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3 学園見学 2


「次は寮の方をご案内しようと思っておりますが、校舎の中を色々歩いたのでお疲れでしょう!?校舎の中にある学生専用の食堂でお茶をしながら休憩に致しますか!?」


 学園長が気を遣い、ローズに学食での小休憩を提案すると、少し歩き疲れていたローズだったのだが、嘘のように元気を取り戻し、先程は軽く見学しただけの食堂でお茶が出来ると瞳を輝かせた。


「食堂!!行ってみたいです!!」


「では、参りましょうか!?学生が居ない間も魔術師団の練習や研究にこちらの施設を使用したりしますので食堂は常に営業しているのですよ」


 学園長の話によると学園の学生達は10年の間の3年間しか使用しないが、学生達が使用しない間も、そのままにしておくのは勿体無いと、学園に在籍している先生方の研究や、学園内に併設されている魔術師団の詰所がある為、魔術師達が研究や実験を行う為に日々使用しているらしい。


 一々家に帰るのが面倒な魔術師などは、空いている寮で寝泊まりする事も多く、学生達が入学する時期になると、好きに寝泊まり出来なくなるので、またこの時期がやって来たよと、面倒くさく思う魔術師達も多くいるようだった。


 ただ、学生が通い出してからも合間を見て魔術師や先生達も空き教室や演習場などを使用する事も多々あるようで、学生と魔術師達が交流する事も少なからずある様だった。



………



「うわ〜!!!中に入ってみると、想像以上に綺麗ですね!!」


 ローズは食堂に入るや否や食堂内を見回し歓喜の声を上げた。


「そうですね。貴族の方も多く使用しますので、内装などは拘った造りになっていると思いますよ」

 

 多くの貴族や王族が通う学園なので、そういった方々から不満などが出ない様な造りを心掛けているようで、食堂と言うよりオシャレカフェの様な内装は、4階まで吹き抜けになっており、中庭側は全てガラス張りで庭にはテラス席も用意されていた。

螺旋階段を上った4階は吹き抜け部分を囲う様に席が用意されており、園庭を眺められるガラス張りの場所と2階の入り口側の木製の壁にステンドグラスの様なペンダントライトが吊り下がっている仕切られた個室の様な場所とがあった。


 2階部分は窓から差し込む光でとても明るく、広々としたオープンスペースになっていてランダムに並べられた机と椅子があり自由に座れる様になっていた。


 3階の個室だけは予約制になっていて、大切な話などをする時は前もって、その席を予約すると、お茶などを飲みながら人目を気にせず話す事も可能なようだ。


 ローズ達はとりあえず、あまり人も居ないので2階の窓際の席へと腰掛けた。


 机にはプラスチックのような素材で出来た少し厚めのメニュー版が置いてあり、これも魔道具のようで好きなメニューの文字を押すと、そのまま厨房にある魔道具に表示される仕組みになっているようだった。

前世の電子メニューみたいなものだった!!


「えっ??これを押せば厨房に届くんですか!?凄くないですか……!?」


 ローズは感動するかのように呟くとメニュー表を持ち上げ様々な角度から観察している


「ありがとうございます!!これは最近、ここの魔術師が考えたもので、一々 並んで歩いて注文しに行くのが面倒くさいと思い考案したようですよ」


「へぇ。そうなんだな!!我々の時代には無かった道具だな!!」


 クロード達も驚いているようでローズが観察しているメニュー表を、珍しい物でも見るよにマジマジと観察している。


「私達の時代でも魔術師達が考えた魔道具を試験的に学園で使用してみて問題が無ければ、後々、世に出回るような仕組みになっているのですよ!!」


 後からローズの頭を撫でながら学園長の説明の補足をしてくれるジュリアスに嬉しそうなローズが振り向くと


「そうなんですね!!じゃあこの学園に居る間は、色々な新しい道具を試せるって事ですね」


 そんな事を話しながら、ローズはより一層学園に通うのが楽しみなっていた。


「ふふ。そう言う事になると思いますよ!!」


「凄い!!今から楽しみです!!」


 ローズは両手を胸の前でパチンと合わせてこれから通う学園に胸をときめかせている。


「おや……無防備にそんな発言を魔術師の前で言ったら、帰して貰えなくなってしまいますよ!!特にローズ様はお綺麗でいらっしゃいますから発言に充分気をつけて下さいね」


 まだ、会って間もない学園長にも真剣な顔で諭されるローズにクロード達は堪らず苦笑いを漏らすのだった……



***


 オシャレ食堂でゆっくりとお茶を飲みながら、ある程度 身体を休めたローズ達に1組の家族が近づいてきた。


「ファディル公爵、ファルスター公爵。お久しぶりでございます。ご歓談中と思ったのですが、今年度、私の娘もこの学園に通う事になりましたのでご挨拶をと思い、少し宜しいでしょうか!?」


