16 お出掛けは義娘(仮)と共に
男として生まれて人生23年目。
初めて一目惚れをした相手がよりによって自分の上官の愛娘で、しかも15歳でまだまだ少女と言える年齢だった。
オマケにその上官である父親は、筋肉こそ正義と言わんばかりの小山のような筋肉達摩の強面将軍。
ついでに言うなら素手で熊を屠れる男としても有名だ。
下手すりゃ絞め殺される・・・
思わず自分の首に手をやり、憐れな熊の代わりに屠られる自分を想像して青ざめるジュリアン。
彼は女嫌いで通しているが、そうなる前はそれなりに女性との交際も経験したし、暗部の統括になる頃には任務で女性と親密に成らざるを得ないこともあった。
そんな自分はとてもじゃないが、森の妖精の相手には不釣り合いだ。
だめだイリーナ嬢と俺は8歳も歳が離れているんだぞ? いやもうすぐ誕生日が来ると言っていたから7歳違いか、と自分で自分を慰めてみる・・・・
「どう考えたって、俺、オッサンじゃん・・・」
はぁ~、と溜め息を吐きながら鏡の前でいつもの軍部の特注コルセットでぎゅうっとウェストを引き絞る。
盛り乳も盛り尻もしっかり終わり、いつものドレスではなく真っ赤な近衛騎士の制服を着込むと、真っ白なロングブーツに足を突っ込んだ。
今日は例の女性近衛騎士の格好のお披露目である。しかも、街への買い物にお付き合いだ。
将軍閣下は今日は特別会議で家に居ないが学園で使う文具を買いに行きたいと、イリーナにおねだりをされ断り切れなかったジュリアンである。
デートみたいで嬉しい反面蛇の生殺し。
だが彼女は義母と初めてのお出掛けだと、楽しみにしているらしい。
イリーナの期待を裏切るわけにもいかず、渋々着替えているところである。
「ああ、これがデートなら大喜びなんだが・・・」
更に大きな溜め息を吐きながら鏡に映る自分を眺めてみる。
真っ赤な騎士服に身を包む自分の姿は、見る者が感嘆の溜息を吐きそうなくらいの美女である。
例えるならばベ●ばらの主人公●スカルのような凛々しい女性騎士・・・
「あー、美人だ畜生。これじゃ男にゃ見えねえよな・・・」
そう呟いて、イリーナを迎えに行くために肩を落として女主人の部屋を後にした。