18 お買い物は御貴族仕様で荷が重い
さて、伯爵家の馬車に乗って貴族街にある雑貨を扱う店の集まる地区にやって来たイリーナとその義母であるジェリー。ついでに(ニヤつく)メイドである。
雑貨と一口に言っても、あらゆる物が一店舗で購入できるわけでは無くて、其々専門的に扱っている物ごとに店舗は分かれている。
例えば今日入手したいノートは紙製品なので紙問屋だ。
ノートや便箋、封筒等もそうだがレースペーパーやペーパーナプキン、ワックスペーパー等々あらゆるものを扱っており、店舗にある製品全てを見ると一日では終わらない為、店舗に入ると壁一面に取り付けられた棚に飾られた紙製品の中から自分の欲しい物を伝え、店員に奥から見本帳を持って来させる。
その中から購入品を選び、直接持ち帰るか届けて貰うのかを決め、その後貴族家に請求し月末に纏めて支払いの流れとなる。
だだし選びに来た人物の希望によりその場で支払う事もある。
まあ、面倒臭い様式美だが貴族の出入りする店舗は大なり小なりそんなもんである。
本来、貴族には家門其々に契約した商人が昔から居て、彼らがこちらの好みに合わせたものを取り揃え、中間マージンを利益の一部に上乗せして貴族家に請求するわけだ。
古い貴族家ほどお抱えの商人も多くなるのだが、カルザス伯爵家はごく最近まで平民同然の騎士爵の家だったため、そんなお抱え商人など当然いないし、そもそも未だ必要性すら感じていない。
カルザス家では、当主父娘は欲しい物があれば自分達で買い物に行くのが当たり前だ。
「チッ・・・煩いのがいるわ・・・」
紙問屋の前に馬車が止まると同時に、イリーナが窓から外を見ながら舌打ちしながらボソリと呟いた。