23 土下座する男
その日、将軍の執務室で土下座をする男が1人。
ジュリアン・ステューシーである。
「お願いしますっ!」
「そう言われてもな~・・・」
そこへやってきたのはお忍び姿の国王陛下である。
鼻の下の付け髭を《《外し》》、色付き眼鏡をかけて見事なアイスブロンドを七三分けにして、文官服を着てやって来た。
「来たよ~ マシュー・・・って、どうしたんだジュリアン・ステューシー? 地べたに正座して」
「へ? 陛下?」
「あ、今日は、妃の茶会をスルーしてきたんだ。バレると捕まっちゃうから内緒だぞ。で、お前は何をしてるんだ?」
陛下の言葉に、ハッとして将軍に再び顔を向け、
「お願いします! お嬢さんを俺にください!!」
と床に頭を擦り付けた。
「どうなっとるんだ?」
陛下が、困った顔の親友の顔と土下座する男の顔を交互に見比べた――
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「つまり、ステューシーはカルザス将軍の娘を気に入った? ということか?」
「はぁ、まあ。そういう事ですな」
その言葉にガバっと顔をあげるジュリアン。
「気に入ったなんてそんなんじゃ無いです! イリーナは俺にとって理想の女性ですっ! 強くて、可愛くて、カッコよくて、頭が良くて。しかも可愛い」
「お前、可愛いを2回言ったぞ」
「いいんです! 可愛いから!」
「3回だな」
「そんなに可愛いのか?」
「森に住む妖精のように可愛いです!」
「真剣に言うな~。本気か」
「本気も本気、超絶本気です! お願いします! 求婚をさせてください! 交際を認めてください! いや、その前に俺が男だって言わせて下さい!! 身が持ちません!!」
「身がもたん? 何だそりゃあマシュー?」
「はぁ。人懐っこい娘でして、ジュリーが義母になる予定だと知った途端にそりゃあもう懐きましてな。ベタベタです」
「うううう。お願いします。察してください。せめてベッドに潜り込むのをやめさせてください~~理性が持ちません~~」
「「・・・ステューシー? どういうことだ?」」
「親睦を深めるパジャマパーティーとか言って、夜中に急に枕持って現れるんす~~将軍どういう教育したんすか?! 俺理性がパンクします~~」
うううう・・・と、土下座のまま泣きそうなジュリアンを困った顔で見るカルザス将軍と、笑いそうなのを我慢して、顔が引き攣る国王陛下である。