11 ジュリー ≒ ジュリアン・ステューシーという男
「おい、ジュリー。制服が届いたぞ」
同僚が事務机に座り報告書とにらめっこをしているジュリーに声をかけてきた。
「は? 何でだ」
「知らんけど、将軍閣下が事務所にお前のサイズの物を見繕うように届け出があったらしいぜ」
「・・・まさか」
長いミルクティーブロンドを頭の高い位置で一纏めにしてあるポニーテールが、受け取った制服の袋を慌てて覗き込むのと一緒にサラリと流れるように垂れ下がる。
一緒に覗き込んでいた同僚が、ブッと吹きだした。
「おいおい、なんで女性騎士の制服なんだよ? ああ、作戦に必要な変装かぁ」
「ああ、その通りだ」
「しかし、また、こりゃあ・・・女装か」
「・・・ああ」
答えたジュリーは掛けていた眼鏡を外して、机に置いた。
深い森のような緑色の瞳が、表情を無くしているように見えるのは多分気の所為ではない。
「もう、拷問だよ・・・」
「へ?」
「何でもねえよ」
小さな声で呟いたが、同僚には聞こえなかったようだ。
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ジュリアン・ステューシー、あだ名はジュリー。
年齢は23歳、紛うことなく性別は男性である。
元は平民で騎士爵を賜っている王国軍の騎士だ。
若いが特殊部隊、特に暗部を統括している師団長でもある。
カルザス将軍の腹心でもあるこの男。見た目は女性みたいな綺麗な優男で頭は良いが口が悪く、やたらと切れるナイフの様な性格の男である。
気に入らない相手はバッサリと引導を渡すし、使えないと思うと直ぐに切り離す。
まあ、暗部にはピッタリの男なのだが顔がイイので黙っていても異性が近寄って来るため、少々女嫌いで有名だった。
そのジュリアンにある日突然、国王陛下から辞令が下る。
『至急、カルザス将軍の嫁になれ』
「なんじゃこりゃ~!!」
ジュリアンの執務室から叫び声が聞こえた。