29 ティーパーティー
この国の英雄と讃えられるカルザス将軍の屋敷は王家のお膝元である王城近くの上位貴族街にタウンハウスがある。
そして少しだけ王都から離れた領地にカントリーハウスを構えている。
もっともそっちも王領地のすぐ隣にあるので、結局はお膝元だ。
どんだけ陛下から信頼されてるんだと、呆れるほど王家に関わりのある場所に屋敷があるカルザス家。
そのカルザス家のカントリーハウスにイリーナの学友達が乗った馬車が次々とやって来る。
ガーデンパーティーの準備も整い後はお客様をお出迎えするだけだと、ホッとしている召使いたちを他所に執務室で難しい顔をするカルザス将軍とイリーナとジュリーの3人。
「招待状は送らなかったのよ。今日は学校のお友達だけ。しかも女の子しか招待してないんだもの。なんで来るのかしら?」
「しかし来てるぞ」
『情報通りだな』
「来てますわねえ、御令息」
『計画通りっすね閣下』
3人が窓から馬車溜まりを覗く。
黒塗りの馬車から優雅に下り立ったのは、トーマス・セイブル伯爵令息である。
見た目だけなら完璧な貴公子であるトーマスは、周りの馬車より一足早くやって来て降りるタイミングを見計らっていたのだろう。
イリーナの友人達が馬車から降りて仲良くエントランスへと移動しようとした瞬間に華々しく現れたのである。
「ほんっとに目立ちたがり屋で嫌になるわ・・・」
友人達の何人かがトーマスに気づき黄色い声で騒ぐ様子を見て、ゲンナリ顔になり呟くイリーナ。――トーマスの株価暴落時の友人3人は違う意味で騒いでいたが・・・
「まあ生粋の貴族だしな。目立つ事が好きなんだろうよ。それに(一応)お前の婚約者だからなあ。追い返すわけにもいかんだろう」
――将軍閣下の貴族に対する認識がちょっと歪んでいるのは割愛である
「そうですわね」
――ジュリーの顔が忌々しげに歪むのもお約束だが、これもまあ割愛する
「あの人私の誕生日知ってたのかしら? 教えて無いのに」
そう言いながら首を傾げるイリーナ。
お前も結構適当な婚約者だな――と思いながら娘を眺めるカルザス将軍と。
それ教えたんだよな~陛下が。――と思いながら苦笑いになるジュリアンであった。




