雨の日はどうも憂鬱になりがちだ
その日は雨だった。
俺はいつものようにクラスの端っこの方で一人昼飯を食べていた。
高校に入って早三ヶ月。友達と呼べる人は一人もいなかった。
入学式の日、高熱を出した俺は欠席。
悲運にもそのあと二週間体調が優れず登校できなかった。
クラスのグループもまだ定まっていないはず。そう思いながらどきどきの初登校。
俺の考えは甘かったようで、すでにグループが形成されており俺はどこにも属せなかった。
だからこんな感じで一人昼休みの時間を過ごさざるを得ない。
いつもなら屋上に行って昼寝付きの時間を過ごすのだが、梅雨ってのは俺にどうも冷たい。
土日にまとめて降ってくれればいいものを、狙っているかのように平日は連日の雨。
土日は快晴という今年の梅雨。
はて今年は厄年だっただろうか?
ボーッと過ごす五十分の休み時間。
授業開始までの予鈴が鳴り響き、各々が怠そうにも次の授業の支度を始めた。
次は体育か。
皆がさっさと教室を後にする中、俺は少し遅れて準備を始めた。
更衣室の中、一人で着替えるのはまだ少し居心地が悪い。
そろそろかな、と席を立つと教室に勢いよく一人の女子が入って来た。
「ぬおっ」
俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
それに驚いたかのようにその女子は俺の顔を一瞥。
俺は咄嗟に目を逸らしてしまう。
いつからこんな酷く陰キャ体質になってしまったんだ。
中学までは……ここまでじゃなかったと信じたい。
なんだか恥ずかしくなって足早に教室を出て、近道の非常階段を目指す。
すると後ろからその女子が走って追いかけて来たではないか。
「ちょっと。逃げなくてもいいじゃん」
「いや、別に、逃げたわけじゃ」
「嘘。ぬおって変な声出して嫌な顔してた」
「ごめん、そんなつもりはなかった」
ハハハ、と何故か快活に笑い出す女子。
笑うところなんてあっただろうか。
そうか、気を使って話しかけたはいいものの気まずくて笑って誤魔化そうとしているのか。
さすがはカースト上位女子。いわゆるリア充女子。これがコミュ力というやつなのか。
「いつも一人だよね。友達作らないの?」
「作らないというか、できないというか」
「ふーん。まぁ何か怖そうだもんね!」
怖そう? 俺が?
俺からしたら君たちみたいな人種の方がはるかに怖いよ。
「私が友達になってあげようか」
「いえ、結構です」
「むー! そんなんだから友達できないんだよ!」
この人は俺と友達になるということがどういうことかわかっているのだろうか。
クラスで基本ぼっちの俺と友達になるなんて、周りからどう見られるか少し考えたら分かると思うのだが。
「いや、本当に大丈夫。気を遣ってくれてありがとう」
高校に入って初めての同級生との雑談だった。
やっぱり先生と話すのとは違って新鮮だった。
ありがとう……名前なんだっけな。
「放課後、空けときなさいよ!」
後ろで何か言っている気がしたけど、俺は聞き返すこともなく更衣室へと入った。
投稿形式間違えたので一話目は再登校となります。
引き続き二話目もお楽しみ下さい。