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22 将軍の娘

 「ななな、何をする。無礼だぞ」


「無礼? そのようなお言葉そのまま貴方様にお熨斗を付けて返させていただきますわ。このお方は私の父、この国の英雄であるカルザス将軍の妻になる大切なお方なのです。そんじょそこらの、ぽっと出の令息がお触りなんかできる方じゃあ御座いませんのよっ!!」


「ななな、何だと! 不敬な!」


「不敬? 何故不敬? 私は、カルザス伯爵家の長女ですわ貴方様と同じ嫡子。爵位は同じ伯爵位で同格です。な~にか文句などございましてっ?!」


「君は、僕の婚約者だろう?」


「ええ、ええ。不本意ながら」


「不本意なのっ!?」


「ですが婚約者だからこそ、貴方様の暴挙をお止めして差し上げます。さあさあ、そこにお立ちになって。この鉄扇を顔にぶち込んで差し上げましてよっ!」


「なんでそうなる!!」


「周りを見ればおわかりでしょう?」



 ハッと気が付き周りを見回すと、通りがかりの通行客(貴族の)が、何事かと此方を伺っている。


 しかも大勢・・・


 

「恥ずかしげもなく日中早々から初対面の既婚(予定)女性の手を捕まえて、破廉恥極まりないですわっ!! さあ、遺恨を残さず、御家の恥にならぬうちに私めが成敗して差し上げます!!・・・」



 とそこまで言い切ったイリーナだったが、それ以上は続かなかった。


 何故なら騒ぎを聞きつけたセイブル伯爵家の侍従が2人全速力で走ってきて、トーマスを担ぎ上げるとこちらに向いて一礼をするとそのまま走り去り、通りの向こうに待機していた馬車に令息を放り込むと、疾風のように去って行ったからである・・・


 見事。


 揉み消しの手際は、鮮やかかつ迅速なセイブル伯爵家だった。



「チッ逃げられましたわ。今度こそ婚約撤回の理由にしてやろうと思ったのに。敵は中々尻尾を捕まえさせませんわね」



 呆れ顔で、イリーナを見下ろすジュリー。



「イリーナ、敵って? トーマス令息の事?」


「いいえ、セイブル伯爵家の侍従共ですわ。何時も肝心なところで現れて連れ去るんです。今回はぶん殴って顔に傷を作って動かぬ証拠にしてやろうと思いましたのに・・・」



 腰に手を当て、プンスコ怒るイリーナ。


 小さな身体に尽きない闘志とでもいうのだろうか、



「次こそは・・・」



 と両手を握りしめるイリーナを眺め、頷くメイドを眺め、残念そうな顔の馬丁を眺め、も一度イリーナに熱い視線を向けるジュリー。



『やっぱ、イイな。イリーナ』



 ・・・更に惚れ直したようである。



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