 ローズの後ろから声が掛かり、どなただろうと振り向くと、そこには、見た目的には40代位の小太りの男性とローズと同じ位の年齢の女の子が立っていた。


「あぁ。オーキュスト卿ではないか。久しぶりだな。そうか…其方の娘も今年入学なのだな。

 ローズ。この方はオーキュスト伯爵と言って道を整備する為に作った財団の出資者の一人でもある」


 そう言ってクロードがオーキュスト卿を紹介し始めたので、ローズは静かに立ち上がると普段とは違い綺麗な所作で挨拶をし始めた。


「初めまして。(わたくし)ローゼマリー・ファディル・ファルスターと申します。宜しくお願い致します」


「これは、噂以上にお綺麗なお嬢様ですね。公爵方が溺愛なさるのも納得です。ジーナ…ローゼマリー嬢に、ご挨拶なさい」


 可愛らしいローズの初々しいカテーシーを微笑ましそうに眺めていたオーキュストがジーナと呼んだ女の子に声を掛けると、オーキュストの後ろに控えていたローズより少し年上そうな、色白で銀髪のウェーブ掛かったアメジストの瞳の一人の少女が静かに前に出た。


「初めまして。(わたくし)ジーナ・オーキュストと申します。私も今年度から学園に通いますので宜しくお願い致しますわ」


 そう言いながらジーナも綺麗なカテーシーを行った。


「ジーナは今、18歳ですのでクラスは違いますが、この機会にローゼマリー嬢とお近づきになれると、私共も嬉しく思います!!」


 オーキュストは、公爵家と懇意になるチャンスとばかりに一人嬉しそうだが、肝心のジーナの方は、挨拶した後、興味が無さそうに無表情を貫いている。


 そんな少し気まずい状況を変えようとローズは明るい声で話題を振ってみた。


「あれ!?18歳って事は、ルイと一緒だよね!!」


「ぁん!?あぁ…そうで御座いますね…」


(ルイ…心底どうでも良さそうですね…でも、お友達はいっぱい居た方がいいんですからね!!)


「ジーナ様。此処に居るルイも同じクラスになると思いますので宜しくお願い致しますね」


 そんな素っ気ない2人を取り持とうとローズはジーナにお願いするも、あまり釈然としない顔のジーナは返事を濁すように


「はぁ……まぁ…ローゼマリー様がそう仰るのでしたら、挨拶くらいはしてもいいですが…」


 などと本人を前にして失礼な発言する。


 ジーナは、ローズの従者の獣人と同じクラスと聞いて、何故 高貴な身分の自分が獣人なんかと仲良くしなければならないのかと、あからさまに顔を顰めるのだが、そんなジーナに対してもルイは全く気にした素振りも見せず普段通りのポーカーフェイスを貫きどこ吹く風だった。


「ジーナ嬢。ローズ様の従者のルイは獣人ではありますが、最近、クロイツ商団の後継者になりまして、現在は、オーキュスト伯爵も出資しています道を整備する為の財団の代表を務めております。

 現段階では、まだあまり知られてはいませんが、今度は様々な場所で顔を合わせる事もあると思いますので、宜しくお願い致します」


 ジュリアスの軽い意趣返しの意味も込めている説明を受けたジーナは、途端に顔色を変えるとルイに近づき擦り寄りだした。


「ルイ様と仰いましたか!?まだ、お若いのに素晴らしいですね!!その歳でましてや獣人にも関わらず爵位を継いでいらっしゃいますの!?

 学園が始まりましたら是非宜しくお願い致しますわ」


 若干失礼ではあるが、先程とは180度違う対応にローズは笑顔が引き攣るが、ルイは表情ひとつ変える事無く軽く頭を下げるのだった。


 その後、ジーナとオーキュスト伯爵も交えてお茶をする事になったのだが……


「え〜〜!!ファディル公爵は、そんなご趣味があるのですね!!今度、私も一緒に何か作ってみたいですわ」


「ははっ……それは別に構わないが、先ずは私では無くローズの了承を得てくれるかな!!」


 媚びたような表情を浮かべギルバートに擦り寄るジーナにギルバートもカラ笑いで躱す


「えぇ〜〜そんな事言って、ローゼマリー様はお優しい方ですからいつでも良いと仰ってくれますわ!!ねぇ。ローゼマリー様〜!!!

 そしたら公爵家に遊びに行っても良いですか!?ファルスター公爵」


「ローズが良いなら別に構わない」


 クロードは、ジーナに話を振られてもニコリともせずに無表情のまま簡潔に返答する。


「もう…皆様、何かに付けてローゼマリー様の顔色を伺うなんて……ローゼマリー様…もうすぐ学園生活が始まるんですから、もう少し大人になって下さらないと!!!

 あまり皆様を困らせてはダメですよ!!」


「アハハハ……キヲツケマス……」

 誰目線なのかは、よく分からないが自立を促されたローズは。愛想笑いを浮かべなが、お前は一体、誰と交流を深めたいんだよとモテる父親達を前に途方に暮れるのだった。


 その後も寮の見学まで着いてきそうなジーナを無理矢理振り切って何とか寮の玄関まで辿り着いたローズ達は、まだ学園を見学しただけと言うにも拘らず若干の疲れを滲ませるのだった……

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