閑話7. 大人になるまでに身につけた偏見のコレクションでしかないもの
バッタの串焼きを見て、口に入れてもいないのに苦い顔をしてしまった。
「宇々ちゃん、これ食べる?」
私の差し出した串を、うーちゃんは無警戒で口に入れた。虫を表情ひとつ変えずもぐもぐと噛んで飲み込むこの子の感性が信じられない。
「絢ちゃんは嫌いなものが多いよな」
「そ、そうかな?」
虫、カエル、トカゲ、ネズミ。
よく私以外の皆はおやつの代わりにつまんでいる。
でも私は、好き嫌い以前に、こいつらのことを「食べ物」だとはとても思えないのだけれど。
――♺――
「すごい川を見つけた!」
「すごい……川?」
悪い予感がする。ばしゃばしゃと小川で遊んでいるうーちゃんに近づきたくない。
「見て見てあーちゃん! ザリガニがいっぱいだ!」
悪い予感は見事に的中した。うーちゃんは両手で泥まみれの大きな甲殻類を持っている。おそらくあの子の足元には、アレと同じような生き物がうじゃうじゃといるのだろう。
「ペットにするには大きいんじゃないかなあ?」
「あ、何言ってる? 食うんだよ!」
ああ、かみさまよ。
「お、やったなうー子」
「よく見つけたね」
「汚染度は低いかと。摂取可能なレベルです」
集まってくる慧摺ちゃん、往子ちゃん、緯兎ちゃんは前向きだ。
「おーちゃん、料理してぇ」
「うん」
うーちゃんはデコピンで巨大なザリガニを気絶させてから、おーちゃんに渡す。ダメかもしれないが、一応声をかけてみた。
「ザリガニだよ? そんな、泥まみれの。何食べてるかも分からないのに」
「虫よりいいだろ」
「そうだぞあーちゃん。肉と変わらないぞ」
えーちゃんとうーちゃんは不思議そうだ。
私としては虫とザリガニに違いはないし、お肉に忌避感はない。
だけど、楽しそうな皆に水を差すようなことは言いたくない。まごまごとしている間に、おーちゃんがさくさく料理を進めていく。
よく洗われ、背ワタを抜かれ、ニンニク、しょうがと一緒に油に投げ込まれ、揚げ焼きにされて鮮やかな赤に染まった哀れなザリガニ。
塩と胡椒、スパイス類をふりかけられてさっと仕上げられた、山盛りのザリガニ。
こんなの食べるの間違ってる。
うーちゃんはとびきり大きい個体を両手で掴み、ぶりっと割って身を出すと、
「あーちゃんあーん!」
あーんしていない私の口に突っ込んできた。
丁寧な下処理と油とスパイスのおかげか臭みはなく、丁度いい塩加減が甲殻類の味を引き立てる。アツアツの大きな身をいやいや噛むと、不本意ながら満足感が湧いてくる。
「どうだ?」
これが悔しいことに、
「うまいですぅ」
滲んだ涙は熱さか、嫌悪感か、うまさのせいか。
複雑な私の表情を見たうーちゃんは眉を顰める。
「あーちゃんって変だよな」
「納得いかないっ!」




