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32 ローズの鍛錬

 

 騎士団訪問から数ヶ月が経ち、気乗りしないクロード達を毎日 日替わりで引き連れながら鍛錬に励むローズを横目に、アイツは一体…何を目指しているのだろうと疑問を抱いているルイなのだが、そんな事はお構い無しに今日もローズは楽しそうに鍛錬へ向かっている。


 クロード達も初めの頃はローズに刀を持たせる事に難色を示していたのだが、地味な鍛錬でも続けていれば その内 ローズも飽きるだろと、筋トレやストレッチをメインに教え、極力 刀を握らせない方向で指導を進めていた。

 だが、どんな地味な鍛錬も毎日楽しそうに行うローズにクロード達も段々と絆されてしまい、今では本格的な剣術のトレーニングを行っているのだった。


 元々、体を動かす事が大好きなローズは、前世ではやった事が無かった剣術に見事にハマってしまい、毎日鍛錬する事が楽しくてしかたがないようだった。



***



「兄様。宜しくお願い致します!!」

 

 そう言って礼儀正しく礼をするローズに、普段とは違い、真面目な顔のギルバートが同じように礼をする。


「ローズ。クロード達の話だと、最近 メキメキと上達しているみたいじゃないか!?楽しみだよ!!

 では、お手並み拝見といきますか」


 最近、自身の領地の仕事が忙しく朝の鍛錬には中々付き合えないギルバートは、久しぶりにローズと行う鍛錬にどれほど上達しているのかと期待に胸を膨らませながら輝く様な笑顔を見せると静かに模擬刀を構えた。


「では、参ります!!」


 そう言いながらローズに合わせて作られた少し小さな模擬刀を手に走り出したローズを笑顔のまま迎え打つと自身も模擬刀片手にローズの刀を軽く去なし出す。

 何度かの刀の応酬の最中、ギルバートは驚いた様に目を見張ると「思った以上に上達してるんだなぁ…」と呟きながら楽しそうに笑みを漏らした。


「ハァ。ハァ。本当…ですか…!?嬉…しい…です…!!」


 少し息を切らしているローズが刀を打ち合う手を緩める事無く嬉しそうにギルバートに答えると、少し変化を加えて見ようかと考えたギルバートは、単調に一定のリズムを刻んでいた刀の応酬を変えるため、一度、ローズ刀を下から打ち上げた。

 以前ならそのまま刀を飛ばしてしまったりよろけたりしていたローズだったが、その場で踏ん張りギルバートの変化に対応して行く。

 ニヤリと笑ったギルバートはローズの隙をついて屈むと足元を掬う様に刀を回し振る。


 突然、ギルバートが消えたかと思ったら足元に刀を回し入れられてローズは焦るが、寸前のところで飛び上がりそれを躱すとそのまま刀を振り下ろした。


「兄様、覚悟!!」


 自分が時代劇の役者にでもなった様な気持ちで、刀を振り下ろすも、ギルバートは横に首を逸らして刀を躱す。

 躱されたローズは、頬を膨らませてムッとするが楽しそうなギルバートが、片手を胸の前に突き出すとクイックイッと手首を返し、ローズに向かって来いと手招きするのだった。


「むーーぅ!!絶対に参ったって言わせてやる!!」


 俄然やる気を出したローズが、ギルバートに向かって走り出すと模擬刀を構え直したギルバートもローズに向かって走り出した。


 そのまま楽しそうな打ち合いが始まり何度かの打ち合いの末、疲れてきたのか軽く押され始めたローズが踏み止まろうと片足を後ろに引いて踏ん張ろうとした瞬間、汗か何かに滑ってしまいバランスを崩してしまう


「あっ……ヤバっ!!」


 ローズが不味い倒れると焦りながら倒れる衝撃に備えて目を強く瞑った瞬間、今まで打ち合っていた刀を放り出すようなかたちでローズを庇おうとギルバートがローズの腰に手を回して自分の方に引き寄せた。


 だが、その反動でローズを胸に抱き寄せたまま座り込むようなかたちで倒れてしまったギルバートは、ちょうどローズを膝抱っこするようなかたちで自分の腕の中に収めてしまうのだった。

 ギルバートはローズが転倒せずに済んでほっと胸を撫で下ろすも、久しぶりに胸に抱いたローズの姿に何とも言えない幸福感を抱いてしまい沸き立つ心がローズに悟られないように平然を装って声を掛けた。


「はぁ…びっくりした。ローズ…何処も怪我はない!?」


 自分の腕の中にすっぽりと収まっているローズを心配そうに覗き込んだギルバートにローズは視線を合わせると、恥ずかしそうに頬を染めながら


「大丈夫です……寧ろお兄様にお怪我はありませんか?」


 とギルバートに問いかけた。

 恥ずかしそうに俯きながらギルバートを気遣うローズに何故か胸を締め付ける様な息苦しさと、胸の高鳴りを感じたギルバートはギュッとローズを抱きしめると自分の気持ちを誤魔化すかの様に


「全然大丈夫だよ!!むしろローズを久しぶりに腕の中に閉じ込められて役得かなっ!!」


 とイタズラな笑みを浮かべてローズの耳元で囁いた。


「……っ……」


 ギルバートの大人の色気溢れる仕草に羞恥に悶えるローズだったが、毎回、毎回、やられっ放しも癪に触るので、いつも余裕なギルバートに一泡吹かせてやろうとローズもギュッとギルバートに抱きつき返し


「ギル兄様の腕の中、久しぶりでとても心地がいいです」


と胸に擦り寄りながら上目遣いに呟いた


 その瞬間、先程の事も相まってギルバートの周りだけ時間が止まったように固まり座り込んだまま動かなくなってしまった姿を楽しそうに見つめると、そっと体を起こしたローズは少し屈んでギルバートの頬にキスをして


「今日はありがとうございました!!」


 満面の笑みを見せながら元気に挨拶してその場を離れるのだった。


 ローズが居なくなった後も金縛りにでもあったかのようにその場から暫くの間、動けずに固まっていたギルバートは、たまたま側を通り掛かったジュリアスによって少し乱暴に回収される事となった。


 最近、メキメキと成長してきたローズは、いつまでもやられっ放しでは無いのである。

 今日も、一人戦闘不能に追い遣ったローズは、満足そうに ご機嫌でその日一日を過ごすのだった。


 9月から掲載を始めました、転生少女の愛される日々を読んで頂きありがとうございます。


 初めての事で分からない事も多く、色々難しい事もありましたが、何とか連載を続けて来られました。


 今年は、この話で終わりになりますが、新年1月1日 0時から新年特別小話と、同日のお昼頃に第二章の学園編を掲載致しますので宜しくお願い致します。


 本年は私の拙い話にお付き合い頂きありがとうございました。


 来年も宜しくお願い致します。


コメント、評価、ブックマークなども引き続き宜しくお願い致します。


〜RUMI〜

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