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ジャンク屋ちゃん! ~Scavenger Girls!~  作者: 山田擦過傷
1話:壊れた世界を直す旅
24/24

エピローグ うーちゃんと、取り戻したいつもの日常

 


 ピ――。ピ――。ピ――。

 暗い工場に、一定で、高い周波数の、不気味な電子音が響いている。


 ガス検知計は静かにしている。変な臭いもしないし、脈拍(みゃくはく)もだいじょうぶ。


 この工場に入るのは3度目になるか。

 最初に入った時から特に変わったところはない。このまま明日とか一週間後とかにまた入っても、何も変わらないんじゃないかという気がしてくる。


 それどころか、何時まで経っても変わらないんじゃ、という気さえしてきた。


 昔、有名だとか言うナントカ鍾乳洞(しょうにゅうどう)に立ち寄った時と同じ、時間が止まっているかのような感覚。


 違うと言えば。


(あー)ちゃん、何探すんだっけ?」


 今回は宇々(うー)ちゃんと一緒。

 無停電電源装置(UPS)だよ、と何度も繰り返した回答をすると、ふぅん、と分かっていなさそうな視線が帰ってくる。


 それが何だか面白くて、装備の重量も忘れることができた。気軽な足取りで幾何学的(きかがくてき)洞窟(どうくつ)を進んでいく。



 ――♺――



 道は覚えていたし、電子音が大きく聞こえる方に歩けばいいから、制御盤室まで迷うことはなかった。両方の壁際には自動販売機のような箱が整然と並び、暗い奥の方へと続いている。


 工場の機械を動かすための神経が集まる場所。人が作った直線の洞窟のなか、アラームのような規則的な音は、私の足元から聞こえている。


 ブーツが踏んでいるメンテナンスダクト、金属で編まれたマフラーのような、グレーチングの下だ。持ってきたバールでグレーチングを剥がし、1.5mくらい下へ降りる。


「そうそう。これこれ!」


 あの時見つけたUPSは狭いメンテナンスダクトの中に鎮座して、バッテリーが劣化してるぞ、と叫び続けている。


 ホルスターから電動ドライバーを抜いて六角ネジを外し、UPS自体の電源を落とすと電子音は静かになった。両の手袋を引っ張って気合を入れてから、感電しないよう配線のコネクターを外して。


「うーちゃん、これ持ち上げられない?」

「やってみるー!」


 うーちゃんはメンテナンスダクトへすとんと身軽に着地すると、指と力がかけられる取っ掛かりを探す。私が前に持ち上げようとした時は重くて全然ダメだった。けど。


「ふんッ!」

 うーちゃんが奥歯を噛みしめて全身に力を入れると、あっさりと持ち上げてから頭の上に乗せて、バランスを取った。


「重いなあ、これ」

 ぶつくさと文句を言いながら、グレーチングの上に置いてしまう。それはもうあっさりと。


「ふふ」

「何か面白いことあった?」

 うーちゃんがクエスチョンマークを浮かべて聞いてくる。もちろん皮肉ではなく、そのままの意味。純粋に質問しているだけなのは分かっている。


「ううん。儲けられそうだなって」

 目の前の友達は、にしし、と屈託(くったく)なく笑った。

 後は台車か何かに乗せるだけ。そう思いながら無線機のスイッチを押す。


往子(おー)ちゃん? こちら(あや)


 え? 緯兎(いー)ちゃん目、()ましたの? それで?


 自己診断プログラム……。あ、はは、また寝ちゃったんだ。


 良かった。慧摺(えー)ちゃんも心配そうにしてたし。


 うん。あ、そう。UPS持って帰れそう。


 工場から出たら、人工馬(サクラ)に手伝って欲しくて。


 うん。


 うん。


 うん。


 大丈夫。今から戻るね。


 今日は私が(おご)るよっ」



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