閑話6.終末旅程は足元から
――――ゴゥン。
――ゴゥン。
ゴゥン。
「あーちゃん。散歩に行ってくるね」
「…………はい」
ゴゥン。
――ゴゥン。
――――ゴゥン。
えっと。
何が起きたか整理しよう。
休日に宇々ちゃんとだべっていたら、凄い足音を響かせながら、バケツ頭で2メートル半くらいの鋼鉄の身体をした巨人が近付いてきて、合成音声で話しかけられたと思ったら、呆気に取られているうちに散歩に行ってしまった。
「かみさまかと思った」
いや、違うのか。あれは強化外骨格の一種なのだろう。中に入っている人が誰だか分かる前に行ってしまった。
「往子ちゃんの匂いだったぞ」
うーちゃんがそう言った。じゃあ間違いないのだろう。カップラーメンが出来上がるくらいの時間が経ってから、息を切らして慧摺ちゃんが走ってきた。
「ハァ、ハァ。おー子を見なかったか?」
「見た。固そうだった」
うーちゃんはおーちゃんが歩いて行った方向を指差している。
「あー、もう。充電してないって言ったのに」
えーちゃんはしかめっ面を浮かべた。
どうやらトラブルの匂い。
話を聞くと、古いガソリンスタンドからパワードスーツを見つけたから、修理をしていたそうだ。それがひと段落したところで、おーちゃんがテストパイロットに立候補した。
おーちゃんはいたく気に入った様子で、えーちゃんが工具を探しに行ったちょっとの間に、バッテリーの容量が少ない状態で散歩に出てしまった。
昔の事故のせいで、おーちゃんは足が悪い。
自らの足で歩くには何かしらの筋力補助装置が必要なのだ。で、ここからが問題で、彼女はあまりにも旅が好きだった。
とにかく一所に留まるということができず、放っておけばどこかに行ってしまう。隊長が私の教育係に任命したのも、そうすればさすがに大人しくするだろうということらしい。
足枷だったとは心外だ。
……話を戻すと、筋力補助装置は大抵バッテリー式だから、電池が切れたら歩けなくなってしまう。
この人工物が散らばった不毛の荒野で。
「やばい!」
「探しに行くぞ!」
「おーちゃん狩りだ!」
――♺――
無事見つけた頃には、日が傾いていた。
おーちゃんはバッテリーが切れたパワードスーツを携帯式の太陽光パネルでじっくりと充電していて、焚火に当たりながら罠で捕ったウサギを焼いていた。
「早かったね」
「ウサギ食べてる! ずるい!」
「うーちゃんも食べる?」
「食べる!」
ナイフで手際よく切り分けられたウサギ肉に、うーちゃんは無警戒で食らいついた。それをいつもの無表情で見ている。
余裕そう。余裕そうだ。
「大丈夫?」
「うん、ごめんね」
そういえば、おーちゃんは私の先輩で、熟練のハイパーアキュムレーターだった。歩ける、歩けないなど彼女にとっては些細な問題で、科学と経験でどうにかしてしまうのだろう。
「皆なら来てくれるって思ってた」
そう言って一瞬だけ笑ったのを、見過ごさなくて良かった。




