなかったようでその度に話が流れたらしい。


 ほとほと困った当主が遠縁の伝手を頼って王妃に懇願し、国王が社交に疎く貴族の仕来たりにチンプンカンプンな父の娘であるイリーナに目をつけた。



 要は王命で結ばれてしまった婚約だった・・・



 迷惑極まりない案件だったが王命である以上従わない訳にはいかない為、どうすることもできず考える事を放棄(すて)てしまったのも、今はもう懐かしい思い出である。




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