8 学園散策
コン コン コン
「ローズ様。準備出来ましたか!?」
一度、着替える為に部屋に入ったローズだったのだが、入ったきりいくら待っても出てこない。
少し心配になったジョイが、準備が出来たかの確認と生存を確認する意味も込めてローズの部屋の扉を叩いた。
「ごめん!!!もう、出来る〜!!って言うかジョイ。何で突然、敬語なの!?なんかジョイに敬語使われるの凄い違和感なんだけど……」
準備を進めていたローズだったが、先程まで気安く会話していたジョイが、ローズが着替えている間に何を思ったのか突然畏まり出したのに違和感を感じ、少し声を張り上げてジョイに話しかけた。
「まぁ、そうなんだけどさぁ…普段から敬語使って無いと、うっかりジュリアス様とかの前で普通に喋って怒られそうじゃん!!」
「ふふっ。そうかもね!!ルイなんてその事でしょっ中 怒られてるしね」
ジョイの的を得た意見に、ジョイがローズに気安く喋りかけてジュリアスに小言を言われているところが想像出来きてしまい妙に納得してしまうローズは、ジョイもジュリアス達に怒られるのはやっぱり嫌なんだと可笑しくなりクスクスと笑い出す。
お茶の片付けを終えてジョイの近くまで来ていたルイは、突然、自分の名前を出された事に軽く驚くが、昔からローズの見てない所でジュリアスに小言を言われまくっているので、もう慣れているのか何か問題でもあるのかと言うような勢いでしれっと会話に加わり出した。
「ぁん!?んなもん もう、慣れたよ」
「お前……怒られんのに慣れてどうすんだよ……」
普段からプライドの高そうなルイが、ジュリアス達に怒られ慣れてる発言に内心驚くも、呆れたようにルイに話しかけ残念な子でも見るような顔をする。
「はっ。お前も その内、分かるよ……どうせ、何やったて怒られんだから……やりたい様にやったもん勝ちなんだよ!!」
「あぁ…何か…分かる気がする……」
付き合いの浅いジョイが、ジュリアス達の面倒臭さに、まだ、気が付いていない事を馬鹿にするかの様にルイも鼻で笑い返すが、ルイの話に妙に納得してしまったジョイは、怒りもせずに軽いため息を吐く。
ただ、これから新しく学園生活が始まるのに今から気落ちしてても仕方がないと、ジョイは気分を変える様に力強くローズに話しかけた。
「じゃあ、まぁ…いっか!!宜しくなローズ様!!」
「チッ!!それは、それで、気に食わない……」
「ぁん!?っるせぇよ!!」
「何だ。やんのか!!??」
先程までしおらしくしていたジョイが、突然、以前の様にローズに気安く接するのは、それはそれで気に食わないルイはこめかみをピクつかせてジョイに絡みだした。
自分の部屋で準備していたローズだったのだが、2人の険悪な雰囲気を素早く察知すると急いで準備を終わらせ
「もう……喧嘩はダメだからね!!よし!!!出来た!!ジャジャーン!!!」
と、言いながら勢いよく扉を開けた。
「「なっ!!!」」
ローズが探検しに行くから準備すると部屋に入ってから何やら時間を掛けて色々していたのだが、部屋から出て来たローズは、綺麗なピンクパールの髪が短くなっていて、平民の少年の様な格好をしていたのだ。
「ふふふ。びっくりした!?お母様に頼んで、ウィッグと洋服を揃えてもらったの!!どう!?男の子に見える!?」
「……えっ……まぁ……見えなくも無いけど……お前、本気でそれで外を出歩く気か!?」
男の子に見えなくもないが、髪が短くなった事でより顔の可愛らしさが強調された中性的な美少年姿にジョイは動揺を隠せずに狼狽えてしまう。
「えっ??ダメ???女性って分からない方が動き易そうじゃない!?ジロジロ見られるのも何か嫌だし……」
「まぁ、それもそうかもな!!じゃあ、とりあえず、行って見るか!?」
なんだか違う意味で逆に注目されそうな気もするが、それでも女性の姿でウロウロされるよりはマシなのかと、自分を無理矢理納得させたジョイはローズを外へ促し出した。
「うん!!ルイもいいでしょ!?」
「ぁん!?……まぁ……女って分かるよりはいいかもな……だけど、男の格好だからって調子に乗って、絶対に俺等から離れるんじゃねぇぞ!!」
ルイも難しい顔をしているがこれ以上言ってもローズが聞かない事を分かっているので、しっかりと釘を指しつつローズの横に付いた。
「は〜〜〜い!!!よし、出発ーー!!!」
そう言いながら、一人楽しそうなローズ達は、寮の部屋をあとにするのだった。
***
「あっ!!そうだ!!!今から私はローズじゃなくてロジーね!!」
「はい。はい。ロジー 分かったから、ちゃんと前見て歩けよ!!」
ローズが、新しく生活する学園内を散策出来ると嬉しそうに、一人、前に出て歩きその後ろを追いかけるようにルイとジョイが付いているのだが、何かに付けてルイ達の方を振り向き話しかけるのでルイ達は先程から気が気ではなかった。
だからと言って平民の男の格好をしているローズをエスコートする訳にもいかず、ローズが前に出る度に危なっかしくて慌てて横に並ぶのに気が付くと先に行こうとするローズにルイが堪らず注意したその時……ローズが頬を膨らませながら振り返った。
「ぶぅ……もう、分かってる……」
"ドン"
「あっ……ごめんなさい……」
言った側から、前方から歩いて来ていた男性とすれ違う瞬間に振り向いてしまった為、ぶつかってしまうローズにルイ達は焦ってローズの横に並び立った。
「おい!!平民のクセに誰にぶつかったと思ってんだよ!!」
「ご……ごめんなさい……」
言い方は乱暴だが、ルイに注意されていたのに、次の瞬間には人にぶつかって迷惑を掛けてしまったローズは少し肩を落としながら素直に謝った。
「謝って済むと思ってんのかよ…お前が、ぶつかってきたせいで平民の汚れが付いたじゃねぇか、どうしてくれんだよ!!」
とんでもない言い掛かりを付け出した男性に、ローズは目を見張るがローズを庇うように素早く前に出たルイの横でジョイが恭しく腰を折る。
「申し訳ありません。コイツは私の連れでして、私は、ジョイ・ダチェスと申しまして、現在は、父から譲り受けたダチェス伯爵の爵位を有しております。
貴方様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!?後ほど父を伴ってご挨拶に伺いますので……」
遠回しにアルベルトを使って後で圧をかけに行くぞ!!と、伝えるジョイに、途端に顔を青ざめさせた男性は動揺が隠さずに数歩後退る
「あっ……いや……俺……急いでいるんだった……
ごめん!!君。。俺もよそ見してたから、じゃあ……すみませんでした!!!」
そう言い捨てると男性は、逃げるようにして寮へと入って行くのだった……
「ジョイ、凄いね!!!」
「ぁん??俺が凄いんじゃ無くて、凄いのは、アルベルト様なんだよ!!ダチェス伯爵って言ったら貴族の中でも有名だからな!!」
(まぁ、こんな時の為に、爵位を継いだ様なもんだしな……)
「ったく、これに懲りたら、あんまりよそ見すんなよ!!
って言っても無駄そうだけど……」
男の姿をしたところで結局、寮を出て早々に問題を起こすローズに前途多難だと頭を抱える2人だった。




