雰囲気がいい感じだと、なお怖い
リア充の溜まり場に連れ出されるのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
街中を散策しながらクレープなんて食ってみたり。
可愛い、なんて言って駆け出して服屋に入り、何か買うのかと思いきや買わずに店を出たり。
会話も本当に他愛のないもの。お互いの出身中学の話をしたりだった。
これはいわゆるデートってものになるんじゃないか?
そんな感じの時間を過ごし、いつの間にか総合公園の入り口に来ていた。
雨の日に公園に来たって何もすることないだろ。
そう思いながらも花蓮の後をついて行く。
「次はどこに行くんだ?」
「ん? どこに行くって言うか、ただのお散歩?」
何がしたいんだ。花蓮の意図が全く読めない。
溜まり場に連れて行かれる訳ではないようだが、ただ二人で散歩というのも何だか不気味だ。
だってそうだろ? 友達かも分からない二人で話題も尽きて来たというのに散歩だなんて。
本当にただ友達になろうとしてくれているのか?
だとしたらただの良い奴じゃん。
俺は変に意固地になっていただけなんじゃないか?
そんなことを思い始めていた時だった。
「おい、花蓮!」
後ろを振り返ると、どこから現れたのか大柄で茶髪の男がこちらをすごい形相で睨みつけていた。
制服からしてどうやら他校の生徒のようだ。
「どういうことだ。その男は何だ!」
どういうことだ、はこちらが聞きたい。
何なんだ? 急に修羅場に突入か?
「何だって、あんたには関係ないでしょ?」
「ふざけんな! お前、俺を騙したのか!」
「騙したも何もあんたとは何もないじゃない」
そう言って花蓮は急に俺の腕にしがみついてきた。
「俺はこんなにもお前を思っているのに」
「悪いわね。私、彼氏いるの。あの日参加したのだってただの人数合わせ。そう言ってるじゃない」
何の話をしているのかは分からないが、やはり俺は修羅場に巻き込まれてしまったようだ。
よし、逃げよう。
そう思ったがどうしてか足が動かない。
足が竦んだ訳でもないのにどうして?
そうか。二の腕あたりに感じる柔らかな感触が心地よくて動きたくないんだな。
なんて呑気に考えていると、男がこっちに近づいてきて花蓮の腕を乱暴に掴んだ。
「ちょっと! 離してよ!」
「うるさい。こっちに来い!」
男は花蓮の腕を乱暴に引っ張って自分の方に寄せようとするが、花蓮は俺の腕から離れようとしない。
おいおい、参ったな。
どうしようか考えていたが、明らかに怖がっている花蓮の強張った表情を見た瞬間体が動いていた。
「おい、何だこの手は。喧嘩売ってんのか?」
「俺の彼女に気安く触るな」
花蓮を掴んだ男の腕を掴み、アニメで出てきたようなセリフを言ってみる。
我ながらクサいな。
「てめぇみたいな隠キャ野郎が彼氏な訳ねぇだろ。わかってんだよ、花蓮の嘘だってことくらい」
「嘘じゃ、ないわよ」
呟くようにそう言うと力強く男の腕を振りほどいた。
何だ、振りほどけるなら最初からそうしてくれ。
恥のかき損だよ畜生。
なんて思っていた次の瞬間、唇に柔らかい感触がした。
花蓮の顔が近い。
「おいおい、嘘だろ……」
それは俺のセリフだよお兄さん。
何で花蓮は俺にキスなんかしてるんだ?
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