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7 いざ学園へ 2


「うわー!!着いた!!!」


 馬車がゆっくりと学園前に到着すると、ジュリアスにエスコートされながら馬車から降り立ったローズは、感激の息を漏らした。


「ローズ。申し訳ないが、我々は一度 王城へ顔を出さなければならない。今日からルイとジョイが共にローズに付くことになるから2人から絶対に離れるんじゃないぞ!!」


「はい!!お父様!!」


 ローズと離れる事に心配そうなクロードだが、竜の事や明日の入学の事などの諸々の話があるようで王城から招集されていたのだ。


「ルイ。ジョイ。しっかり頼みますよ!!」


 ジュリアスも、ローズを若い2人に任せて新生活をスタートさせるのが不安なのか、断腸の思いでルイ達にローズを託すのだった。


「「はい。お任せ下さい!!」」


 クロード達を見つめながらしっかりと返信をしたルイ達を確認すると、クロードとギルバートはジュリアスとノアを引き連れて馬車へと乗り込んで行く。


 クロード達を見送った後、ローズは2人に向かってにっこりと微笑むと「じゃあ、とりあえず寮の部屋に行こうか」と声を掛けた。




***




「ふぅ〜〜今日から、此処が私達の部屋なんだねー!!まだ、今一実感が湧かないけど、なんかドキドキするね!!」


「ぁん??別に普通だろう…」


 ルイはローズの言葉にさして興味も無さそうな顔をしながらローズに答える


「ふふっ」

(ルイさん…そんな何でもない様な顔してますけど、尻尾がブンブン揺れちゃってますよ!!見た目は大人になったのに、そう言うところは、まだまだ可愛らしいですね!!!)


「おい!!何笑ってんだよ!!」


 そんなローズのニヤつきを敏感に察知したルイは怪訝そうな顔をしていると


「まぁまぁ…ローズ。こんなガラの悪い奴なんてほっといてお茶でもしようぜ!!」


 間に入ったジョイがローズをお茶に誘った。


「えっ??ジョイってお茶淹れられるの??私、淹れようか!?」


「やめろ!!何かとんでも無いもんとか入れられそうで怖ぇよ!!」


 ジョイの軽い発言に、ローズも軽く返しているだけなのだが、何故か必死に止められてしまったローズは、釈然とせずに頬を膨らませてジョイを睨み付ける。


「何それ!!失礼な!!お茶くらいちゃんと淹れられるよ!!」


「はいはい。お茶は、俺が淹れるから、素人2人は黙って座ってろ!!」


「チッ!!」


「は〜い」


 子供のような2人の言い合いに、さっきまでは自分も同じ様にローズに詰め寄っていたくせに、そんな事実は無かったかの様に棚に上げ出し、一人だけしれっと大人の余裕を見せつけ 止めに入るルイに、ジョイは不機嫌そうに舌打ちするとドカッとソファに腰掛けるが、普段からそんな扱いのローズは、特に気にした様子もなく元気に返事してジョイの前に腰掛けた。



………



「ねぇねぇ。他の生徒とかも、もう居るのかなぁ!?」


「そりゃ居るだろ!!明日、入学式なんだから、大体の奴らは今日 寮に入って、明日はここから登校すると思うぞ!!」


「そっか〜!!どんな人達が居るんだろ……女の子も居るかなぁ!?仲良くなれるといいなぁ」


 ローズは久しぶりの学校生活に期待に胸を躍らせてジョイに話しかける。


「それは、無理じゃねぇか!!??この国の一般的な女達とお前じゃ全く合わなそうだし!!」


「何でよ!!そんなの分かんないじゃん!!」


 ローズのささやかな願いを一刀両断され納得のいかないローズは、ジョイに食ってかかるが、紅茶を持ったルイが現れ、ローズ達に紅茶を淹れながら真剣な顔をすると


「ジョイの言う通りだろ。お前…仲良くなりたいからって、知らない人にあんまり迂闊に寄って行くんじゃねぇぞ!!

 あと、今年の新入生の中で女子は5人だから!!」


 ローズに向かってそう言い放った。


「えっ!?ルイ…何で知ってるの!?」


 学園に全く興味無さそうにしていたルイが、そこまで知っている事に驚いたローズは、思わずルイを見上げてしまう。


「ぁん??んなもん、ジュリアス様に叩き込まれた情報の一つだよ!!」


(ジュリアス……ルイには細かく色々な事を伝える癖に、どうして私には肝心な事、何一つ教えてくれないのかしら……)


 さも当たり前のように答えるルイに、ローズは今一納得がいかないが、愛する娘のローズに余計な事など絶対に報告しないであろうジュリアスは、その分 ルイに細かい情報を叩き込み、様々な事に対応できる様に仕上げていた。


「よし!!じゃあ、もう少しゆっくりしたら色々探検しながら学園を見て回ろうよ!!」


「何でだよ!!この前見て回っただろ!!」


 今、学園に着いたばかりなのに直ぐに動きたがるローズに、一度見回った学園を何故もう一度回らないといけないのかと眉を寄せるルイに、何がダメなの?と、ローズはすっとぼける。


「そんなの、誰かの後に付いて見て回るのと、自分の足で見て回るのとじゃ全然違うに決まってるじゃん!!」


 ルイの意見なんかに耳を傾け無いローズは机に両手を突き乗り出す勢いでルイに詰め寄るが


「やだよ…面倒くせぇ。どうせ明日の入学式からずっと通うんだからそん時でいいだろうが」


「じゃあ、ルイは留守番ね!!ジョイ。2人で一緒に行こう」


 普段なら何が何でもルイを一緒に連れて行こうとしていたローズが、あっさりと自分を切り捨てた事にルイが驚き普段は冷めた表情が多い瞳を思わず見開いた。

 反対にジョイは勝ち誇ったように溢れんばかりの笑顔を見せると


「いいね!!じゃあ、2人で行こうぜ!!」


 と、ローズの手を取った。


「おい!!んな訳にいくかよ!!はぁ……ったく仕方ねぇな……」


「別に、無理しなくていいのに……」


 尚もあっさりしているローズに軽く遇らわれ少し焦ったルイは渋々ローズに従おうとするも、依然嬉しそうなジョイが横槍を入れ出した。


「本当だよな!!一生寝てればいいのに……」


「おい!!!ぶっ殺すぞ」


 更にジョイからのダメ押しの一言に、完全に頭にきたルイは暴言を吐くと不機嫌そうにジョイを睨みつけた。


「ぁん!?なんだ…やんのかよ!!この前みたいに簡単にやられると思うなよ!!」


「フッ。言ってろ……お前なんかに負けるわけねぇだろ!!」


 今にも掴みかかりそうな2人の雰囲気を察して間に入ったローズは両手を広げ


「はい。はい。はい。はい。これからこの部屋で一緒に生活するんだから仲良く!!!喧嘩はダメだよ!!」


 そう言いながら手の掛かる弟達を宥める姉の如く仲裁にはいるローズの態度が何故か鼻につく2人は「チッ!!」っと舌打ちするとそのまま乱暴にソファに腰掛けた。


 ローズは、初日から喧嘩腰の2人に軽く頭が痛くなるのだが、一体 誰のせいで喧嘩になったのか今一理解していないローズだった。

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