4 学園見学 3
「こちらがローゼマリー様が生活する事になります、学生寮になっております。」
そう言って案内されたのは、何処ぞの高級マンションかの様な造りの建物で、一階のエントラス部分はとても広く、そこで、待ち合わせや人と会話できるようなスペースが用意されていて座り心地が良さそうなソファや高級感のあるテーブル、大きな本棚には綺麗に陳列された多数の本が置かれていた。
エントラスには、警備兵の他に使用人も24時間在中しているようで、来客の際には彼等がお茶を出してくれたり、不審な人物などは勝手に入れないようになっていた。
ただここまで揃っているのは王都の学園以外には無いそうで、流石王族や高位貴族が通うだけの事はあった。
「この建物、凄く高そうな建物ですけど、1番上まではどうやって登るんですか!?」
自分の部屋が最上階と聞いていたローズは、10数階はありそうな建物を前に、まさか階段で毎日登れとは言わないよな!!と、覚悟を決めて問いかけた。
「ふっ。ローズ!!大丈夫だよ!!誰も階段で登れなんて言わないから!!」
ローズの気持ちを察知したギルバートが楽しそうに答えながらローズの頭を優しく撫でる。
「此処には、転移装置の簡易版みたいな物があるから、その上に立って行き先の数字を押せばその階に転移出来るよ。見たほうが早いから早速行って見よう!!」
そう言ってローズの手を取ったギルバートが楽しそうにローズをエスコートしていく。
後ろから付いてきているルイとジョイも自分達がこれから生活する場所が気になるのか、心なしかキョロキョロしているようだった。
ギルバートにエスコートされながらエントラスを抜けた少し先に石造りの丸い台座のようなものが見えてきた。
5〜6人は乗れそうな台の上には、転移装置と似たような魔法陣が掘られていてその前には四角いパネルの様な物が立て付けられている。
ギルバートにエスコートされたままその台の上に上がったローズは、皆も台に乗るのを確認するとギルバートの事を仰ぎ見た。
「じゃあ、ローズ。この15の数字を押してみて」
魔法陣の前に立て付けられているパネルには1〜15の数字が彫られていて、多分最上階であろう15の数字にローズが触れ、暫くすると台に掘られている魔法陣が輝き出した。
そして次の瞬間には、先程とは違う場所に立っていて、多分 最上階に転移したのだろうと言う事が窺い知れた。
日本の最新のエレベーターより早い移動にローズは軽く感動を覚えるのだった。
「ローゼマリー様。こちらの廊下を抜けた角のお部屋がローゼマリー様のお部屋になっております」
そう言って学園長に案内されながらペルシャ絨毯の様な模様が入った高級そうな絨毯が敷き詰められた廊下を進むと、他の部屋よりも重厚な作りの扉が見えてきた。
前を案内する学園長が鍵を開けて中に入ると、扉を開いた先は大きな窓と、その窓の向こうにはテラスらしき物があり、窓の手前側は広いリビングになっていた。
扉から中に入ると直ぐにトイレとバスルームがあり、その先のリビングに足を踏み入れると、左右に2箇所ずつ鍵の付いた扉があるのが確認できた。
「この扉は何ですか!?」
「こちらは全て個室になっておりまして、扉から入って左手奥の窓側が1番広いローゼマリー様のお部屋になると思われます。
この部屋の中にも、先程 確認して頂いたとおりお風呂と洗面所がありますが、各個室にも少し小さいですがそれぞれ簡易性の洗い場と洗面所が備え付けられております」
「……凄いですね………」
(なに、その無駄遣い…….流石、王族も使うセレブ使用だけあるぜ!!
