閑話2.クリキノコニガモドキタケ狩り
「これはクリタケ。美味しい」
おーちゃんは山盛りのキノコから、赤茶けた1本を摘まんで竹笊に移した。
森の恵みの中でも、特にキノコはおもしろおいしい。煮るなり焼くなり好きに加熱すれば美味しく食べられるし、良い出汁が出る。塩と醤油だけの料理と比べるとやっぱり一味違う気がする。しかも乾燥させれば長持ちして、森を降りても楽しめる。
「これはクリタケモドキ。食べられる。」
「そうなんだ」
やや小ぶりで黄色っぽいキノコを、クリタケを入れたのと同じザルにいれた。
そしてキノコは動物でも植物でもなく、菌類だと言う。
枯れた木や動物の死骸なんかを分解しながら栄養を得る。そうやって菌糸をぐんぐん伸ばしてキノコという構造物を作っていって、最後には土へ還るのだ。森に住み、森をキレイにして暮らしている。
どことなく私たちハイパーアキュムレーターと同じだな、と勝手に共感して親しみを覚えている。
「これはニガクリタケ。食べられない」
「毒?」
「うん。ダメだよ」
おーちゃんの困り眉が顰められ、さっきのととてもよく似たキノコを森へ放り捨てた。
キノコは良いものだ。――知識のある者にとっては。
食べられると思ったが、実はよく似た毒キノコだった、なんて話は残念ながらなくならない。
その点、おーちゃんの目利きは頼りになる。きれいな黒髪と白く整った顔立ち、深窓の令嬢という言葉が似合う彼女だが、サバイバルの達人だ。石塚組で10年以上経験を積んだハイパーアキュムレーターは伊達じゃない。
おーちゃんに任せておけば、5人でキノコ狩りしたザルいっぱいの中からは、食べられるキノコだけが残るだろう。
「じゃあこれもニガクリタケか。食べられないね。」
「それはニガクリタケモドキ。食べられる。」
「??????」
私が摘まんだキノコと、さっきおーちゃんが放ったキノコの違いが良く分からない。こっちの方がちょっと色が濃いだろうか。でも、採った場所とか、成長してるかどうかで変わるのでは。やっぱりよく分からない。
「こっちがニガクリタケ」
うーちゃんはキノコの山から1本取り出して、私にじっくり見せた後、放り投げた。
「苦ェッ!」
うーちゃんが放り投げられたキノコを口でキャッチし、すぐに吐き捨てる。キノコの生食はダメだし、あれは毒キノコだ。あの娘の体質なら大丈夫だろうけど。
「口洗ってきたら?」
満面のしかめっ面のうーちゃんを見て、おーちゃんが微笑み、私も釣られて笑う。ずいぶん歩いたし、お腹が空いたのだろう。
今晩のキノコ汁うどんが楽しみだ。




