閑話5.「イ」型なくして繁栄なし
しなやかな筋肉は炭素繊維。
流れる血潮は電解液。
頑丈な骨は重金属。
人工皮膚は私のそれよりも肌ツヤが良い。
見た目はきれいなお人形さんのような「イ型」土壌改善型新人類である緯兎ちゃん。彼女はざっくり言えばロボットである。
「語源から言えば私たちもロボットだけどね」
おーちゃんが言うにはフィクションに登場する、人間に奉仕労働するために製作された人工生命体が、ロボットだったそうだ。
なるほど、それなら確かに私と彼女にあまり違いはない。
強いて言えば――。
眠らない。
「往子、眠いですか? 抗えませんか?」
「脳がね……データの整理をしたがってるの……抗うことは……処理の先送り……」
二日も徹夜した大仕事が終わって、シャワーも浴びずにベッドに倒れ込んだおーちゃんの傍にしゃがみ込んで、いーちゃんは睡眠の重要性について質問攻めにしている。
「――なるほど、大事な機能なのですね。お休みなさい、往子」
「おやすみ……いーちゃ……」
トイレも不要。
「絢はどうして排泄を我慢したのでしょうか? どういった感覚なのですか?」
「今じゃない、今じゃないよ、いーちゃん」
その質問は私がトイレに籠っている時に扉をこじ開けてすることじゃないと滔々と説くことになり、彼女は一言「了解しました」と言った。
月のものも来ない。
「私は女性型のイ型ハイパーアキュムレーターです。生理の苦しみはどのようなものですか?」
「こんなシステムを搭載した設計者を縊り殺したくなるゥ……」
椅子の上でうつらうつらとしながら慧摺ちゃんは答える。
「神殺し、ということでしょうか。慧摺の頭脳であればいずれできるでしょう。何かお手伝いできることは?」
「ひとりにしてくれ……」
「了解しました」
食べない。
「食事と言うは、どのくらい幸せですか?」
「ぜんぶだ」
脂のしたたる大きな肉にかぶりつく宇々ちゃんは即答した。
会話になっていない、と思う。だけど、うーちゃんの物言いがあまりにも堂々としているものだから、いーちゃんはしばらく黙り込んで。
「宇々が言うなら、そうなのでしょう」
と、何か理解したようだった。
私たちといーちゃんとの違いは……多いかもしれないが、それでも大切な友達であることは揺るがない。