こんな無駄に広い部屋を一人で使うの、逆に寂しいんですけど……)
そんな事を考えつつ自分が使うであろう部屋に案内されながら中に通される。
「うわー可愛らしいですね!!」
部屋に入ったローズは、可愛らしい部屋の内装に感激の息を漏らしてしまう。
クリーム色の壁に水色に花の刺繍が施してあるカーテン。
部屋の中央にはキングサイズの大きなプリンセス仕様のベッドが置いてあり、サイドテーブルと椅子、それ以外にも勉強する為の机と椅子も置いてあり、沢山の洋服を仕舞える大きなクローゼットも備え付けられていた。
「なんか、随分可愛らしい造りですね…」
ローズは王族も使う部屋の筈なのに随分と可愛らしい造りに素朴な疑問を口にした。
「あぁ。気に入ったか!?ローズが使うから、エリオットにお願いして、少し内装をいじったんだ」
クロードはローズの疑問に、なんて事無い様に返答すると、ローズは多少驚きつつも素直すにお礼を口にした。
「ありがとうございます。でも…別にそのままでも良かったのに…….」
(たった3年間しか使用しない学生寮なのに内装とか弄って大丈夫なわけ……??)
たった3年間しか使わない学生寮を勝手にリホームしてしまう暴挙にでるなんて、いくら公爵家と言えどもやり過ぎだは無いのかと、内心焦ってしまう……
しかも元々、内装などにそこまでの拘りが無いローズはクロード達に無駄遣いをさせてしまい、後々直す手間を考えると申し訳なくなってしまうのだった。
「ふふ。そんな訳には参りませんよ。ローズ様に誰かが使用した後の部屋をそのまま使わせるなど……考えられません!!」
ローズを溺愛しているジュリアスの確固とした意見に苦笑い気味のクロードが補足する。
「まぁ、基本この部屋は、高位貴族しか使用しないから、皆 使う前は、自分の好きな様に変えるんだよ」
「あぁ。そうなんですね!!なら良かった!!私だけ特別とかだったら申し訳無かったです」
ローズはこの部屋を使う人間は皆、部屋をリホームすると聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「何を仰っているのですか!?ローズ様は特別な存在ですよ!?その辺の貴族とは存在からして同じなわけ無いではないですか!!」
(おぉ…そりゃジュリアスにとっては特別でしょうけど……
恥ずかしいからあまり知らない人がいる前ではやめてよ!!)
ローズがジュリアスの言葉に羞恥に頬を染めている間にも彼等の話は進んでいく……
「そしたら、ルイとジョイも自分達の部屋を見に行って来い!!
一応、ローズの向かいの2部屋がお前達の部屋になってるから、どちらでも好きな方を使えばいい」
「「ありがとうございます」」
クロードの言葉に嬉しそうに頭を下げると2人はローズの向かいの2部屋を確認しに行ってしまう
(……ん???……なんだって!!??今、何と仰いましたか!?)
「えっ??ルイ達の部屋って!?」
ローズはクロードが放った言葉の意味が理解出来ずに困惑気味に聞き直してしまった。
「あぁ。ローズの部屋の向かい側の2部屋は、ルイとジョイの部屋にするつもりなんだ。従者兼護衛として常にローズと行動を共にしないといけないからな!!」
「……あっ……そうですよね……」
(……あぁ…はい……さっきまでこんな広い部屋に一人で寂しいなんて….思ってだけど違ったんですね……しっかりと口煩い二人を監視にお付けになるとは……流石です……)
従者兼護衛と言いつつ、ローズが無茶な事をしない様にしっかりと監視役、2人を同室に配置したクロード達の抜かりない采配にローズはこっそりと溜息を吐くのだった。
「じゃあ、私の隣の部屋は、来客用ですか!?」
「そうだな。いつでも我々が泊まれる様に隣の部屋は空けてあるぞ!!」
(おぉぅ……うん……左様ですか……しっかり隣の部屋まで確保するなんて、まさか毎日泊まりにきたりしませんよね……)
学生寮なのに過保護な父親達が毎日、日替わりで泊まりに来そうな恐怖にローズは震えるのだった……
こうしてもうすぐクロード達から離れて(?)学生生活を送る為のローズの見学は終了していった。




